おすすめできる自己分析のやり方と、悪質な就活業者の見分け方

以前、仕事や人間関係でうまくいくには「自己肯定感」は必須であるという話をしました。そのなかで触れた自分を知る方法、つまり自己分析のやり方を、今回あたらためてピックアップしようと思います。

ビジネス向け心理はいつでも多くの人の関心の的となってきました。仕事をしていれば、どこかの地点で必ず心のあり方は正にも負にも人生を根底から変える絶大な力をもっているということに気付くからです。

ただ、自己分析を含め、ビジネス心理はかねてより粗悪な情報や悪質な業者が多い分野です。それは学生向けの就職情報も例外ではありません。若い学生が就活セミナーや講師から言われたことで悩んだり、自信を失ったりして、かえって内定から遠のいたり、人生を台無しにしてしまうやるせないケースが世にあふれている。にもかかわらず社会にそういう問題意識がないことに、私はずっと憤りを感じてきました。

そこで今回は、自己分析をする理由と私がおすすめできるやり方を紹介したうえで、業者やセミナーとの付き合いで注意すべきポイントを「独立した立場から」解説しようと思います。”就活”している学生さん、自分のやりたいことを探している若い人、はたまた仕事で成功しようとビジネス心理を掘り進んでいる方まで、ぜひとも参考にしてください。

目次

はじめに―「独学・非公開」をおすすめする3つの理由

現状、「自己分析のやり方」といえば、リクナビなど”就活”情報サイトや書籍、セミナーが主な情報源となっています。世間では、自己分析は就職を目指す学生がやるものとして認知されているようですね。

未来へ向かわんとする学生を応援、手助けしてくれるかのような会員型サイトや書籍、講師の面々。しかし、今回私が最も指摘したいのは、こうした”就活”業者の真の目的は、あくまで企業としての利益追求だということです。つまり、業者には業者の都合があるのです。

したがって、サイトやセミナー、書籍などで世に出回っている「自己分析のやり方」には、業者の都合によるゆがみや偏りがある。まずはこの点を認識しないと、知らず知らずのうちに業者の都合に振り回され、人生で道に迷いかねません。

本当のことを言うならば、自己分析は本来、”就活”の部品ではありません。仕事の場面でいえば自分のどこをどう変えればいいかを明らかにしたい起業家や経営者もよく使っていますし、ほかでも困難な過去を背負った方の心理療法、あるいは恋愛をはじめ人間関係の改善、はたまたお気軽な遊びなど、じつに幅広い目的で利用されています。

また、性格や個性、送ってきた人生は一人ひとり違います。そのため、誰にでも合った自己分析のやり方というのはありません。全員一律でやるのは無理があるし、”就活”などで行われる最大公約数的なやり方では得られる効果も下がってしまいます。

さらに後程くわしく述べる通り、自分を分析するなら必然的に、デリケートな内面の問題やプライバシーにかかわることなど「面接向き」でないことも表面化してきます。セミナー等ではグループワークが普通に行われているようですが、本質的には、大勢の前でやるにはまったく向かないワークなのです。

自己分析は本来、自由に、自発的に、一人で行うことです。何か求めることがあるからやるのであって、他人に言われてやるようなものではないし、内面の問題やプライバシーが表面化しても困らない安全な環境に身を置かなければフルに行うことはできません。そうでなければ真似ごと止まりになってしまいます。だから私は冒頭一番で、自己分析は「独学・非公開」を前提にすることを強くおすすめしたいと思います。

なぜ自己分析をするの?

では、自己分析を就職の場面でやるのはなぜなのでしょうか? 次にはその理由と意味を「独立した立場から」順序立てて説明してみようと思います。

仕事でうまくいきたい、幸せに働きたいとは誰だって思いますよね。

私は、「有能な人」とはとどのつまり、自分に合った職業を見つけた人のことだと思っています。

シンプルなモデルケースだと分かりやすいでしょう。たとえば、ムードメーカー的な盛り上げ上手でTOEICスコアが900点だけど手先の不器用な人が、「職人の世界にあこがれているから」「人間国宝になりたいから」と言って寄せ木細工職人の道を選んだらどんなことになるでしょうか。……成功しようがありませんよね。せっかくのチーム向きな資質や英語力は、埋もれたまま日の目を見ることなし。苦手な彫り物を毎日毎日朝から晩までやるのは苦行でしかないし、親方からはあきれられ、職人仲間とはぎくしゃくし、そうなれば結局は職場を去ることになるでしょう。大成すれば尊敬される仕事だったかもしれませんが、この人の場合は技術も何も身にならず、職を失い、残るのはつらい思い出と挫折だけ……。

