広告ブロックをやめてほしいとクリエイターは思っているのか

2024年5月、動画等の投稿プラットフォーム「ニコニコ」を運営するドワンゴが、広告ブロックツールによって年間1億円以上の損失が発生しているとして、利用者にツールの無効化を呼びかけました。損失はクリエイターへの還元にも影響しているということです。

この呼びかけは、日ごろからニコニコ等を愛用している人々にSNSで多く取り上げられ、話題になっていました。視聴者としては、ツールは使い続けたいという声が多くを占めていました。

では、クリエイター側は、作品の受け手に対して広告ブロックをやめてほしいと思っているのでしょうか?

ネット広告に関しては、私自身がこうして創作活動をしていて思うところがたくさんあります。これを機に、

  • 表現・言論の世界で広告掲載がもつ意味
  • インターネットで「広告ブロックツール」というものが作られた背景にあるのはGoogle等巨大IT企業だということと、その異常性
  • クリエイター全体に共通する損失と問題点
  • 私個人の創作活動の方針、考え方と呼びかけたいこと

について論じ、発信したいと思います。

目次

広告掲載はごく普通の商慣習

SNSで一般ユーザーの投稿を見ていくと、広告を掲載して収益を出すということはなんとなく知っているけれど、具体性や現実感はあまりなくてあやふやだ……という人が多いように思います。中には、誤解を前提にしゃべったせいで、議論があさっての方向に飛んでいってしまうようなところも見かけました。

特に、この問題に対応すべきなのは誰なのか――ニコニコか? それとも視聴者側が呼びかけに応じてツールを無効化すべきなのか?――そのあたりが分からなくて迷ってはいないでしょうか?

なので、本稿ではまず広告掲載というものの根本の確認、解説から入りたいと思います。

「クリエイター」の多様さ

ニコニコが発表した広告ブロック無効化の呼びかけは、IT系のメディアを中心に取り上げられるなど、「ネットの問題」として受け止められているようです。SNSで話題にしている人々が念頭に置いている「クリエイター」も、動画投稿者やボカロ関係のような今風のエンタメ系が主流のようでした。

しかし、実のところクリエイターは多様です。

まず、作家などの文章系は、エンタメ系の極であるライトノベルから硬派な社会評論を書く人まで、内容や方向性がじつに幅広いです。意外かもしれませんが、表現・言論という意味ではジャーナリストや学者も範疇に入ります。

音楽系をとってみると、すぐに思いつくといったら歌手ではないかと思いますが、

  • 作曲家
  • 作詞家
  • 演奏家(ピアニスト、スタジオミュージシャンなど)
  • ダンサー(現代のポップダンサーから、バレエ、フラダンス、フラメンコ等まで多様)
  • オーケストラの楽団員

なども「クリエイター」にあたる職業です。

文章や音楽の他で代表的なジャンルを挙げれば、

  • 美術・デザイン系(イラスト、CG、映像など)
  • クラフト系(アクセサリー、家具、インテリア、手工芸など)
  • ソフトウェア開発(スマホアプリの開発者、拡張機能の開発者など)

などに携わる人は、私たちの生活に欠かせない存在といえるでしょう。

このように、一口に「クリエイター」といってもジャンルは多様多彩です。作ったモノを伝える媒体や、有形物のあるなし、また受け手側のカラーや目的なども、ジャンルや個人によって大きく異なります。なので、もしYouTuberやライバー、ニコニコ投稿者のようなネット系クリエイターだけを念頭に置くならば、クリエイティブ分野全般、また社会全体でいう「広告掲載」とは認識がズレてしまうでしょう。

広告ブロックによる影響や損失を議論する際には、広い視野を持ち、基本的人権である表現の自由、そして表現・言論の社会的役割を念頭に置くことが要されます。

広告掲載が利用されている場面

同様に、広告掲載を利用している人も多様多彩です。

ネットだと、もしかしたら「これからはYouTubeから広告料をもらって動画投稿を仕事にできる時代だ」と派手にアピールしていた初期のYouTuberの印象が強いかもしれません。

ですが、社会全体まで視野を広げれば、広告を掲載するのは、古くから広く使われているごく一般的な慣習です。よって、この方法が利用されているのはクリエイティブな分野だけではありません。そう言われてみれば、野球ドームや動物園、マラソン大会などのイベントや、ディズニーランドのアトラクションなどでも看板やスポンサーの表示を目にするはずです。古くは江戸時代の花火大会の玉屋と鍵屋もそうでした。

