2024年ポケモン新作情報&スカーレット・バイオレット(SV)レビュー公開!

ゲームの世界的ビッグタイトル・ポケットモンスター、略してポケモン。1996年の第1作目から数々の社会現象を巻き起こし、いまでは世界中で愛されるシリーズとなっています。この記事では、ポケモン新作情報の要点を随時更新し、歴代タイトルを紹介しながら私の思い出や感想、レビューを綴っていこうと思います。

(最新:2024年の最新情報に更新しました。)

目次

2024年最新情報

『スカーレット・バイオレット ゼロの秘宝』の番外編配信【最新】

2024年の第一報は、『スカーレット・バイオレット』のダウンロードコンテンツです。同作の追加有料ダウンロードコンテンツ『ゼロの秘宝』に「番外編」が配信されることになりました。

「番外編」は、アカデミーでの学園生活や冒険を共にしたネモ、ペパー、ボタンと一緒にキタカミの里を訪ねる物語だということです。

配信開始は1月11日(木)23時。プレイできるのは、『スカーレット・バイオレット』本編のエンディング後のイベントおよび『ゼロの秘宝』の「前編・碧の仮面」「後編・藍の円盤」のメインストーリークリア後です。

まだまだ続くパルデアの冒険。2024年も期待が膨らみますね!

公式サイト:https://www.pokemon.co.jp/game/

ポケモンゲームの歴史とエピソード・レビュー

さて、以下では歴代ポケモンゲームの発売日、ハード、冒険する地方や特徴的な要素などを紹介し、私の個人的な思い出などについて語りたいと思います。

ポケットモンスター赤・緑

1996年2月27日発売。ハードはゲームボーイ。舞台はカントー地方(モデルは日本の関東)。悪役はロケット団。

すべてはここからはじまった。記念すべき第1作目は、今日のアニメやキャラクター商品などを含む「ポケモン」すべての原点です。

本作は、当時のゲーム業界では対戦に少々使われるくらいでほとんど日の目を見ていなかった「通信ケーブル」にスポットライトを当て、モンスターを交換ができるという画期的なアイデアを打ち出しました。「通信交換」という要素を活かすため、出現ポケモンが異なる2つのバージョンを同時に発売するというほかにない展開でスタートしたのです。

世界観の着想は、ディレクター・田尻智さんの虫とりに熱中していた少年時代だということです。話し出せばものすごく深い話になるのですが、自らのリアルな体験をゲームという形に構築するというこの発想方法は、型にはまりがちなゲーム制作の発想、ひいては現代文化全体に対するひとつの答えだったといえるでしょう。

今日では世界的スターとなったピカチュウは、『赤・緑』の序盤「トキワの森」でたまに出現するポケモンでした。

桜アフロをかぶったピカチュウのぬいぐるみ
ポケモンといえばピカチュウ。すべてはトキワのもりからはじまった。

序盤では貴重なでんきタイプだったので、当時のプレイヤーたちは「ゲットしておけばあとがよい」と草むらをかきわけました。のち、アニメ化の際にマスコットキャラクターとして白羽の矢が立ったことで、ピカチュウは「ポケモン」の「顔」となっていきました。

『赤・緑』および下記の『青』『ピカチュウ』は、現在、ニンテンドー3DSのバーチャルコンソールでダウンロード販売されています。

1996年10月15日より、キャンペーンの賞品などとしてプレゼントされた限定バージョン。のち1999年10月10日より、一般販売が開始されました。

ストーリーは赤・緑と同じの「別バージョン」ですが、ポケモンのグラフィックや図鑑の説明が一新されています。

ピカチュウ

1998年9月12日発売。『赤・緑』の別バージョン。

ピカチュウバージョンは、テレビアニメの主人公・サトシと同じような冒険を体験できるのが特徴です。最初にもらったピカチュウが主人公のうしろをついてきて、ふりむくといろんな表情をしてくれます。また、アニメのキャラクター・ロケット団のムサシとコジロウも登場し、アニメの世界観を楽しめるようになっています。

金・銀

1999年11月21日発売。ハードはゲームボーイカラー(ゲームボーイも可)。

舞台は長い歴史をたたえるジョウト地方(モデルは近畿・四国)。エンディング後には、ジョウトのとなりに広がる『赤・緑』の舞台・カントー地方をめぐることができました。

ポケモン金銀1999年プロモーションチラシ
『ポケモン金・銀』1999年当時のチラシ

世界的ブームとなった「ポケモン」の、待望の完全新作でした。『赤・緑』の続編で、壊滅したロケット団が復活するというストーリーです。ポケモンにもたせるどうぐ、タマゴ、現実世界と同じように流れる時間は本作で初登場。「色ちがい」の初登場もあり、ポケモンの世界がうんとカラフルになりました。