自分に合わない職に就くとはこういうことです。もっとうまくいってよかったはずの人生を、自分でわざわざむずかしくしてしまうのです。

職場での人間関係もそうです。働く場所は、自分の性格や価値観とカラーが合っていなければ、居づらくなり、結局は退職するはめになってしまいます。たとえ高収入な職種ランキングにかじりついて業界や会社名であこがれようとも、自分の性格や価値観としっくりこない職場は進路希望として賢いとはいえません。

では反対に、自分に合った職業に就いたらどうなるでしょうか。自分の得意なことなら、そんなに無理をしなくても力を発揮できますよね。それにやる気が出るので、苦もなくすすんでスキルアップしていけるでしょう。結果として、さらに成功を重ねていける。好循環に入っていけるのです。

私たちの生きる現代社会には、職業の種類は数えきれないほどたくさんあり、働く場所も把握しきれないほど存在しています。仕事でうまくいくためには、そのなかからなんとか自分の適性に合った仕事を探し当てたい。そのためには、自分の個性や適性を知ること、つまり自己分析が必要になってくるのです。

どんな職種にも就ける人はいない。自分に合った仕事を射止めてこそ輝けるし、高収入にもつながっていく。

自己分析のやり方を「独立した立場から」解説

それではいよいよ、自己分析の具体的なやり方を「独立した立場から」解説していこうと思います。

「独立した立場」とは、”就活”関連産業としがらみがない、ということ。情報のゆがみを正すため、書き手としての独立性にこだわりました。

性格診断・適職診断

以前書いた「自己肯定感を高める10話」の第9話では、自分を知る方法、つまり自己分析のやり方をざっと11個リストしました。性格診断と適職診断は、11個のうちの2つです。

そう聞いて「なら診断テストも使っていいんだ」と思った読者もいれば、「じゃあ他のやり方が9個もあるの?」と驚いた人もいるかもしれません。

診断テストがいいものになるか、それとも害になってしまうかは、結果との付き合い方にかかっています。もし性格診断の結果シートを手にして「そうか、私は○○タイプだからこうなんだ」と自分を定義するとか、「あなたに向いている職業ベストスリー」を進路希望にしたりするなら、それは本末転倒です。診断はあくまで自分を知るための「道具」であって、それに振り回されたり従ったりするのなら上下関係が逆転してしまうからです。

しかし、本末転倒に陥らない限りであれば、こうした診断には利用価値があると思います。以下で私の実体験や感想からお話ししますが、良質なテストになれば、自分では見えない隠れた自分までよく知ることができるからです。

診断テストを選ぶ際のチェックポイント

では、世に氾濫する性格・適性診断はどれがいいのでしょうか? まずは診断テストを選ぶ際に注目すべきチェックポイントを、全部で4点挙げてみます。

  1. その診断テストの信用性はどうか:心理学や過去のデータなど根拠が明確で世から信用されているテストと、誰かがなんとなく思いついてネットにあげた「診断」では、信ぴょう性に雲泥の差がある。
  2. 診断テストごとの特色や、想定された利用目的を考慮する:たとえば興味関心を洗い出す系統の診断は自分のやりたいことを探している人に向いており、能力面の適性を調べるテストは得意不得意を知りたい人、性格分類論なら人生の方向性や人間関係を考えている人がやれば満足度が高い。
  3. 個人情報には細心の注意を(とくにネット上!):性格診断をうたってあなたの性格や心理を分析、収集する悪質な業者がいます。後ほど「悪質業者の見分け方」のところで詳述します。
  4. 診断テストの提供者は誰か。業者の場合は、その背景事情を考慮に入れる:たとえば求人サイトの診断テストだったら、サイト運営業者には「テストをやった人といずれかの企業をマッチングさせたい」というビジネス上の都合がある。

肩ひじ張らず、目くじら立てず、のみこまれず。性格診断・適職診断の類は、オープンな心で気軽にやってみるのがいいと思います。

私がおすすめできる4つの診断テスト―結果の活用法&リンク

診断の具体例として、ここでは他でもない筆者の体験談を紹介しましょう。私がやったことのある診断でおすすめできるかなと思うのは以下の4つです。

大手による関心・適性の診断テスト

一つ目は、某大手”就活”会社が作成した、高校生向けの適性診断です。「進路を決めるのに役立てて」と、高校の進路指導部がホームルームで用意したものでした。

内容的には、興味のある学問分野と適性のある職業を洗い出すような系統。残念ながら結果シートは捨ててしまったようなのですが(もったいなかった!)、私の向いている職業1位が「小学校の先生」だったというのは覚えています。ただ私の興味関心は別のところで固まっていたので、実際に小学校の先生になろうとしたことはありません。その時のクラスには、物腰からしてイラストから飛び出してきた秘書みたいな子がいたんですけど、彼女の向いている職業1位がズバリ秘書だったというので、周りの子たちが「合ってる、合ってる!」と笑っていたのが印象的ですね。