実社会には様々な慣習があり、それらによって私たちの日常は成り立っていますが、広告掲載はそうした商慣習の一つなのです。裏を返せば、もし広告掲載という方法がはたらかなくなったとしたら、社会にどれほどの影響が出るかが分かるでしょう。

表現・言論分野での広告掲載の意義

表現・言論関係の分野にしぼって言えば、例えば、新聞には広告欄があります。新聞社は、読者が払う購読料の他に、広告を載せることも収益源にしているのです。出版社が出すファッション誌、週刊誌、マンガ誌など、雑誌の類も同様です。

中でもとりわけなじみ深いのは、テレビのCMでしょう。民放テレビ局では、CMでの広告料は会社の収益源のメインです。

この仕組みをより身近で実感できるとしたら、大学でサークルが出している学生スポーツの新聞を考えてみると分かりやすいのではないでしょうか。部員が野球部4番のホームランの瞬間を見事カメラに収めた。ボート部主将にインタビューして、内容を字数きっかりの文章にまとめた。でも、それだけでは足りません。新聞を作るには、紙代や印刷費などの経費がかかります。ただの学生たちがどうやってその経費を捻出しているのか、といえば、新聞の代金がまず思い浮かぶでしょうが、紙面に目を通せば広告欄が目に入ってくるはずです。時に世界経済が冷え込んだりすれば、学生たちの財布のひもは固くなり、新聞の売れ行きは減少するでしょう。しかし、そんなときでも、広告料は変わることがありません。広告欄は安定した手堅い収益源になるのです。

サイト上の広告は、これまで行われてきた広告欄のネット版にすぎません。クリエイターの活動場所がインターネットになったというだけで、別段新しいことではないのです。人類の文明が続く限り、今後なくなるということもありません。世界中のウェブサイトやニコニコのようなプラットフォームが広告を掲載するのは、実社会において必然といえるのです。

ネット広告が掲載されるまでの仕組みと構造

ここで、IT系にはあまりなじみがないという読者のために、ネット上で広告が出るまでの仕組みについて説明を入れておこうと思います。

ビルの看板や折込チラシなどと異なり、インターネット上の広告は、ほとんどが仲介業者(代理店、広告ネットワーク)を通して掲載されています。

代理店にはそれぞれ特色があります。インターネット特有といえば、ページの内容や閲覧者の興味関心に応じた広告が自動で表示されるインタレストベースのタイプです。広告主と掲載先を厳選している代理店や、例えば旅行関係のみを扱うといった業界特化型のネットワークなどもあります。

中でも、巨大IT企業・Googleが展開するGoogle AdSenseは、インタレストベース広告のパイオニアであると同時に業界の最大手です。大手新聞社や出版社から個人のブロガーまで、世界中のサイト運営者が登録・利用しています。

サイト運営者は、まずこうした代理店に登録を申し込みます。代理店は、申請が来ると、掲載先となるサイトを審査します。代理店とっては、自社サービスが闇サイトや犯罪などの資金源になってはたまらないからです。審査が通れば、サイト運営者は自分のサイトに広告を掲載し、代理店から広告料を受け取るという仕組みになっています。

アーティストには必ず支援者がいる

古く歴史をたどれば、芸術家はいつも、何らかの支援者を取り付けることで芸術の道を歩んできました。

最も一般的なのは、王侯貴族など有力者に庇護される形式です。今日名画と呼ばれる絵を描いた画家の多くは、有力者にパトロンになってもらうことで生活していました。音楽でいえば、ベートーベンは貴族の家庭で音楽の家庭教師をしながら自らの作曲をしていた頃のエピソードがよく知られています。

このように有力者から支援を受ける形式には、生活基盤を持てる反面、大きなデメリットもあります。アーティストの自由と独立性が損なわれることです。パトロン的存在との間には、大なり小なり力関係が生じます。そのため、パトロン周りに対して否定的な表現をするのはむずかしくなるのです。この観点から、イギリスの主要紙・ガーディアンは、メディアとしての独立性を守るため、株主を持たない会社組織での経営を続けています。

一方で、パトロンとの関係に頭を悩ませるのとは全く異なるケースもあります。歴史上の画家や小説家、哲学者などには、働かなくても生活できるほど裕福だった人が多くいるのです。

例えば、平安文学の担い手は貴族です。彼らにはありあまるほど時間があり、執筆は現代でいえば趣味のようなものでした。もっと近代でも、例えば功利主義の創始者として知られるイギリスの哲学者・ベンサムは大変裕福だったので、自分の人生を哲学の研究だけに費やすことができました。

