JR切符を安く買う方法~購入方法や払い戻しまで

日本は電車大国。日々の移動も、遠方への旅行も、乗り物といえば電車です。なかでも全国津々浦々を走りつないでいるのは、JRの在来線と新幹線でしょう。

実は、JRの切符には、いくつかお得に買う方法があります。今回は、JR切符を安く買う方法をリストにして、それぞれがどんなシチュエーションに向いているかなどをまとめてみようと思います。

回数券廃止後はSuicaサービスが代替

電車の切符をお得に買うといえば、まず最初に思い浮かぶのは回数券でしょう。JR在来線では同じ区間の切符を10回分の値段で11枚購入でき、新幹線にも20種以上の回数券が販売されていました。

駅に入ってくるJR新幹線はやぶさ
北海道・東北新幹線「はやぶさ」

ところが、JRは2022年3月末に新幹線回数券を廃止します。続いて同9月末には、JR東日本在来線の普通回数乗車券も発売終了となりました(身体障害者割引、知的障害者割引および通学用割引の普通回数乗車券は引き続き発売)。JR九州やJR西日本も先立つ2021年から順次、回数乗車券の廃止を行っていました。

回数券は、JR切符がお得になる方法として長年親しまれてきました。それが次々と廃止になるのは名残惜しい感じがします。

では、回数券相当のお得はもうなくなってしまうのでしょうか?

JR東日本は代替サービスとして、Suicaの「リピートポイントサービス」を導入しています。これは、同一運賃区間を同一月内に10回利用すると、1回分の料金が「JRE POINT」として還元されるというもの。利用には「JRE POINT」のアカウントにSuicaの登録が必要です。

「リピートポイントサービス」はポイント還元という形ではありますが、お得になる率としては回数券と変わらないことになります。これまで回数券を利用していた人は、Suicaを登録して「1回分無料」を続けるといいでしょう。

新幹線の「往復割引」とは?

新幹線には「往復割引」というのがあります。往復割引とは、

  1. 往復乗車券の場合に
  2. 片道の営業キロが601キロメートル以上あれば
  3. 「ゆき」「かえり」の運賃がそれぞれ1割引

になるというもの。つまり、往復割引で安くなるのは、長距離の新幹線ということになります。

突然「営業キロ」といわれても、ピンとこない……というのはもっともです。なので参考までに言及しておくと、先ほどの東京~京都は、約513キロになります。つまり、往復割引にはならないんですね。東京からでいえば、岡山まで乗れば往復割引の条件601キロを満たします。そうとうな長距離ですね。営業キロ数は、時刻表やJR公式サイトの運賃情報などで確認できます。

このような長距離新幹線に乗るときは、往復割引のほうが、次に紹介するネット購入よりも安くなる場合があります。

外部リンク:JR東日本公式HP 往復割引乗車券

ネット購入で安く「トクだ値」

JRは、ネットでの切符購入に、いくつかの割引プランを提供しています。

ネット購入での割引にはそれぞれ条件があり、好きな列車や時間帯、座席を選べるかどうかは運にもよるのですが、うまくチケットが見つかれば定価より何千円も安くなるのでお得です。

えきねっと限定割引(JR東日本・JR北海道)

「えきねっと」は、JR東日本による、新幹線・特急の指定席券、旅行パックのネット予約サービスです。無料の会員登録にて利用できます。

「えきねっと」のサービスのうち、「えきねっとトクだ値」は、

  1. JR東日本・JR北海道管内の新幹線と特急列車の、
  2. えきねっと会員限定、
  3. インターネット予約限定、
  4. 列車・席数・区間限定

の割引です。

「トクだ値」はさらに、乗車日13日前の午前1時50分までに予約すれば、割引率がより高い「お先にトクだ値」になります。なかには30%オフ、あるいは期間限定の「お先にトクだ値スペシャル」では20日前までの申し込みで50%オフなどという目玉商品も出ますので、「えきねっとトクだ値」はJR切符を安く買ってのおでかけを考えるなら要チェックなサービスです。

新幹線回数券と異なり、こちらはゴールデンウィーク、お盆、年末年始にも利用できます。座席は、事前受付の場合は座席表からの指定はできないのですが、窓側・通路側などの希望はできます。1回に最大6名まで予約可能。乗車日から3日以内の駅レンタカー割引もあります。

JR新幹線はやぶさの座席

2020年3月14日より、新幹線の「えきねっとトクだ値」「お先にトクだ値」は、交通系ICカードやモバイルSuicaでのチケットレス乗車「新幹線eチケットサービス」での利用となりました。

外部リンク:「えきねっとトクだ値」公式HP

スマートEX(東海道・山陽新幹線)