”就活”業者なら裏には「大人の事情」があるし、最大公約数的であるとはいえ、一応は過去のデータなどにもとづいて作成されているのである程度「当たる」ことには当たります。こうしたおおざっぱに自分の傾向を知ることができるテストは、一度くらいはやってみて損はないのではないでしょうか。

<エゴグラム>

二つ目は、「エゴグラム」。これは精神医学・心理学における代表的な性格診断で、医療だけでなく学校やビジネスなどの場面でも広く用いられています。

私は高校のころ、心理学に興味のある友達から「ちょっとやってみてよ」とプリントをもらってやったのですが、この時は「自分に厳しい性格だ」というような、自分的には意外な結果が出たんですよね。

自分で見えていなかった自分を発見できるのは、精神医学・心理学由来の診断ならではのメリットだと思います。

リンク:エゴグラム無料診断

<エニアグラム>

三つめは「エニアグラム」。ビジネス心理で人気な性格診断で、グローバル企業の社内でも活用されているといい、”就活”サイトでもよく挙がっているのでみなさん聞いたことがあるかもしれません。

文脈としては性格分類論の一種と位置付けられ、起源は古代ギリシア哲学、近年ブームのエニアグラムがつくられたのは1970年代以降のアメリカです。私は最近、SNS上の知り合いから聞いたのをきっかけにやってみました(ちなみに私はタイプ3か5。だいたいそんな感じの人がコレを書いてます)。自分の診断結果もさることながら、心理学系の読み物としてもおもしろいと思います。ただエニアグラムは、つくった人たちの傾向により神秘主義的な内容を含むので、そういう部分は好みが分かれるかもしれません。

<16 Personalities>

最後、四つ目は「16 Personalities」というもので、SNSのビジネス・起業家界隈で「当たる」と評判になった性格診断です。

リンク:16 Personalities(診断の選択肢と総合結果は日本語、ほかは英語です。学生さん、「英語なら読める!」と自信をもって!

ベースはユング心理学の研究、提供者はイギリス拠点の心理学者兼ビジネスコンサルタントです。私がやったきっかけは、こちらもエニアグラムのことをしゃべっていたSNS上の知り合いでした(ちなみに私は何度やっても建築家タイプ。めずらしいそうですね!)。海外の若い人がどのように仕事や人生を考えているかを行間から読みとれるので、日本人にはとくにおすすめです。

以上4つが私の診断テスト履歴です。自分でやってみた感想としてそれぞれ持ち味があったので、おすすめできると自負しています。よかったら挑戦してみてください。

こんな適職診断はアテにならない!

おっと、最後に笑えるオマケを。これは昔、某大手アルバイト情報サイトに設置されていた、簡単な性格診断でのお話です。

私がやってみたところ、「あなたは独立独歩型の性格です」という文がちょちょっと表示され、その下に「このタイプのあなたに向いている仕事」がザーッと出てきたのですが……全部タクシー運転手ってなんでやねん! タクシー、タクシー、タクシー、タクシー、世界はこんなに広いのに私に向いてる仕事がタクシー運転手以外一つもないってどういうこと!?

えー、読者のみなさん、これが業者の都合です。彼らはサイト利用者と求人している企業のマッチングを成立させたいから、誘導もごく普通にあるんですよね。

だから診断結果には一喜一憂しないで。

自分の人生を決めるのは、診断結果でも業者でもなく、自分なのです。

自己分析は簡単にできる!―本もサイトもセミナーもいらないやり方

以前自分を知る方法を11個紹介したと言いましたが、では残りの9個はどんなやり方でしょうか? ここでもう一度確認してみますね。

  1. 友達や先生や知人が、自分の性格について何と言ったか
  2. 異文化交流をしてみる
  3. 自分のことをまったく知らない人たちのなかに入ってみる
  4. 生まれ育った家庭環境の傾向を分析する(家族メンバーが生まれた年、育った時代背景、受けた教育、職業などを含む)
  5. 勉強して世界を広げる
  6. 新しいことに挑戦する
  7. 自分の作品をつくってみる
  8. 好きな音楽、マンガ、映画などについて、自分はそれのどういうところが好きで、世の中的にはどういう人がそれを好んでいるのかを考えてみる
  9. 「自己分析のやり方」を読んだら自分なりの感想を持つ