クリスタル

2000年12月14日発売。ハードはゲームボーイカラー専用。『金・銀』の別バージョン。

ストーリーは『金・銀』とほぼ同じですが、スイクンを追う謎の青年・ミナキが登場。また、本作から主人公の姿を男の子と女の子から選べるようになりました。さらに、戦闘にとびだしてくるポケモンに動きが加わって、今日に通じるバトルの臨場感が芽生えました。

当時、ゲームボーイカラーでは、「モバイルGB」という携帯電話を介して遠距離通信できるシステムが開発されていました。クリスタルバージョンは「モバイルGB」に対応し、遠くの人とバトルする試みが組み込まれています。今日インターネットを利用して行われるグローバルトレードやバトルの原型は、『クリスタル』ですでにあらわれていたんですね。このころの「できたらいいな」が、いまでは当たり前に。テクノロジーの進歩がどんなに目覚ましいかを物語っていると思います。

心にしみる、伝説のポケモンの神々しさ

ジョウト地方の伝説の地・エンジュシティは京都の風情。ですが華々しい古都というよりは、失ったものを静かに語り継ぐ、切ない雰囲気なんですよね。町の音楽にただよう物悲しさはゲームボーイのスペックによるのではなく意図的な作曲だし、なによりその伝説は、後悔に満ちた悲しい物語です。

――昔々、エンジュシティの二つの塔にはそれぞれ強大な力をもつポケモンが舞い降り、羽を休めていた。しかし人間による火災で塔の一つは焼け落ち、小さく無力な3匹のポケモンが亡くなってしまう。あわれに思った虹色のポケモンは3匹に新たな命を与え、みにくい争いばかりの人間に愛想をつかして飛び去った。――

ジョウト地方の伝説のポケモンは孤高の存在。人間を超越しているんですよね。人間たちがみずからのおろかさに気付いて戻ってきてほしいと願っても、決して舞い戻ってはくれず。伝説として残っているのは、喪失の悲しみなんですね。ゲームらしく「ホウオウはポケモンと心をかよわせ『にじいろのはね』を手に入れた主人公のもとに再び舞い降りる……」という展開ではありますが、人間のもとから去ってしまうかもしれない存在だという「定義」が変わるわけではありません。海の神と伝えられるルギアも同様で、「嵐の夜、荒れ狂う海で銀色の竜のようなポケモンを見た」という、見間違いかもしれないような話があるだけ。うずしおに阻まれ立ち入ることすらままならない「うずまきじま」のそのまた最深部で、静かにたたずんでいる。遠い存在です。

うっそうと茂った「ウバメの森」のほこらもそう。時を越え傷をいやす森の神・セレビィは、平和な時代にしか姿を現さない。

人間はかつてポケモンに見捨てられたし、人間がおろかな争いを始めればきっとまたいなくなってしまう。それを前提に、いまいっしょに旅をしている。

「金銀が最高だ」というファンはいまもいるようですが、私からみると、ジョウト独特の良さは心にじーんとしみいる世界観。伝説のポケモンたちが、神々しく輝いていたと思います。

幻すぎる!「しあわせタマゴ」

そんな世界観の金銀、私の個人的な思い出は「しあわせタマゴ」なんですよ。

ポケモンにもたせておくと経験値を1.5倍もらえる「しあわせタマゴ」は、今日のバージョンではストーリーのどこかで必ず手に入りますよね。ところが金・銀・クリスタルで初登場した当初は、野生のラッキーがまれに持っているだけの激レアアイテムだったんですよ。

「いいアイテムだな~、ほしいなぁ」程度の軽い気持ちで、当時の私は14・15番道路の草むらをかきわけ、「どろぼう」で「しあわせタマゴ」をねらうことにしました。ところが始めてみたら、想像を絶する難関で。なにせ野生のラッキー自体が超レアなので、出会えるのは1日に多くても3匹。1匹も出なかったなんていう日もしばしば……。持ってない、持ってないと言い続け、発売から約1年。ついに、ついにそのラッキーの順番はめぐってきたのでした……! 通算94匹目。その間、「せっかくこれだけ野生と戦うんだから」と育て始めてレベル100に到達したポケモンはボックスにぞろぞろ並び、ニドリーノやモルフォンの色違いも複数ゲット(私は色違いモルフォンの育成に手をつけた時、むしタイプの驚くべき強さに気が付きました)。かくして私は、何よりもレアな「しあわせタマゴ」をゲットしたのでした。