クリエイターにとっては夢のような環境でしょうし、受け手として「そんな恵まれた人には共感できない……」などと感じるとしたら無理ないかもしれませんが、アーティストは一人ひとり、皆違います。その人はその人の現実を生きた、という感じでしょうか。こういうアーティストもまた、経済面を除外できる環境を糧にして創作に集中し、すばらしい作品を生み出してきました。

このように、形こそ国・地域や時代、個人によって違いますが、アーティストには必ず、誰か何かの支えがあります。それなしの表現・言論は歴史上存在しませんし、今後も出てくることはありません。

なぜ広告ブロックツールが使われるようになったのか

以上のように、広告は社会に定着したごく普通のものであって、受け手側、クリエイター側問わず誰もがすっかり慣れているはずです。改めて考えてみれば、テレビを見ていて「CMを消す機械がほしい」と言い出した人はいませんよね?

では、なぜインターネットでだけ、広告を取り払うツールというものが作られ、使われるようになったのでしょうか。

閲覧のじゃまだから

まず、日本人ユーザーが広告ブロックツールを求める理由では、シンプルに「閲覧していて邪魔だから」が多いです。

ニコニコの呼びかけに対して、SNSではユーザーから「全く関心がないテーマの広告が出るといらつく」といった声がみられました。また、「(広告が)コンテンツを見せないようにしてくるのでブロックツールを入れられても仕方がない気がする」などと、ポップアップ式や画面全体をおおうサイズのものがわずらわしいという理由を挙げる人もいました。

ツールを作る人が現れた理由は「プライバシー」

ですが、実はツールが開発された元の理由は「邪魔だから」ではありません。ツールの主な目的は、プライバシーへの意識です。

どういうことかというと、Googleなど主要な広告ネットワークや、Facebook、X(旧Twitter)、ヤフーなどは、閲覧者の興味関心に合った広告を表示しています。では、どうやって興味関心を把握するのか、というと、こうしたIT企業はブラウザやアプリを通して、ユーザーの検索履歴・閲覧履歴を追跡しています。……IT分野になじみのうすい読者はそう聞いて真っ青になったかもしれません。

こうしたIT企業による行動データの追跡、収集から個人のプライバシーを守ろうと、世界に広告をブロックするブラウザ拡張機能を制作する人が現れました。つまり、今日の「広告ブロックツール」が生み出されたきっかけは、IT企業にあるのです。

代表的な広告ブロックツール・Ghostery(画像はFirefox版)。拡張機能のジャンルとしては「プライバシー」だということが分かる。

不適切な広告をブロックしたい

関連して、自動的に表示されるタイプの広告では、内容が不適切だったり、不快だったりするものがたびたび表示されます。例えば、性的なコンテンツ、過激な政治団体が出したと思われる差別的な文言、誇大な美容・ダイエット系、などです。

見たくないセンシティブなコンテンツを避けたいというのも、多くの人が広告ブロックツールを導入する理由となっています。

クリエイターにとっての広告ブロックの問題点

以上が、広告ブロックツールをめぐる状況確認になりますが、いかがだったでしょうか。

ここからは、この雑多な現実の中で問題点はどこにあるのか、クリエイター全般に共通する点を拾い上げていこうと思います。

広告掲載が機能しない

現代のクリエイターにとって、創作物の受け手が広告をブロックするのは頭の痛い問題です。

文章、映像などをはじめ、クリエイティブな分野にとって広告収益は重要な活動資金源となってきました。

収益全体における広告料の比率は、クリエイター一人ひとりの創作ジャンルや活動様態によって様々です。ニコニコのようなプラットフォームの運営者となればまた構造や立場は変わってきます。

しかしいずれにせよ、上で指摘した通り、広告掲載は実社会に定着した商慣習の一つなので、アートやジャーナリズムなど「クリエイター」と呼ばれるほとんどの分野とっては必然的なものです。

その広告がブロックされるというなら、収益減はその瞬間からクリエイターを直撃します。ニコニコの呼びかけでは、年間1億円以上という損失額がユーザーに衝撃を走らせたようでした。しかし、クリエイティブ分野では驚くことではありません。「そうだろうな」という感じです。

社会にとってのリスク―表現・言論が打撃を受けることの意味

クリエイターが経済的に打撃を受けることは、社会にとっても高いリスクがあります。社会において、自由で活発な表現・言論活動が弱まるからです。

クリエイティブな分野には、人々の生活を文化的に豊かにするという社会的役割があります。私たちの身の回りを見渡せば、家具や食器、衣服など生活に欠かせない物が作られ、彩色がほどこされて生活を彩っています。町には音楽が流れ、様々な物語にふれることで豊かな感情を経験します。ものづくりやデザイン、アート作品は、私たちが生きる中の「人間らしさ」を生んでいるのです。