どうでしょう。「自分を発見しよう」という意識をもてば、世界のじつにさまざまな事象が自分を映す「鏡」になってくれます。私が挙げた9通りのやり方は例であって、なにもすべてではありません。思うままにいろいろアレンジしてみるといいでしょう。もしあなたが就職のために自分の傾向を知りたいなら、「分析で発見した個性を仕事につなげるにはどうすればいいだろう」「自分の個性が使えるのはどの仕事なんだろう」という順序で考えるのがコツです。

(筆者が言っていることの意味が分からないとか、”就活”で自分のやりたいことを聞かれて茫然とした、という読者はいるでしょうか? 自分を知るも何も、自己分析をやる主体としての自我がうまく発達していないために就職で壁にぶつかるケースは、いま日本社会で多発しています。この問題は別途詳しく論じたので、以下をご覧ください。)

参考リンク:崩壊する元”お受験”生―低年齢のうつ病、不登校、引きこもり、就職失敗など(「有名子役のその後や未成年ユーチューバーと「子どもにやらせる」産業の倫理」より)

自己分析のやり方を教えるフリをした粗悪な情報

”就活”の途中で自己分析に行き当たったはいいけれど、「本当にこれで自分のことが分かるの……?」「これが本当に自分なんだろうか……」などと疑問や違和感を感じる学生はじつに多いです。もしかしたらあなたもその一人かもしれません。

じつは、自己分析のやり方については、明らかにいいかげんな情報が世に平然と出回っています。なのでもしあなたが疑問や違和感を感じたなら、それは自然だし、鋭いことなのです。

就職関連業者には業者の都合があるので情報がかたよっている、ということはすでにちょこちょこと言及してきました。ここからは、なぜ粗悪な情報が平然と流通してしまうのか、その裏事情を具体的に指摘していきたいと思います。

「なんだか機械的で、違和感が……」その原因と背景

”就活”業者が教えてくれる「自己分析のやり方」に目を通すと、なんだかテンプレ的というか、機械的な印象を受けはしないでしょうか? まずはその理由と背景から論じていきます。

リクナビの不祥事から分かること―お客様は学生ではない

2019年、大手”就活”情報サイト「リクナビ」が、利用者である大学生の同意を得ないまま、サイト利用履歴等から内定辞退率を予測したデータを求人する企業に売っていたことが明らかになりました。

参考リンク:リクナビ事件を忘れるな―ローカル企業はGAFAより怖い?(「GAFA独占の問題点と日本の現状・課題」より)

その気持ち悪さに学生たちから悲鳴が上がったのは当然で、私も学生を一体何だと思っているのかと憤ったものでした。ただ別の側面に目を向けると、それまでネットのセキュリティやプライバシーにあれほど能天気だった日本人のIT独占企業に対する理解は、リクナビ事件をきっかけにぐんと上がったように思います。目が覚めた、とでも言いましょうか。

リクナビの不祥事から分かること。それは、”就活”業者の「お客様」は求人する企業であって、未来へ向かう学生ではないということです。彼らは仲介業。企業から中間マージンをとることが目的です。彼らの事業は学生のためになっている面がないわけではないにせよ、真の目的が別のところにあるという点では、”就活”関連の産業構造における学生は「大学病院の患者」に近いといえるかもしれません。

このように、”就活”業者がサイトの利用を無料とし、適職診断を提供したり、「自己分析のやり方」をネットに書いたりしているのは、学生を呼び集めて「お客様」たる企業に引き渡し、中間マージンをとるためであって、学生のためを思ってやっているわけではありません。したがって、彼ら業者が発信する情報の信ぴょう性にはかなり疑問があって然りです。

”就活”業者ゆえのゆがみ

今回は深入りしませんが、”就活”はみんながやる当たり前のことのようでいて、世界にまたとない特殊な世界です。それをパーツの一つとして動く戦後日本の企業文化全体が、諸外国にはない独特な世界だからです。(それが私がダブルクオテーションでくくって俗語扱いにしている理由です。)