ハードがゲームボーイアドバンスに移行した時、技術的な問題で金銀世代のポケモンとアイテムはルビー・サファイア以降にくりこすことができませんでした。なので1年苦労した「しあわせタマゴ」もそれきりになってしまったのですが、自分でも意外なことに、ショックはなかったんですよ。もう途中からは経験値を多くもらおうなんて思っていなくて、「しあわせタマゴ」をゲットすること自体が目標になっていたからです。よくあれだけがんばったなと、今ではなつかしい思い出になっています。

ルビー・サファイア

2002年11月21日発売。ハードはゲームボーイアドバンス。舞台は、自然が豊かなホウエン地方(モデルは九州)。悪役はマグマ団とアクア団。

「とくせい」が加わり、ダブルバトルが加わり、バトルの戦略が飛躍的に複雑化しました。また本作で初めて「バトルタワー」が登場。バトルにやりがいを求めるプレイヤーの前に、バトルタワーでの50連勝、そして100連勝が、夢の目標としてそびえ立ちました。

伝説のポケモンへ通じる遺跡の謎解きに、点字の解読がありました。町の施設や人々との会話にも様々な豆知識が盛り込まれ、現実とのクロスオーバーがおもしろい作品でした。

ポケモンの戦うだけではない一面をみられる機会として「コンテスト」があったのが特徴的。また、ポケモン一匹一匹のステータスに「せいかく」が加わり、愛着がぐっと増しました。

ほかストーリーやバトルの本筋とは別に、世界のどこかに自分の「ひみつきち」を作れるという、心ときめく要素もありました。

私の「マボロシじま」が幻と消えた事件

普段は存在しないのにごくまれに現れるという、不思議なふしぎな「マボロシじま」。その出現を教えてくれるキナギタウンのおじいさんに話しかけるのを、当時の私は日課にしていました。

そしてある日、ついにおじいさんは言ったんですよ、「なっ なんと きょうは マボロシじま みえるのじゃ」と! 歓喜した私は、勇んで右方向へなみのりしました。ところが……ないんですよ。おかしい、おかしいなと右へ左へ、上へ下へ。おかしいと思いつつも、しかたないのでいったんキナギタウンに戻ると、おじいさんの言葉は「きょうは マボロシじま みえんのう……」に変わってしまっていたのです。えっ、なんで!? さっき見えるって言ったよね!?

納得がいかないので、私は任天堂に電話をかけました。事のてん末を話すと、原因はわからないということでしたが、「改造データを受け取ったことはないか」と言われ……とんでもない!!! 私は改造データを避けるため、小学生のころからただの一度だって外部の人間と通信したことはないんですよ! 今だってそうです。友達とは通信せず、最近のグローバルトレードにも絶対手を出さず、これまでずっと自分だけでのプレイを通し、セーブデータという宝物を守ってきました。

私はその後ネット上のファンサイトを見て回りましたが(当時まだSNSはなかった)、「マボロシじま」が出たという話は、一つたりとて目にしませんでした。

今、ここでもう一度言わせてください。私の「マボロシじま」は幻となって消えました。

『ルビー・サファイア』にしかけてあった「マボロシじま」は、結局のところ、機能しなかった。これは改造データのカケラも踏んでいない完全にクリーンなソフトでの結果なので確実です。制作者の方、あの時任天堂の人は「制作チームにこういう事例があったと報告しておく」と言っていたのですが、伝わっているでしょうか。その話は私。私なんです。

ファイアレッド・リーフグリーン

2004年1月29日発売。ハードはゲームボーイアドバンス。初代『赤・緑』のリメイクです。

フシギダネ、ゼニガメ、ヒトカゲと主人公
ファイアレッド・リーフグリーンの説明書。イラストやグラフィックはやさしく素朴でなつかしいタッチだった。

ポケモンシリーズの隠れた名作

ゲームでもなんでも長く続くシリーズには必ず「隠れた名作」があるものですが、私は『ファイアレッド・リーフグリーン』はポケモンシリーズのそれだと思います。ただのリメイクと思うなかれ。エンディング後に行ける南の島々「ナナシマ」は、なんともいい味を出しているのです。