さらに、表現・言論には、文化的な豊かさの他にも重要な役割があります。民主政の基盤になることです。言論が弾圧されたらあとは恐怖政治あるのみだ、ということは、戦前の日本だったり独裁国家を傍目に見たりして感覚的に分かるのではないでしょうか。

特に、クリエイティブ分野の中で、「言論」と呼ばれるようなジャンルでは、物販やデザイン系と比べて収益における広告料の比率は高い傾向にあります。しかも、上記で例に挙げたガーディアン紙のように、独立性を重視するメディアほど広告掲載モデルをとる傾向です。

現代社会において、インターネットは紙媒体に勝る強い影響力のあるインフラです。そのインターネットで広告がブロックされるに至り、機能不全に陥ったことは、表現・言論分野に機能不全を波及させるという深刻な事態を生じさせています。

クリエイティブな分野にとって、経済面は決して甘く見られるものではありません。すでに述べた通り、アートには必ず支えがいるからです。経済的に破綻すれば、アーティストや報道団体等は活動休止に追い込まれます。政府による言論弾圧ではなくても、表現・言論活動ができなくなるなら結果は同じです。

話題になったニコニコの呼びかけは氷山の一角にすぎません。広告ブロックによる経済的損失は、クリエイターやメディア系の分野では何年も前から問題となってきました。それもあり、業界の最大手であるGoogleは、サイト運営者に対して広告ブロックの解除をうながすポップアップツールの提供を始めました。最近では、週刊誌、エンタメニュースサイトなど、大手メディアもGoogle提供のポップアップを表示しています。

クリエイター側にとっての不適切な広告

ただ、ではクリエイター側は手放しに広告を表示させたがっているのか、といえば、実はそうではありません。

不適切な広告が自動表示されるという問題点は、上記ですでに指摘しました。これはクリエイターにとっても問題です。なぜなら、知らぬ間に表示された広告が、自分の作品の価値を損なったり、受け手にまちがった印象を与えかねないからです。

例えば、イラスト作品の横に性的なマンガの絵が載っていれば、広告だと見分けがつきにくいので、ITに詳しくない受け手ならそれも作品だと誤解するかもしれません。また、そこまで完全な誤解ではないにしても、そういう方向性のイラストレーターなのだという印象にはつながってしまう可能性があります。もし性的コンテンツが表示されたのがパレスチナ・ガザ地区への爆撃に関する深刻な論評記事の横であれば、「ふざけている」などと読者に嫌悪感を与えかねません。

こうした創作活動での不都合から、自動で表示されるタイプの広告に対しては、クリエイター側にも内容をコントロール、またはブロックしたいというニーズがあるのです。

サイト運営者からの要望や批判もあり、Googleは、「ブランド保護」という名称で、センシティブなカテゴリや個別の広告をブロックできる機能の提供を始めました。また、差別思想の宣伝等に対しても、社の側で規制を強めています。

広告掲載に対する私の考え方と活動方針

以上、「クリエイター」と呼ばれ得る分野全般に共通する問題の所在を確認しました。

ここからは、私個人が広告ブロックをどう考えているかを書いていきたいと思います。クリエイターは一人ひとり活動内容も個人的な状況も異なるので、私の考え方や意見は全員を代表するものではありません。ですが、私自身これまで試行錯誤しながら取り組んできましたので、創作の現場はリアルに感じられるのではないかと思います。クリエイターの作品を受け手として楽しんでいる皆様、またクリエイターの皆様にも、何かしら参考になればと思います。

創作ジャンルと内容

まず前提として、私の創作ジャンルは文章です。内容的には、法律、IT、社会問題などの解説や評論を主としていますが、そのかたわらでは映画やゲームなどポップカルチャーも扱っています。内容の幅が広いので、社会的には「総合的なメディア」という位置づけになるでしょう。

また、私は文章を書くだけでなく、当サイトの制作者・運営者でもあります。

創作活動の方針とビジョン

創作活動の方針として、私は自分自身が表現・言論のプラットフォームを保有することにこだわっています。

例えばYouTuberは、YouTube=他人が管理・運営するプラットフォームの中で活動しています。また、日本国内の文章系クリエイターは多くが「note」で執筆、有料コンテンツ販売などをしていますが、私はアカウントを作ってすらいません。