「自己分析のやり方」の発信元が世界中ほかのどこにもない特殊な”就活”に根を下ろして利益を出す企業なのだから、その情報がゆがんで偏るのは当然の成り行きです。

「内面やプライバシーに踏み込めない自己分析」という根源的な矛盾

以上のように、業者は”就活”ありきの頭で自己分析を語っているのですが、本来の自己分析は往々にして自分の内面深くに踏み込みます。精神的に非常にデリケートだったり、プライバシーにかかわることに触れる可能性が高いのです。

「精神的に非常にデリケートなこと」には、暴力や虐待によるトラウマ体験や、精神的に不健全な環境下にあったことなどが含まれます。たとえば中学の時クラスにいじめがあって、自分も集団から汚物を使った暴行を受けた。あるいは、いじめで成り立つ暗いクラスで、息をひそめて思春期をやり過ごした。もしくは、自分こそがいじめの加害者だった――。

プライバシーもそうです。たとえば、小学生のころ親と親戚の間で事業継承をめぐる骨肉の争いが勃発したため、子どもらしい感情を表すことができず、情緒の発達がうまくいかなかった。あるいは、父親が長年アルコール依存症で、家族には今なお借金がのしかかっている――。

どうでしょう。セミナー会場で大っぴらに言えることではありませんよね。自分の思考パターンや外界のとらえ方を客観化する自己分析では、そのルーツである自分の過去をたどっていきますが、その「過去」には心的外傷経験なども含めた「面接向け」ではない内容も必然的に出てくるのです。本当はこういうデリケートなことこそ自己分析では大きな意味を持ちますし、そういう人生の困難を乗り越えるためにやることでもあるのですが……”就活”イベントをまるくおさめるためには、精神面やプライバシーにかかわることは邪魔でしかありません。ワークショップの最中に学生の一人が立ち上がって、上記のようなぎょっとする話を始めるところを想像できるでしょうか?

そこにもってきて、何ナビイベントの講師などは、心的外傷などに関してはズブの素人です。精神科医でもセラピストでもありません。イベント会場には不特定多数が集まるので、確率的にそういうデリケートな問題を秘めた人がまざっているはずなのですが、講師にはそれに対処する能力がありません。対処しなければならない義務もない。

以上のような都合から、”就活”由来の「自己分析のやり方」には、あなたの精神面やプライバシーに踏み込むことがないよう無理な調整が加えられています。制限付きの自由が自由ではないのと同じように、根源的な矛盾をはらんでいるのです。

だから私は「独学・非公開」前提をおすすめしているのです。セミナー会場ではできないことってありますよね?

自分を掘り下げる作業は、部屋でひとり、静かにやること。面接で話すのは、そのなかから職業向けに選りすぐった部分だけである。

どの就活サイトにも同じことしか書いてないのはなぜ?

ネットで「自己分析のやり方」を検索すると、どのサイトを見ても書いてあることは同じなんですよね。

もしあなたが「なんか言論統制みたいで気味が悪い……」と違和感を覚えたならその通り。ここでは「どのサイトを見ても同じ」が生じるメカニズムを解説します。

書くことが大同小異になっていくメディア業界の不気味な現象

「どれを見ても同じ」になる原因の一つは、メディアそのものに内在しています。(もっとも”就活”業者はプロの記者でもライターでもなく、メディアとしては素人なのですが、本稿では「情報を発信している者」と意味を広義にとって「メディア」に入れることにします。)

これを理解するには、1930年代の新聞がよい例になります。日本全国どの新聞も「国際連盟を脱退せよ」の怒号で気持ち悪いほど一致した、あの恐ろしい時代の話です。なぜそうなってしまったのかといえば、じつは言論統制で政府に無理やり書かされた……ということではなかったんですよね。

そのころ、新聞業界は競争が激しくなっていました。どの新聞社も、読者を一人でも多く獲得してライバル社に勝とうと熱くなっていたのです。

当時は、軍国主義的な記事、外国への憎悪をあおる情報が読者にうけました。ちょっとうけると、新聞社同士の競争は軍国主義合戦になっていきます。読者獲得レースで一歩でも前に出るため、どの新聞社も軍国主義的な記事を書くようになっていく。こうして軍国主義的な情報は「テンプレート」となり、社会に定着していったのです。

こう聞くと、「なら一社だけ違うことを書いたら、目立って注目されるのでは?」と思えますよね。しかし、現実はそうはなりません。現実に起こってくるのは、同じ軍国主義での速報合戦だった。

ひるがえって今日ですが、リクナビをはじめとする業者はどこも利潤を目的とする企業なので、互いにライバル会社です。メディアがライバル社に勝ちたいと願ったら、あとは1930年代の新聞と同じ現象が起こってくる。情報を発信する”就活”業者間の競争によって、「自己分析のやり方」というカテゴリの情報に「テンプレート」ができあがっていくのです。

「自己分析のやり方」というテーマにおいては、メディア同士の競争が情報を大同小異に追い込んでいく性質が顕著に表れていると私は見ています。

(私は本稿で、あえて独自の着眼・立論・展開をして「一社だけ違うことを書いた」状態をつくってみたので、これが読者にどう受け止められるのかを興味深く見守っています。社会学専攻の学生さんなどいますかね?)

