町、学校、職場、家庭、ネット上。世間には人を傷つけるような言葉が多く出回っています。それらが当たり前のようにはびこっていることも、残念ながら少なくありません。基本的には「無視」がいちばんなのですが、無視する以前に暴言が目や耳に飛び込んできた時点で心が傷ついてしまうことはありますよね。
一生に一度もケガをしない人がいないのと同じように、暴言全部を避けきることはできません。そうである以上、「救急」の知恵はどうしても必要になってきます。
ひどい言葉に出会って傷ついたりなやんだりしていたら? 応急処置の考え方を4つ、ここにまとめておきます。
1:傷つくのは、自然な反応
ひどいことを言われて嫌な気分になったりショックを受けたりしたなら、そのことは決してまちがいではありません。
その傷から回復するのは、なにも今すぐである必要はありません。時間をかけて見つめてもいい。ふりかえったら何年もの時間が経っていたとか、いつのまにか忘れていたというのでも大丈夫です。
なぜ私がこれを最初に確認したかというと、世を見渡すと、どうもネガティブな感情を否定しすぎな人が多いんですよね。しかし、これは考え方としてバランスが悪い。人間にとって、暴言を吐かれて傷つくのは自然な反応なんですから。傷つくのは、人間である証です。よからぬことではありません。
2:心の距離をとる
では、嫌な気分になったとか、ショックだったという気持ちとはどう向き合えばいいのでしょうか。
まずは、ひどいことを言った人や言葉そのものから、心の距離をとりましょう。小学校であさがおの観察をした、ちょうどああいう感じです。自分とは別の「対象物」を、静かに観察。
その言葉を内面化しないで、自分自身から切り離すことが大事です。もうとりこんでしまったという場合には、心の外に出してしまいましょう。
もしその人から離れられる状況なら、すぐにでも離れたほうがいい。たとえばネット上のコミュニティで困った人にからまれたなら、断ち切ってしまってかまわない。そんなにまでして一緒にいるべき相手ではありません。百害あって一利なしです。自分の貴重な人生を台無しにしないで。
暴言がはびこる集団の内部に巻き込まれることなく、外から、冷静にながめることがカギになります。
3:自分の心も、外から見つめてみる
1・2と関連するのですが、「自分は傷ついたんだ」ということはわかっておきましょう。2では、問題の人や言葉を「対象物」にして距離をとりました。今度は「傷ついた自分」を客観化するのです。
具体的に言うと、「いやな気分だ」を、「いやな気分になった自分がいたなぁ」に変えてみる。傷ついた経験が、ちょっと遠くなりますよね。
4:でたらめはでたらめ
しょせんガセネタは、ガセネタにすぎません。本当のことではないので、気にする必要も、傷つく必要もないのです。
たとえば、
「あなたはいらない子だ」→いります。あなたは大事な子です。
「お前の代わりはいくらでもいる」→いません。これを言う人はたいてい自分に自信がなく、強権的に振る舞い他人の価値を判定することで自分の穴を埋めようとしているのが実際のところ。あなたは世界にひとりの、かけがえのない人間です。
「(特定のグループを指して)○○の人は頭が変」→普通です、変ではありません。こういうのを世は「差別」と呼ぶのです。こんなことを言っている人こそ、全然立派じゃないですよね。
こういうことを言われれば、心が打撃を受けたに違いありません。それでもしょせん、でたらめはでたらめです。事実ではありません。
こういう場合、「あの人が言ったことは本当だろうか」なんて公平に考えようとしないでいいんです。つっぱねちゃっていい。まずは「そんなことを言う人に会ったなぁ」くらい心理的な距離をとって、「ちょっと運悪かったな」「人生、そんなこともあるんだなぁ」と思って忘れてしまえばいいです。
まったくしょうもない人もいるものですが、でたらめはでたらめなので気にしない。心から追い出してしまうのが何より吉です。
おわりに―救急箱は小さいなりに本格派
救急の4つの方法。うんと簡略化してさりげなく並べましたが、これらはすべて小説を書くため、あるいは私自身が生きるために念を入れて調べ上げ、かき集めてきた確かな知識と知恵です。「心の救急箱」としてきっと役立つと自負しています。
今回は、暴言を吐いた側についてはほとんど触れませんでした。また、ここに挙げたのはあくまで応急措置です。これですべてを解決できるとは思っていません。事情によっては各種専門知識や第三者の出番ですが、そういう話はまたの機会に。小さな救急箱ですが、もし誰かの言葉で傷つくことがあったなら、このうちの一つ、またはいくつかを組み合わせて自分で「手当て」してみてください。
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