私の方針は、執筆活動を始めた経緯から生まれました。私は自分がもつ力の中で情報をまとめる能力を職業にしようと執筆活動を志したのですが、調べていくうちに、十分に独立性のある表現・言論は既存の日本社会には存在しないし、できないのだと気付きました。日本社会が変わってくれるのを待っていては自分の人生が終わってしまうので、自分で創作活動のプラットフォームを立ち上げることにしました。

詳細:文士への提言(「芸能人の薬物依存疑惑・逮捕と自主規制―「作品に罪はない」議論を徹底解説」より)

広告掲載の目的

当サイトは、主に広告費によって運営しています。

現在利用している広告ネットワークはGoogle AdSenseと楽天アフィリエイトです。

私の場合は執筆内容が幅広いので、ジャンルを限らないGoogle AdSenseはとても重宝します。この点では新聞社や独立系メディアと立場が近いと思います。さらに、私には海外の読者がいます。日本語や国内のサービス等の広告だったら意味をなさないところ、Google AdSenseは自動で読者の言語の広告を出してくれるので、非常に助かります。

一方の楽天は、主に映画レビューで、DVDのパッケージを載せるのに利用しています。芸能人が映ったコンテンツは肖像権や著作権のトラブルが多いのですが、広告素材であればそれが生じずに済みます。つまり、私にとって、楽天アフィリエイトの主な利用目的は収益ではありません。

なお、現段階では掲載していませんが、契約している代理店は他にもあります。今後、サービス内容次第で、利用する広告ネットワークは変更する可能性があります。

クリエイター支援サービス―理論と実情

広告掲載の他には、クリエイター支援サービス・OFUSEのアカウントを設け、一回限り、または月額での支援を受け付けています。

詳細:月額メンバーシップを始めました(+OFUSEファンレターの送り方)

海外の読者には、英語圏を中心に広く使われているKo-fiのページを英語で開いてあります。

私は、既存の企業を介さず、クリエイターが受け手から経済的支援を直接受け取る構造は、自由な表現・言論を可能にすると考えています。少なくとも、理論上は可能といえるでしょう。

ただ、こうしたいわゆる”投げ銭”は、YouTuberやライバー、アイドルといったエンタメのカラーが強いため、私の読者層はあまり肌になじまないようです。特に、硬質な社会評論を読みに来る層には「若い人のカルチャー」と映るようで、ここには「世界が違う」くらいの異質さを感じます。そのため、私にとって、クリエイター支援サービスはいまのところは補助的です。

参考:クリエイター支援サイト9選ー作家視点のおすすめ&海外との比較

広告ブロック解除のポップアップ―読者に「やめて」と強くは言わない理由

私は2024年5月に、Googleが提供する広告ブロック解除をお願いするポップアップをサイトに導入しました。

広告の表示許可を促すポップアップのスクリーンショット
当サイトのポップアップ。パソコンでブロッカーを使用しているユーザーがアクセスすると表示される(2024年5月時点)。

このツール自体はだいぶ前にリリースされていたのですが、どうも分かりにくい代物だったため、私は導入を見送っていました。それが差し支えないレベルまで改善され、同時に多くのメディアサイトが表示するなど一般に普及したのを見て、時が熟したと判断しました。

ただ、訴えの強さとしては、読者に向かって「やめて」と悲鳴を発するほどのことはしていません。

その理由は、GAFAなどIT企業によるプライバシー侵害に私自身が問題意識を持っていることにあります。

もっとも、ユーザー側がセキュリティの知識を高めれば、IT企業による行動追跡は自分でコントロールすることが可能です(詳しくは後述します)。私自身、ネットセキュリティは自分サイドで十分整備しているので、むやみに怖い怖いと騒ぐことはありません。意外かもしれませんが、一介のネットユーザーとしては割とゆったり構えています。

しかし、プライバシーの感覚は人によります。ネットセキュリティを正しく理解した上で、それでもなおプライバシーが気になるという読者がいたとしても不思議はないので、「どうしても広告ブロックをやめてくれ」とまでは言わないことにしています。読者には自分の意思に基づいて判断してほしいと思いますし、それが作者・読者間の理想的な関係だとも思います。