大同小異に輪をかけるネット検索の幕の裏

こうしたメディアに内在した問題に輪をかけるのが、ネット検索の仕組みです。

Googleで「自己分析 やり方」を検索した結果。パターン化されたページタイトルがザーッと並んでいるが……?

簡潔なプレゼン風に見えなくもないタイトル群ですが、実はこれにも裏事情があります。ITとなれば私もサイト管理人として内情に通じているので、その幕の裏をお見せしましょう。

企業間の競争がネット上に舞台を移すと、各社の目指すところは「Google等の検索結果でライバル社より上に表示されたい」になります。上に出れば出るほど検索した人の目にとまりやすく、ページに来てもらえるので、ライバル社に勝てるというわけです。

ありとあらゆる企業がネット上でレースを繰り広げるようになったため、ITの世界には「検索結果で上に表示されるためのノウハウ」ができあがりました。今日ではその専門業者がいるほどで、大手企業になれば必ず業者を利用したり、社内に専門の部署を置いたりしています。

そうしたITノウハウの一つに、「ページタイトルに数字を入れる」というのがあります。”就活”業者がネットで「7ステップ」だの「8ステップ」だのと言いたがるのはひとえにそのため。実際に「7ステップ」や「8ステップ」で自己分析ができるからそう書いた、というわけではないのです。少し冷静になってみれば、まぁそうだろうなと分かるでしょう。人間は地球上で最も複雑な生き物で、個性も送ってきた人生も考えていることも全員違うのだから、たった数ステップで自分のことをまるごと明らかできるはずがありません。

さらに、「リスト型記事は人気が出る」というノウハウもあります。映画であれ何であれ、ネット上では「おすすめ5本」だとか「まとめ」「比較」などと題して商品やリンクがズラズラと羅列されているページをよく見ませんか? ああいうのがリスト型記事で、IT業界ではひとつの型として定着しています。これで、あのサイトにもこのサイトにも性格診断がズラズラと羅列されている理由がわかりましたね。

以上のように、”就活”関連企業がどこも同じITノウハウを用いてレースを繰り広げているから、どのサイトもそっくりになってしまうのです。

企業同士が競争するのは自然な市場原理ですが、それもいまや暴走状態にあり、”就活”業者が発信している「自己分析のやり方」は正しい情報の範疇から外れてきていると感じています。

自己分析で道に迷わないために

以上の通り、業者の都合もあって粗悪な情報が氾濫している現代社会。

なら、自己分析の本当のやり方は? 方法はすでに11個も挙げましたので、ここではそれに臨む際のポイントを3点(ITっぽく!)付け加えておきましょう。

大事なのは、「自己分析をするのは、自分の個性に合った職業や会社を探し当てるためである」という大原則にいつでも立ち返ることです。たとえ自分を見失いそうになっても、指針をにぎっていれば、もと進んでいた道に戻ってこられるでしょう。

二番目のポイントは、性格診断・適性診断をするときは、”就活”の世界から独立した診断テストを必ずいくつかまぜること。

たとえば、エゴグラムはもともと精神医療に使われるテストでした。またエニアグラムは、先ほどは神秘主義的な部分は好みが分かれるかもしれないと言いましたが、別の視点で見れば、70年代以降のアメリカ発ということは戦後日本の”就活”の世界からは完全に独立しています。「16 Personalities」は友人関係や恋愛、子育てなどを含んで、仕事だけではなく人生全般を考えるのに役立つよう構成されています。

結果の的確さがビジネス界で評判なこれらのテストは、発信元の立場からしても信ぴょう性が高いのです。

そして最も大事なのは、自分の希望が第一であるということです。たしかに世で信用されている適職診断はよく当たったりしますが、「好きこそものの上手なれ」と言うじゃないですか。自分の新しい可能性を発見したり別の道を考えるきっかけにはなるでしょうが、進路を決めるのは、あくまで自分なのです。