ナナシマには四天王カンナの家があったり、各地に読み物があったりして、『赤・緑』『金・銀』のストーリーの別の側面をかいまみることができるんですね。注意して読めば、その世界を一歩深く理解できるわけです。私はとりわけ、『金・銀』のライバルの素性をうかがわせるテキストを見つけた時にぐっときました。会話のセリフといった直接の描写ではなく、テキストから「うかがえる」んですよ。そうやってプレイヤーが情報を集めて頭で組み立て直すのは、ゲームらしい物語の見せ方、ゲームらしい楽しみだと思います。

想像力を刺激するような要素もふんだんに盛り込まれています。ナナシマには「しるしのはやし」というのがあって、「草が生えていないところが何かの模様になっているのでは?」みたいなことを言う人がいるんですね。それで「もしかして何か文字が浮き上がってくるのかな?」と思った私は、その幾何学模様をメモ帳に書き出してみたんですよ。しかし、なんのメッセージも出てこず……。ただおもしろい模様だというだけなんですね。ほか、ナナシマの最果てには、ズバットが出現するだけの小さなどうくつがありました。意味深なたたずまいですが、こちらも本当になにもありません。

ゲームの攻略情報というのは、ネットなど存在すらしていなかった80年代から根も葉もないうわさが飛び交う世界でした。何を隠そう、ほかでもないポケモン生みの親・田尻智さんは若いころ、アーケードゲーム『ゼビウス』のガセネタ騒動で「うわさの発信元」だということになってしまい、ゲーマー仲間の間でひどい目に遭ったとか……。しかし、『ファイアレッド・リーフグリーン』は、うわさが悲しいトラブルに発展するのを食い止めるのではなく、むしろうわさが生まれるのを楽しむようなしかけになっている。本当は何もないのに想像をかきたてる要素は、使いようでは「表現」となるんですね。興味深いです。

エメラルド

2004年9月16日発売。ハードはゲームボーイアドバンス。『ルビー・サファイア』の別バージョン。

『ルビー・サファイア』をベースに、「バトルタワー」が「バトルフロンティア」として大幅パワーアップしました。

「バトルフロンティア」は、バトルタワーを含む7つのバトル施設。それぞれでルールの異なるバトルが楽しめます。7つそれぞれには強力な「フロンティアブレーン」が待ちかまえていて、勝利すると「銀のシンボル」「金のシンボル」を手に入れることができます。

バトルフロンティアの濃密さ

『ルビー・サファイア』は世界観がよくできていて、バトルの楽しみも大幅に広がった良作だったのですが、別バージョン『エメラルド』はさらに圧倒的でした。

この濃密さ、もうなんと言ったらいいんでしょう。1本のゲームにここまでの広がりがある。1本をここまで遊び倒せる。まれにみる作品だったと思います。私もやりこみました。ひたすら、やりこみました。

私にとって衝撃だったのは、レンタルポケモンで戦うバトルファクトリーだったんですよ。なにっ、自分のポケモンを使えないのか! 知識と腕、そして応用力をためされるので、ポケモンというゲーム自体を新たな視点で解釈した感じでした。ほかでも劇的なバトルが続きましたね。バトルピラミッドの頂上でジンダイに勝った時なんかは本当に感動しました。銀のシンボルは全部集め、金もいくつか手に入れました。挑戦しがいがあったし、腕に自信もつきました。

ダイヤモンド・パール

2006年9月28日発売。ハードはニンテンドーDS。舞台は雪山がそびえ奥深い伝説が残るシンオウ地方(モデルは北海道)。悪役はギンガ団。

制作チームが「究極」をめざしたというだけあって、「時間」と「空間」の伝説をめぐる重厚なストーリーと世界観、バトルの戦略性、それからカセキ掘りやひみつきちといったおまけ的な遊びまで、すべてを極めた作品でした。

プラチナ

2008年9月13日発売。ハードはニンテンドーDS。『ダイヤモンド・パール』の別バージョン。

わが心の、永遠の名作

「ポケモン」の世界、ここに極まれり。私にとってシンオウ地方、とりわけ『プラチナ』は、ポケモンとしての完成形、そしてゲームとして永遠の名作です。

まず、世界観の完成度がずば抜けている。DSカードにつまっている世界の全体が、ダイヤモンドのような硬さと輝きをたたえています。トレーナーや町の人のさりげない一言まで、深い思考と理解に基づいて書かれているんですよ。