不適切な広告への対応―改善されてきたものの、いたちごっこは続く

不適切な広告に関しては、Google AdSenseの「ブランド保護」によりブロックしてきました。Google社の対応は一定程度評価しています。

ただ、それでも私の側のブロックをすり抜けやすいのが、マンガ関係の広告です。「マンガ」というジャンル自体は一般向けですし、私はみなに親しまれている人気マンガが表示される分には歓迎です。問題なのは、広告主がアダルト系のマンガで広告を打ってきた場合です。「マンガ」という一般的なジャンルに属することでセンシティブ指定を潜脱しようとする悪質な業者がいるのです。私は深刻な記事や、小さい子が読むゲームの記事などを書いているので、これは頭の痛い問題です。これまでは「ブランド保護」で見つけるたびにブロックしていたのですが、先日とうとう業を煮やし、いくつかのマンガアプリをドメインレベルでブロックしました。

不適切なコンテンツとは、いたちごっこが続いているのが実情です。

インターネット広告を画期的だと考える理由

インターネットは第三次産業革命だといわれています。私はかねてから、アーティストはそれをクリエイティブに活用することで新しい「活動方法」をも作っていくべきだと主張してきました。

私は、インターネットに加えて広告を活用すれば、人類史上かつてない自由な表現・言論ができると目を付けています。

誰もが無料で読めるようにする意義

こうして執筆活動をしていると、時には、何かとても訳ありなんじゃないかという読者からメッセージをもらうことがあります。

例えば、あまり詳しくは書いてないけど、例外的なくらい経済的に恵まれていないのではないかと心配になるような人。あるいは、事情があって進学できなかったけれど、学びたい気持ちから私の記事を熱心に読み込んでくれた人。そういう読者からメッセージをもらうたび、私はいつも身が引き締まる思いがします。筆者としてこれほど報われることはありません。

こういう読者のために、これからも正確性を約束できる文章を書いていかなければ。読者がどこで話しても恥をかくことがない、「私は『日夏梢の自由研究』で学びました」と胸を張って言えるような、そんなサイトを作りたい。

私にとって、広告を掲載するメリットは、読者の経済力にかかわらず、誰にでも知を届けられることです。

あなたが私にお金を払わなくても、私はタダ働きになっていないから大丈夫。胸を張ってそう言えます。

何ならば、国連が「極度の貧困」と定義する現在1日1.25ドル未満で生活する人でも、SDGsとその視点論点について真剣に学びたいなら私のサイトは開かれています。誰かからスマホさえ借りれば来られます。無料で読んでもらっても、私が書いたものは上から目線の慈善にも、恩着せがましい偽善にもならないで済みます。広告を見せたがってる企業から広告料をとっているから私は大丈夫だ。胸を張ってそう言えます。

広告を掲載すれば、作家は創作物の対価を得られます。読者側は無料。そして、広告主は、広告を見せられるのだから満足しています。作家と読者と広告主は、いずれも得をしています。誰ひとり損をしません。三者に完璧なウィン・ウィンを成り立たせる、ということを私は実現したい。現代の表現・言論のため、その前例を作りたいと思っています。

言論の独立性と「自立したクリエイター」

焦点を日本にしぼると、そこには国レベルで特有の問題があります。日本の報道はレベルが低いのです。近年では特別な専門家だけでなく一般市民もそれに勘づいており、ネットでは「マスゴミ」という苛烈なスラングまで生み出されている始末です。

では、なぜ日本の報道は諸外国と違って質が上がらないのでしょうか?

私が今回指摘したいのは、旧来の業界の構造では、言論者がメディア企業や出版社に依存して働いており、それが表現・言論の独立性を害する原因となっているということです。戦後日本において、作家や評論家は企業の下請け業と化しました。事もあろうに、言論者に自由がないのです。この構造が成り立つ背景には、日本という国家規模で、会社を中心とした人生観や世界観が人々の頭に浸透している現状があります。

私が自分の創作活動のプラットフォームを自分で保有することにこだわっているのは、表現・言論の質と独立性の問題を解決するためです。

表現・言論の場を自分で運営する強さには、すでに手ごたえを得ています。

その強みが特に出たのは、人気マンガの劇場版の映画レビューを執筆した時だと思います。利害関係にしばられた大手メディアと出版社が一斉にステルスマーケティングを流す中、しがらみのない私は、純粋に自分の考えだけを書くことができました。記事は読者から大きな支持を受け、影響力を持つことができました。

【提言】私が呼びかけたいこと

最後に、私が訴えたいことを書いていきます。

要望の相手は広告ネットワーク運営会社

上で状況を確認していくと、問題の所在は広告の中身だ、という事実が指摘できます。閲覧の邪魔になるほどサイズが大きい。個人の行動が追跡される。内容が不適切。――根本的な問題はこれらの点です。つまり、広告掲載という仕組み自体が有害なのではありません。