悪質業者の見分け方

”就活”をするなかで悩んだり、自信を失ったりする学生は後を絶ちません。

最初に抱いていた将来への希望が、面接を重ねるうちにどんどん色あせていった。内定が出なくて「自分は世の中に必要とされていないんだ」と深く落ち込んだ……。それで自己肯定感(ありのままの自分を肯定的に受け止められる気持ち)や自尊心(自分をかけがえのない存在だと感じられる気持ち)をなくしていくと、面接でも輝きがうすれていき、就職がますます遠のいて……というように、悪循環に陥るのです。

でも、ちょっと待って! あまり取りざたされていないだけで、”就活”関連は、悪質な業者が多い世界なんですよ。

ごく普通に行われているが、”就活”は特殊な世界。当たり前な顔をして前に立つ関連業者も、裏には事情をかかえている。

悪質な業者の言うことは気にしなくていいんです。思い返してみてください。以下のような兆候はありませんでしたか?

セミナー会場の雰囲気が異様

まずは最も分かりやすい例を二つほど紹介しましょう。どちらも実話です。

  • 著書を何冊もかかえる有名な講師のセミナーに参加したら、ビルの一室に閉じ込められる形になり、壇上で6か月連続講座の宣伝が始まった。
  • セミナーに申し込んで会場に行ってみたら、建物が宗教団体のビルだった。

……悪質な講師や団体の典型ですね。

ビジネス向けセミナーの場合は、悪質な業者といってもたいてい申し込みの時点ではまともに見えます。行ってからあやしいと感じたり、会場が異様な雰囲気だったりした場合は、必ず手を切りましょう。

講師が一方的な指導者としてふるまう

以上はあからさまに危ない例でしたが、”就活”関連の悪質な業者はそうと分かりにくいケースが多いんですよね。だから講師やセミナーが悪質な業者だと気づかず、言われたことを真に受けてしまったために、多くの学生が自信や希望を失って、人生を台無しにされているのです。

なので、ここでぜひ「悪質な業者のサイン」を覚えていってほしいと思います。

まずは、業者や講師の態度です。一方的な指導者としてふるまってはいませんか? 学生を何も知らない人のように扱ってグイグイ引っぱろうとする人物・業者は危ないので、距離をとるのが安全です。

具体的には、

  • 「(就職は)こうなんですよ」「社会とはこういうものです」などと、話し方が断定的
  • 口調や態度が強権的
  • 学生に対する態度や言葉遣いが礼儀正しくない、見下したよう
  • ああしろこうしろと言う
  • 「そんなことでは内定はとれない」「社会でやっていくにはこうならなければならない」などと「厳しさ」を強調する

こうした言動は、学生側のニーズを考慮していないサイン、脅しによって参加者をコントロールしようとしているサインです。

先ほど「セミナーに行ってみたら会場が宗教団体のビルだった」という例を紹介しました。さすがに特殊な話のように感じたかもしれませんが、一見まともで大勢の学生が参加しているイベントであっても、上記のようなサインがあった場合、やっていることの中身は宗教の「教祖様」と変わりません。

”就活”関連では現状このような悪質な業者が野放しなので、学生のみなさんは気をつけてください。相手がどういう人物かを引いた目で確認して、この人・この業者はあやしい、信用できないとなったら、けじめをつけてスパッと切ること。ビジネス関連の講師はみな、信頼置ける経歴やこれまでの実績、誰もが知る有名企業で働いた経験などをアピールしますが、注目すべきなのは、その人の人格と、背景事情です。

悪質な業者に言葉や態度で示されたことはすべて心の中で切り捨てて。

人には誰しも個性があり、個性にはかならず仕事で活用する方法があります。

参加者に「いい悪い」をつける言葉や態度

一方的な指導者としてふるまうのと関連して、「いい悪い」をつける言葉や態度がないかどうかもチェックです。こちらは「教祖様」タイプより物腰はソフトですが、悪質さは同等です。人の心にするりと入り込んでくるので、細心の注意が必要です。

たとえば、グループワークをやらせて、目立った人だけを「そうです、そうです、よくできましたね」などとほめそやかしていないか。

あるいは、「これでいいのかな?」と手が迷っている人に「改善」を提案するなど、暗に「今の状態ではだめ」「だめな人」という態度をとっていないか。

本来の自己分析では、いい悪いはつけません。なぜなら、人の個性にいい悪いはないからです。

個性はそれぞれ。いい悪いや優劣はない。

にもかかわらず上記のように「いい悪い」を示すのは、業者や講師の都合によります。

業者がイベント会場を時間で借りているなら、時間内に「これをやって、こうなりました」とまるくまとめて、きれいに幕を下ろさなければなりません。(これは悪質な業者だけではなく、良心的なセミナーでもある程度は起こります。)