「スマートEX」は、JR東海が提供している東海道・山陽新幹線のネット予約サービスです。会員登録無料、クレジットカードと交通ICカードの登録が必要で、予約変更は発車時刻前まで何度でも手数料無料。乗車は登録のICカードでチケットレスになります。

スマートEXの切符は当日の発車4分前まで予約可能で、通常の新幹線運賃よりも区間により1,500~4,790円ほど安くなります。

スマートEXの割引が特に生きるのは早期割引を利用したとき。

スマートEXには、早期予約割引「早得」があります。乗車3日前までの予約で利用できる「EX早得」「EX早得21ワイド」「EXグリーン早得」「EXこだまグリーン早得」、土日休日2名以上で使える「EXのぞみファミリー早特」「EXこだまファミリー早特」と、覚えやすくわかりやすいサービス名で展開されています。

「EX早得21ワイド」は、乗車の21日前までの予約で、「朝6時台、昼11時〜15時台に出発する直通の『のぞみ』普通車指定席」が割引に。こちらは数千円単位で安くなるので、お得感満載です。

外部リンク:「スマートEX」公式HP

「一日乗り降り自由」切符は安いのか?

線路がどこまでも続くこの電車大国では、さまざまな地域に「エリア内一日乗り降り自由」という切符が存在しています。主には観光を念頭に置いた切符です。

東京を例にすると、JR東日本は東京近郊エリア用の「休日おでかけパス」というのを出しています。値段はおとな2,720円、こども1,360円で、利用期間は土休日と繁忙期の4月29日~5月5日、7月20日~8月31日、12月29日~1月3日。フリーエリアは都内および、東は成田、西は大月、北は熊谷、南は横浜を越え小田原まで広がり、JRの普通列車、りんかい線、東京モノレールが一日乗り降り自由になります。特急券を買えば、新幹線や特急、グリーン車に乗ることもできます。さらに、内容は全部同じでSuicaに搭載するタイプの「のんびりホリデーSuicaパス」は、おとな2,670円、こども1,330円と、ほんの少し安くなっています。購入は窓口である必要はなく、券売機から手持ちのSuicaに組み込むことができます。

もっと手軽なところだと、「都区内パス」はおとな760円、こども380円で、東京23区内のJR線が1日乗り降り自由です。こちらは休日・繁忙期でなくても通年買うことができます。

では、こうした「フリーエリア内一日無料」の切符はお得といえるでしょうか?

観光で使うとしても、ここは電車大国。東京の観光地は地下鉄駅や私鉄駅にも点在しているので、JRの上記「休日おでかけパス」や「都区内パス」だけでは行きたいところをカバーしきれません。地下鉄には地下鉄で、東京メトロが一日乗り降り自由の「東京メトロ24時間券」などを出しています。なるほど、地下鉄乗り放題なら、都内屈指の観光地・浅草も、渋谷・原宿方面も、銀座や丸の内もカバーできます。ただ東京の地下鉄は世界的な複雑さを誇るので、使いこなすには路線図を頭に入れ、臨機応変に動かなければなりません。

東京の地理を考えれば、観光で地下鉄に乗れないのは致命的です。だけどJRと地下鉄と私鉄各社では会社同士のいろいろがあるだろうし、本当の意味での「フリーエリア」は無理だろうな……と思っていたら、なんと実現したんですよ。

「東京フリーきっぷ」は、東京23区内のJR普通列車に加え、都内主要エリアの地下鉄、都電と都バスと日暮里舎人ライナーまで含んだ画期的な一日切符。値段はおとな1,600円、こども800円です。もとをとれるかというと微妙なところで、1日に何ヶ所も訪れなければ得にはならないのですが、「これ一枚でどこへでも行けるから安心」という心のニーズには最高にぴったりだと思います。東京観光、とくにはじめての方にはおすすめします。自動券売機での購入や、Suica搭載も可能です。

「エリア内一日乗り降り自由」のJR切符は安いのか、それは結局のところ、各自の目的によって決まります。判断するには、「その一日切符は何線で有効なのか」「自分の行きたい場所は何線の駅にあるのか」が必須のチェック項目。「一日乗り降り自由」切符は、全員にとって便利でお得というよりは、用途や計画次第ではお得・有用になりうる、という感じでしょう。

有名な観光地なら必ずチェック

しかし、観光向けの切符には、「絶対に買わなければ損」というものもあります。

JRでいえば、鉄道博物館に行く人向けの「シンカリオン×てっぱくきっぷ」というのがあります。これは、おとな4,050円・こども1,220円で、東京駅から大宮駅までの往復乗車券になんと新幹線の特急券がついてきて、大宮から鉄道博物館までのニューシャトル往復、鉄道博物館入館の引換券、それにオリジナルリングノートや鉄道博物館オリジナルグッズまでセットになっているという、鉄道ファン大喜びの内容。(発売・利用期間は2022年3月31日まで。)