したがって、私がクリエイターとして要望を送りたい主な相手は、GoogleやSNS等、広告ネットワークの運営会社です。ブロックツールを使っている読者側ではありません。

私は、インタレストベースの広告自体は、画期的で優れたシステムだと考えています。問題は、Google等巨大IT企業のやりすぎ、行きすぎです。GoogleやSNS運営会社は、自社の利益を優先して、人々が気味悪がるほど「ストーカー」をしています。差別思想など悪質なコンテンツも許容してきました。これは裏を返せば、改善の余地があるということです。Google等IT企業には、行動追跡およびコンテンツの適正化を求めます。

不適切な広告に対しては、サイト運営者側のコントロール機能をさらに拡大してほしいと思います。この点、Googleは対応を進めてきており、私は一定の評価をしています。ただ、すでに述べた通り、現状では不適切なコンテンツに抜け穴が残っています。

広告事業を展開する以上、GoogleなどIT企業には、インターネット上の表現・言論に対して社会的責任があります。そもそも、「広告ブロックツール」というものを作る人が現れた時点で、インターネットの状況は異常です。くり返しになりますが、広告掲載は一般的な商慣習です。それが巨大IT企業の利益ために破壊されている。将来の可能性まで根絶やしにされかねません。関係するIT企業には、さらに改善を重ね、広告事業者として成熟することを求めます。

読者に呼びかけるとしたら広告ブロックに替わるツール

私が読者に提案できることがあるとすれば、それは広告ブロックツールとは別の方法でIT企業による追跡を回避する方法です。

ツールは広告を根こそぎ取り払います。それがGoogle AdSenseだろうが楽天経由だろうがお構いなし。100か0かの両極端になりがちです。

ですが、あまり知られていないというだけで、インターネットの使用方法によっては、広告ブロックを解除しても、プライバシーを損なわず安全にサイトを閲覧することは可能です。

不適切なコンテンツに関しては、Google等がより精密に対応するのを待つしかありません。しかし、もしプライバシーを気にして広告ブロックを使っている読者がいるのであれば、代替案があるので、私はそちらを奨励していきたいと思います。

プライベートウィンドウで閲覧する

まず一つは、サイトをプライベートウィンドウ(シークレットタブ)で閲覧するという方法です。

プライベートウィンドウとは、ウィンドウを閉じた時に検索履歴と閲覧履歴が消去されるウィンドウのことです。この機能は、Chrome、Firefox、Edgeなど、皆が普段使っているブラウザには必ず付いています。なのでやり方はとてもかんたんですが、それだけでプライバシー環境を飛躍的に上げらます。

やり方ですが、まず、スマホ版のChromeでは「新しいシークレットタブ」をタップします。

Chromeアプリで新しいシークレットタブを赤い矢印が指している画面写真
メニューから「新しいシークレットタブ」を選ぶ。

たったこれだけでシークレットタブが使えます。

スマホ版Firefoxの場合は、画面上のマスクのアイコンをタップするだけでプライベートウィンドウに切り替えられます。

Firefoxアプリでマスクのアイコンを赤い矢印が指しているスクリーンショット
プライバシーへの意識が高いFirefoxは特にかんたんで便利にできている。

パソコン版のブラウザでは、三本線のメニューの中にあります。

実用的に言えば、

  • 検索はプライベートウィンドウでするようにする
  • リンクを開く時には、右クリックして「リンクを新しいプライベートウィンドウで開く」を選ぶ
  • よく見るクリエイターのサイトをお気に入りに入れておいて、毎回プライベートウィンドウでアクセスする

というように活用すると便利です。

そもそも、広告ブロックツールが生み出された大元の理由は、プライバシーへの懸念だと言いました。IT分野に詳しい人が追跡に気付き、拒否したいというニーズが生まれたのです。その点、プライベートウィンドウで閲覧すれば、ウィンドウをバツで消せば行動履歴がそのつど消えるので、追跡の対策になるのです。

私は、普段から、サイト閲覧の大部分でプライベートウィンドウを使っています。GmailやSNSのようにログインが必要なサイトは普通のウィンドウでないと面倒ですが(バツで消すたびにログアウトされてしまう)、サイトを見るだけならプライベートウィンドウで何の不自由もありません。インターネットには、ほんのちょっとのことでセキュリティ・プライバシーを飛躍的にアップさせられるという一面があります。何の努力もいらず、誰でも今すぐできるので、ぜひとも実践してみてください。