ポケモンプラチナミオシティ図書館
ミオシティのとしょかん。3階で読める時空神話の数々は、どれも非常に興味深い。

ゲームというのは、町中や道端の名もなき人の一言が世界観を大きく左右することがあります。私がドキッとしたのは、ズイタウン下の道路にいるスキンヘッドの一言でした。バトル前、彼は言うのです。自分のポケモンはギンガ団に殺された、と。ギンガ団はストーリー上ではヘンな服を着た集団みたいに言われていて、ともすればまぬけな悪役なのですが、主人公が直接見ていないところでは残虐な行いをしているのだということが、この一言でわかるのです。トレーナー戦が終わってしまえばその話は二度と聞けないのですが、インパクトは絶大でした。

テンガンざん山頂近くのギンガ団員に「お前の時間を戻してやる ポケモンを始める前にな!」と言われた時も、心臓がとび出そうになりましたね。ミシロタウンを出て一歩一歩世界を広げてきた、戻ることがないはずの成長を消し去るかのような一言。シンオウ地方のテーマである「時間」という概念を踏まえつつ、「ポケモン」の根源を体現している名ゼリフだと思います。

名ゼリフはほかにもいろいろあって挙げたらきりがないのですが、物語には全然関係ない会話がたくさんあったのもいいですね。「主人公と脇役」という関係ではなく、それぞれの人がシンオウ地方で日々暮らしていて、それぞれに人生があるんだと感じられました。

ミオとしょかん1階では、エンディング後に四天王のゴヨウから様々な話が聞ける。こういう現実世界の豆知識は、ポケモンシリーズの隠れただいごみ。

それと、エンディングのアニメーションには感動しました。主人公が自転車をこいでいき、最後、家に帰ってくる――内容的にもグラフィックとしてもいたってシンプルなのですが、これこそポケモンのストーリーだと思います。最初は、自分とそのまわりだけだった世界。それが次の町、次の町としだいに広がっていき、ついに何かを成し遂げた時にふり向けば、あんなことがあった、こんなこともあったと旅の思い出がよみがえる。私は他のRPGでは劇的な人間ドラマに感動したことがありますが、ポケモンがくれる感動は壮大なドラマ性ではなく、一人の人のかけがえのない「経験」に由来するんですよね。

バトルフロンティアの完成度も最高でした。タワータイクーンのクロツグを激戦の末に下したのは、伝説のバトルとして私の胸に刻まれています。いまでもその時のバトルビデオを再生するたび、あの感動がよみがえってきます。

ポケモンプラチナバトルタワータワータイクーンのクロツグとの勝負
タワータイクーン戦の音楽が始まると、あの時の興奮がよみがえってくる。

そこまで活躍してきた2匹をあっさり倒され、私は「また1人目からか……」としょんぼりあきらめかけたのですが、それでもシャワーズ1匹でねばって正解でした。私にしてはめずらしい長期戦にもつれこみます。シャワーズ対ミロカロスでらちがあかなくなった時、相手のクロツグはミロカロスをひっこめてカイリューを出し、シャワーズをまひさせる戦略に出てきたんですよ(ゲーム業界のほめ言葉で「AIの頭がいい」といわれるあれです)。まひはさせられましたが、相性のよいカイリューとドサイドンは順に撃破。バトルはとうとう1対1の勝負に。

先の見えない長期戦。ところがあるターン、相手のミロカロスが無意味にさいみんじゅつを出してきたんですよ。あっ、これ、ミロカロス、攻撃わざのPPなくなったな!? ここで勝機が見えてきたのです。そしてついに……

ポケモンプラチナバトルタワークロツグに勝利
勝利の瞬間が…!

感涙でした。クロツグは強かった……!