観光向けの切符は、JRだけでなく、私鉄各社も積極的に提供しています。

東京では、なんといっても高尾山観光のそれでしょう。京王電鉄の電車往復とケーブル・リフト往復がセットになった「高尾山きっぷ」は、2割引のマストバイ。ほかにも、お台場方面ならゆりかもめの一日乗車券、新宿起点など小田急利用で鎌倉を観光するなら「江の島・鎌倉フリーパス」、江ノ電の一日乗車券「のりおりくん」には新江ノ島水族館のチケットとのセットなどがあります。

有名な観光地を訪れる際は、こうしたお得な切符セットがないかどうか、先に調べておくといいでしょう。

JR込みの旅行パックは、切符定価よりはるかにお得!

切符を買う目的が旅行であるなら、なんといってもお得なのはJR切符込みの「旅行商品」です。

宿だけの代金と同じくらいの価格で新幹線代まで含まれている、というような旅行パックが多数出ています。観光用でもいいですが、出張向けのパックは新幹線と宿が無駄なくセットにされているので、旅行の計画によってはこちらもおすすめです。私が京都のあるホテルで検証したところ、新幹線と宿を別に予約すれば合計39,170円のところ、この出張用パックでは25,570円と、13,600円も安くなりました。

JR往復と宿泊付き出張向けプラン
このような出張向けプランは、観光にも利用しやすい。

旅行パックになれば、私鉄乗車が必要な行き先であってもJRとバラバラではなくしっかり両方込みになっているので、その点でも便利です。

旅行なら、JR切符と宿をバラでそろえるより安くなる旅行パックのパンフレットにあたってみるのがいいでしょう。

その他雑記

最後に、JR切符を買う手続きや、いざというときの対処法に触れて結ぼうと思います。

切符の購入方法など

新幹線や特急の切符は、JRの主要な駅にある「みどりの窓口」や「びゅうプラザ」、あるいは自動券売機(指定席券売機)で買うことができます。支払いは、現金かクレジットカードです。

特急券・グリーン券・グランクラス・寝台券・指定席券は、乗車1か月前(前月の同じ日)の10時に一斉発売です。

特別車両など貴重な切符となれば、発売日の10時に完売します。手に入るかどうかは、窓口の駅員さんの腕や情熱にもかかっています。絶対にほしい切符があるなら、申込用紙をあらかじめ書いておき、発売日の10時きっかりに、窓口の先頭で待つ。これが必須です。

JR在来線の回数券は、窓口ではなく切符の自動販売機で手軽に買うことができます。

ネット予約の場合は、いわずもがなJRの当該サイトで購入します。「えきねっと」も「スマートEX」も会員登録が必要ですが、いずれも無料です。

払い戻し

普通乗車券、回数券、急行券、自由席特急券、特定特急券、自由席グリーン券は、使用開始前かつ有効期限内なら、手数料220円で払い戻しが可能です。

指定席特急券、指定席グリーン券、寝台券、指定席券の場合は、出発日の2日前までに、手数料340円にて。前日から出発時刻までの間には、切符の値段の30%が手数料となります。

新幹線や特急だけでなく、普通乗車券や回数券にも、払い戻しはあります。普通乗車券では、営業キロが1券片100キロメートルを超える場合のみ、すでに乗った区間の普通運賃と手数料220円を差し引いた残額が払い戻されます。

回数券が余ってしまった場合、有効期限内の未使用分は、払い戻しの対象となります。この場合の払いもどし額は、発売額からすでに使った枚数分の普通運賃と手数料220円を差し引いた残額です。

乗り遅れた場合

電車に乗り遅れた場合、指定席特急券については、同じ日のうちなら、後続の列車の普通車自由席に乗ることができます。

切符をなくした場合

切符をなくした場合は、駅の窓口か列車内の係員にその旨を伝えると、「紛失再発行」として、もう一度切符を買うことができます。

なくした切符があとから出てきた場合は、「再収受証明」を受けた日の翌日から1年以内であれば、なくしたほうの切符と「再収受証明」のある切符の両方を駅に持っていき、手数料220円(指定券なら340円)で、再発行したほうの切符の払い戻しを受けられます。

以上、ここまで知っておけば自分に合った安く買う方法に目星をつけられるし、駅で真っ青というときにもなんとか対処できるでしょう。よい旅を!

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著者・日夏梢プロフィール||X(旧Twitter)MastodonYouTubeOFUSEではブログ更新のお知らせ等していますので、フォローよろしくお願いします。

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