Firefoxの拡張機能「Containers(コンテナー)」でタブを分ける

私が特におすすめするのが、Firefoxの拡張機能「Multi-Account Containers」です。

Multi-Account Containersアドオンの入手ページ
「Multi-Account Containers」は、Firefoxだけにある、圧倒的支持を誇るアドオン。

これは、タブに「コンテナー」を割り当て、まるで別のブラウザのように分け隔てられる、というすごいアドオン。よく「仕事にはChrome、個人用はFirefox」というように用途をブラウザで分けている人がいますが、「Multi-Account Containers」を使えばFirefox内だけで同じことが、もっと細かくできるようになります。追跡Cookieはコンテナーごとに保存されるので、GmailやSNSのようなログインが必要なサイトでも利便性を損なうことなく、強力な追跡対策をすることができます。

外部リンク:アドオン「Multi-Account Containers」ダウンロードページ

具体的な使い方としては、「閲覧用」のコンテナを作り、「サイトを見るのはそこ」と決めておくなどが考えられます。コンテナーはたくさん作れますので、何ならよく見るクリエイターのサイトには専用のコンテナーを作っておくのもいいでしょう。

参考までに、筆者は以下のように活用しています。

FirefoxのMulti-Account Containersを開いたところの画面写真
筆者のFirefox。創作関係とプライベートを分け、GoogleやX(旧Twitter)など巨大ITには専用のコンテナを作ってある。

私は、特定のサイトを強制的にコンテナーで開くよう設定しています(例えば、Google系列のサイトにアクセスすれば自動的に「Google」コンテナで開かれる)。便利ではありますが、拡張機能自体が部分的には英語のままですし、SNSアカウントでのログインやアプリ連携ではうまく機能しなくなるのでやや上級者向けかもしれません。もし自信がなければ、毎回手動でコンテナを開くので十分だと思います。

セキュリティを強化する

これらの追跡対策は、他のセキュリティと組み合わせることでさらに強化できます。

まずは、ブラウザの閲覧履歴を時々消す習慣をつけること。自分の都合に合わせて、1週間に一度、1か月に一度などと決めておくといいでしょう。プライバシーが強化されると同時に心もスッキリするので一石二鳥です。

また、拡張機能に手を出す以前に、最近ではブラウザの設定にもトラッキング防止機能がついています。Chrome等の設定を確認してみるといいでしょう。

検索履歴について言えば、検索エンジンは何も世界にGoogleとYahoo! JAPANだけなのではありません。「DuckDuckGo」という検索エンジンは検索履歴を保存しないポリシーをとっているのでプライバシー対策になります。とりわけ、デリケートな内容を検索するとき(例えば健康や病気のことなど)には必ず「DuckDuckGo」をおすすめします。

外部リンク:DuckDuckGo

スマホアプリの中では、「Firefox Focus」はアプリを閉じるだけで履歴が消えるようになっています。「ちょっと検索したい」というときにはぜひおすすめです。

最後は有料のセキュリティになりますが、VPNを使ってネット接続を暗号化、匿名化するのは非常に強力な対策です。興味があれば検討してみるといいでしょう。

まとめ―問題の根本は巨大IT企業

以上、先日話題になった広告ブロックツールの無効化について論じてきましたが、いかがだったでしょうか。

はっきり言ってしまえば、広告ブロックによる損失の問題は、もとをたどっていけば、ほぼGoogle社の問題です。ニコニコでも、クリエイターでも、一般市民でもありません。インターネット上で働く人々がIT独占企業の不適切な活動のせいで割を食っている、というのが実のところなのです。

社会から批判を受け、Googleは対応策を打ってはきています。いまでこそグローバルとはいえ、Googleは起業家の国・アメリカの新興企業。実社会の中で試行錯誤しながらたくましくやってきた、地に足がついた企業です。問題は多々ありますが、「忖度」だの「株の持ち合い」だのと特殊な人間関係の内輪でお金を回している日本企業とは違います。「話せばわかる相手」ではある、という感じでしょうか。これまでも社会から批判されれば応えてきましたし、本稿で指摘した問題点もゆくゆくは改善していくだろうと私は期待しています。

そして、ひいては、インターネット自体がまだ登場して100年も経たない新しい分野です。クリエイターにとってのインターネットは夜明け前であり、あるべきインターネットは私たちがこれから作っていくものではないでしょうか。

いまの時代を生きるクリエイターとして、私はこれからも訴えを続けていきたいと思います。

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著者・日夏梢プロフィール||X(旧Twitter)MastodonYouTubeOFUSE

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