私はバトルタワーで勝つため、すでにレベル100になっていた主力メンバーを育て直すところから準備をはじめたんですよ。きのみを育てて、薬を買って。地道な作業を続けました。満を持してバトルタワーに挑み、ついにつかんだ栄光の勝利です。私はタマゴを何百個もかえして選別して……というところまでやる猛者ではないのですが、『プラチナ』のバトルフロンティアで「銀のシンボル」をすべて集めたことはとても誇りに思っています。

『プラチナ』は小さな遊びもすごかった。コンテスト、スロットマシン、カセキほり、ひみつきち、リゾートエリアの家具集めまで。いずれも、それだけで1本のゲームになるのでは、というほどの完成度を誇ります。

『ポケモンプラチナ』は、私の心に一生忘れない感動を残してくれました。私は普段、ゲームがリメイクされたときに操作感やグラフィック等の違いに不満を抱くタイプではありません。そのことは『ファイアレッド・リーフグリーン』を高く評価していることからも感じてもらえると思います。しかし『ポケットモンスターダイヤモンド・パール・プラチナ』だけは、2021年に新しい技術でリメイクされた時、満足できずに手を付けられなかった。私にとって、それくらい特別な作品です。

ハートゴールド・ソウルシルバー

2009年9月12日発売。ハードはニンテンドーDS。『金・銀・クリスタル』のリメイク。

本作には「ポケウォーカー」という歩数計が同梱されていて、ゲーム内のポケモンを「ポケウォーカー」に入れていっしょに歩くことができるという唯一無二のシステムがありました。ポケウォーカー内でもポケモンや道具を手に入れることができ、歩数は経験値として入るというすぐれもの。しかもポケウォーカー本体はバッグの中でも歩数をカウントし、生活防水加工もされているというハイスペックぶり。これだけでも価値があるんじゃないかと思えます。

ブラック・ホワイト

2010年9月18日発売。ハードはニンテンドーDS。舞台は、多様な人やポケモンが暮らし摩天楼もそびえる現代的なイッシュ地方(モデルはニューヨーク)。悪役はプラズマ団。

登場ポケモンを一新し、エンディングまで新キャラだけで進む仕様でした。主人公の幼なじみ、チェレンとベルそれぞれの成長や謎の人物・Nの複雑な心情を描くことでストーリーに重点を置き、また経験値のシステムを変更する、漢字を選べるようにする(ひらがなに切り替えると同じテキストでも言葉の表現が変わるので、両方読んで楽しむこともできる)、新要素「ゲームシンク」で専用サイトと連動するなど、あらゆる面で挑戦の姿勢をつらぬく意欲作でした。

ポケモンブラックホワイト3Dで描かれたヒウンシティ
イッシュ地方の大都会・ヒウンシティは初めて3Dで描かれた。また設定では漢字を選べるように。

ブラック2・ホワイト2

2012年6月23日発売。ハードはニンテンドーDS。ブラック・ホワイトから2年後のイッシュ地方を舞台とする続編で、Nの過去が明らかになります。

エンディング後には「黒の摩天楼」「白の樹洞」という新しい独特なバトル施設に挑戦できるようになりました。

X・Y

2013年10月12日発売。ハードはニンテンドー3DS。舞台は、美しい森や空が広がりおしゃれな雰囲気なカロス地方(モデルはフランス)。悪役はフレア団。

ニンテンドー3DSでの完全新作『X・Y』から、グラフィックがそれまでの2Dドット絵から3Dに移行します。主人公も3Dで描かれ、着せ替えができるようになりました。ただしマップでは従来のマス目式が採用され、2Dのテイストをふんだんに残しています。

人物やポケモンは3Dになったが、草むらをはじめフィールドマップはおなじみのマス目式。

重要な変更点は、新タイプ・フェアリーの追加です。ドラゴンタイプの天敵が加わり、X・Y以前から登場していたポケモンの一部もタイプ変更となったため、バトルは新しい時代を迎えました。タイプと相性の見直しは、1999年の金銀以来です。

新要素「メガシンカ」は、一部のポケモンに専用アイテムをもたせることで、戦闘中だけ「メガシンカ」してパワーアップできるというもの。最近恒例となった各地方オリジナルのパワーアップは、X・Yからはじまりました。

「ポケパルレ」では自分のポケモンをなでたり食べ物をあげたりしてかわいがることができ、ずっとこれだけやっていれば幸せというファンも出現しました。

ムービーシーンが生んだ「KISEKI」

世に星の数ほどある表現物。そのなかで『X・Y』のクライマックスムービーほど感嘆するものに出会えたなら、流れ星を拾ったごとき幸運に感謝せずにはいられません。「そうだっけ?」とピンとこなかった人は、ぜひこれを機にスタッフロールを見なおしてみてください。

どういうことかというと、ムービー楽曲「KISEKI」では7か国語で歌詞のテロップが流れるのですが、同じメロディの上を、違う言語でも同じ内容で、同時に歌えるよう、それぞれ歌詞ができているのです。私は日本語と英語、それから大学で第二外国語だったフランス語も少し読めるのですが、それに気づいた瞬間は、かみなりに打たれて一撃で倒れた気分でした。圧巻の一言です。