ビジネス心理の講師の場合は、成果をあげた外形を必要としています。彼らは「私のワークショップをやったことで、参加者がこれだけの成果を出しました」「私の講演は参加者に好評でした」といった「実績」を自分の経歴に書きたい。なぜなら、それなしには次のイベントや講演、研修に呼ばれなくなってしまうからです。もちろんどんな職業にも善人はいるものだし、ビジネス心理の講師がプロフィールに実績を書くこと自体は少しもやましいことではないのですが、もし実績欲しさからセミナー参加者を自分の都合に沿うよう誘導するに至ったら、それはもはや悪質業者。あなたのためを思っているわけではないので、切り捨てるべきです。

セミナーに参加するのはいいけれど、引いた目は忘れずに

私はなにも、「大人の事情」があるからといってセミナーは全部あやしいとか、参加するなと言っているわけではありません。たとえあまり良くない業者に当たってしまったとしても、行ってみたという行動自体が人生経験になるからです。

ただ、セミナーや講師を客観化する引いた目はいつでも忘れずに。これは悪質業者対策としてはもちろん、良心ある講師に対してでも同様です。

皮肉なことに、”就活”イベントをはじめとするビジネス心理のワークショップは、自己分析ができている人ほどやりにくいんですよね。なぜなら、自分の体系が講師の体系とぶつかってしまうから。たとえば、講師が「では、尊敬する人をリストアップしてください」と指示したら、強固な思考や世界観、人生観ができている人ほど「そんなこと急に言われても……」となってしまう。

セミナーに出てみた。講師が教えるメソッドをやってみた。大事なのは、それを自分はどう思ったかです。自分というものは、いつでもしっかり持っていたいですね。

ネット上の性格診断では個人情報に注意!

最後は、IT方面から自分の身を守るアドバイスを。

性格診断の類は、インターネットの黎明期からネット上の人気コンテンツとなってきました。無料ですし、なんといってもおもしろいからです。

……サイトをやっているのが誰で、入力された情報をどう扱っているか、考えたことはあるでしょうか。

SNS史上最大最悪といわれる事件は、まさにネット上の性格診断で起こったんですよ。心理学者がネットにあげた診断系アプリが8700万人分の個人情報を吸い取り、政治コンサルティング会社へ流出。それがあのトランプ大統領当選の決め手となったといわれています。

現代デジタル社会では、たったのワンクリックがまるでSF映画のような惨事につながるのです。送信してしまったら最後、個人情報は手元を離れてどこへいくやら、もう永遠に取り返しはつきません。

後悔先に立たず。ネット上の診断をやる際に気を付けるポイントを挙げておきます。

  1. サイトをやっているのが誰かを確認し、何の目的かを意識する
  2. プライバシーポリシーを確認する
  3. 不明な点があったり、あやしいかもと感じたら身を引く。絶対にやらない
  4. ログインした状態でやったなら、結果は他の個人データと紐づけされるということを理解する(たとえば”就活”サイトに会員登録して、ログインした状態で診断テストをやったなら、あなた本人ですら把握できていない内面深くの性格的傾向や適性、深層心理が、氏名や住所、学歴や閲覧履歴などと結びつき、その全データは業者の手元に蓄積される。)
  5. パソコンやスマホ、ネット通信のセキュリティを固めておく(参考:自分の身は自分で守る―自分でできる対策(「GAFA独占の問題点と日本の現状・課題」より)

「インターネットを有効活用せよ」と訴えてきた私は同時に言います。ネットでのプライバシー対策で「最強なのは紙だ」と。紙の本ならそんな心配ゼロですよ!

結びに

ビジネス向け心理はいつでも多くの人の関心の的となってきました。なかでも自己分析は、とりわけ若い学生の人気を集めています。これからの人生何をしようか、生き方に高い関心があるからです。

しかし人々の関心やニーズがあるからこそ、ビジネス心理には粗悪な情報や悪質な業者がつきものです。なかには、若い人をがんじがらめにして人生を破壊するような悪質業者も……。もし読者のあなたが本稿で見破る術を身に付けられたなら、独立した立場で書いた冥利に尽きます。

個性は一人ひとり違います。”就活”にせよ、起業や専門職など別の形で就職するにせよ、すべての個性は仕事に活かし、人の役に立てることができます。あなたも自分の個性を知って、人生を幸せにしてくださいね。

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