ポケモンX・Y「KISEKI」7か国語歌詞
「KISEKI」は殿堂入り後のスタッフロールでも流れる。上から、日本語、英語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、韓国語。(途中までは日仏二言語。)

BGMといっしょに歌詞のテロップが流れるといえば、『ファイナルファンタジーⅥ』が有名ですね。ハードのスペックに制限がある中、「まるで歌っているかのように聞こえるサウンド」をひねり出したのが、かの有名なオペラのシーンです。しかし時代は移り変わり、ハードの性能が飛躍的に進歩した今日では、ゲームのイベントシーンやエンディングに歌を挿入するのはごく普通なことになりました。制作者が歌を流したいと願えば自由にできるハードのスペックが整って、もう久しくなります。

しかし『X・Y』は、あえて「昔の」表現方法を選んだのです。各言語でボーカリストを起用したければそうできたにもかかわらず、ですよ。結果は「神業」としか言いようがありません。これこそまさに「奇跡」です。

『X・Y』のエンディングは、「日本語ユーザーには日本語バージョンの歌を流し、英語ユーザーには英語版を……」という「映画の吹き替え方式」では、表現として意味がないんですよ。歌の言語を決めるのは、プレーヤーなんです。プレーヤーそれぞれに、頭の中で再生する言語を決める自由があるんです。さすがに全7言語がわかるプレーヤーは全世界でもめったにいないと思いますが、最低二つ読めればこの意味をキャッチできるし、たとえ第一言語だけでも「きっとそういうことが起きているんだろうな」と推測はできますね。

音楽の途中でもプレイヤーが頭の中で自由に言語を切り替えて、それでも歌い上げる心は同じまま。それは自分と他言語のプレイヤーとの間も同じこと。いくらでも言語を行き来できる。「言語の壁を越えて心をわかちあう」深い感動は、とても忘れられるものではありません。

3000年にわたる壮大な物語を結んだ、「KISEKI」のムービーシーン。私は圧倒され、しばし放心しました。

オメガルビー・アルファサファイア(ORAS)

2014年11月21日発売。ハードはNintendo 3DS。『ルビー・サファイア・エメラルド』のリメイク。

カロス地方の「メガシンカ」と関連する「ゲンシカイキ」を軸としたストーリーが展開されます。以前の「マボロシじま」は大幅に変更され、複数のマボロシじまを行き来できるようになりました。

サン・ムーン

2016年11月18日発売。ハードはNintendo 3DS。舞台は、南の島がつらなり独特の文化が根付いたアローラ地方(モデルはハワイ)。悪役はスカル団。

『X・Y』に続く3DSでの完全新作は、マップのフル3D化に踏み切った、ひとつのターニングポイントとなる作品です。

ポケモンサン・ムーン3Dグラフィック
ポケモンシリーズ初のフルポリゴン。主人公の操作は十字キーから3Dスティックへ。(ちなみに、「海の民」は映画に登場したことがある。)

ジムバッジを集めてリーグに挑戦するという従来の流れではなく、カントー地方から引っ越してきた主人公がアローラ独自の文化「島めぐり」をするというストーリーが特徴的。各島で「ぬしポケモン」に挑む「試練」をこなします。

図鑑にロトムというポケモンが入り込み主人公に話しかけてくるという新要素は、ゲーム初心者向けのナビゲーション機能を果たしています。

ウルトラサン・ウルトラムーン

2017年11月17日発売。ハードはNintendo 3DS。『サン・ムーン』の別バージョン。

エンディング後、歴代の悪役が勢ぞろいした「レインボーロケット団」が登場。ポケモンの歴史をふりかえることができました。

Let’s Go! ピカチュウ・Let’s Go! イーブイ

2018年11月16日発売。ハードはNintendo Switch。

『赤・緑』のストーリーをそのままに、システムをアプリゲーム『ポケモンGO』と同じにしたゲーム。『ポケモンGO』プレイヤーや年少の子どもたちなど、新たなファン層開拓をめざす作品です。また、ピカチュウにならぶシリーズの「顔」として、これまでずっと人気を集めてきたイーブイをフィーチャー。次の時代への意識が感じられます。

ソード・シールド(剣盾)

2019年11月15日発売。ハードはNintendo Switch。舞台は、のどかな田園風景や重工業の町が共存するガラル地方(モデルはイギリス)。悪役はエール団。

この地方ではポケモンバトルが満員のスタジアムで行われるエキサイティングなエンタメだ、という華々しくて現代的な作風でした。バトルを盛り上げるのは、3ターンの間ポケモンが巨大化できる「ダイマックス」。Nintendo Switchのスペックを生かし、ビジュアル面の進化が目立ちました。

野生との遭遇では、従来の草むらでの遭遇と並列してシンボルエンカウントが導入されました。また広大な「ワイルドエリア」では、毎日天気が変わって違うポケモンと出会えたり、プレイヤーがカメラを動かせる仕様となっていたりと自由度の高い冒険を楽しめました。いつでもキャンプを張って151種類のカレーを料理できるのもプレイヤーの人気を集めました。

さらに、本作は後から別バージョンが発売されるのではなく、「エキスパンションパス」をダウンロード購入することで追加のストーリーを遊べるという、こちらもシリーズ初の展開がなされました。

以下、プレイしての感想とレビューを書き下ろしました。(以下はネタバレを含みます。)

グラフィックの勝利

新時代のポケモンがハードに求めたのは、シンプルにスペックだったんだ。シリーズ初、据え置き機での完全新作をプレイして、私はそう感じました。

主人公の10歩をプレイヤーが「旅」だと感じられるか。ゲームでは、操作性は奥の深い要素です。加えてグラフィックデザイナーにも、マップの10歩を100歩と感じさせる腕が求められます。なぜなら、主人公を10歩歩かせてもプレイヤーが「ちょっとしか動いていない」と感じれば、心にはせせこましさしか残らないから。操作していて息苦しいし、こうなるとゲームは何の味気もない「作業」になってしまうんですよね。しかし、だからといってだだっ広いマップを作ったなら、それはプレイヤーにとってダルい、めんどうで不親切なゲームにしかなりません。

そこをいくと『剣盾』のグラフィックと演出は優れていました。家を一歩出て小川の橋に来た時、「おっ」と期待が高まりませんでしたか?

ふるさと・ハロンタウンの開放的な風景。隣町のポケモンセンターまで見えている。

広い世界に出ていった、という感じがしました。

グラフィックの妙が生きるのは、なんといってもワイルドエリアでしょう。

ワイルドエリアは開放感バツグン!見えている場所は、すべて実際に行くことができる。

うんと遠くの町まで見えています。しかもそれはただの背景ではなく、実際に行ける場所。グラフィックが目指す方向性に、ワイルドエリアという概念はぴったりだったと思います。

プレイヤーが「ひろびろ感」を感じられるためには、グラフィックづくりに「思考」が必要です。そして理想のグラフィックを可能にするためには、より高いハードのスペックが必要だった。前作『サン・ムーン』はフル3D化に踏み切りましたが、『ソード・シールド』をプレイしてから思い返すと、当時はハードのスペックに限界が出ていたんだなぁと思いました。

グラフィックの完成度の高さは、マップにとどまりません。ゲーム業界の時流に流され何の思考もなしに「グラフィックをきれいに」を連呼したのではなく、きちんと「ポケモンのグラフィック」を作り上げていますね。古典的な草むらは3Dマップときちんとなじんでいるし、シリーズ初のシンボルエンカウント方式も、従来型のエンカウントと並行しているため自然に感じられます。

さらに、本作はイベントシーンへの移行がシームレスで唐突感がありません。映像の演出は、どの一瞬を切り取ってもプロの技そのものです。

3D時代のポケモンが、ひとつの完成をみた。私は剣盾のグラフィックに絶賛の拍手を贈りたいと思います。

確固たる「原作」としてのポケモン

数ある人気ゲームのなかで、ポケモンはテレビアニメや映画、グッズなどへのマルチメディア展開を大きな特徴としたシリーズです。『ブラック・ホワイト』でストーリーのドラマ性とキャラクターの心情描写に挑戦して以来、本シリーズはそれらの面に重きを置く傾向が続いてきました。とりわけ近年の新作では、主人公にかかわる人物たちのキャラクター描写が作品の骨格をなしていました。おそらくはテレビアニメでの展開をあらかじめ考慮しているのだろう。私は、「今後ポケモンは『原作』の地位をゲームからアニメにシフトしていくのかな」と感じつつありました。

それが今回『ソード・シールド』で、確固たる「原作」としてのポケモンを見た。私はシリーズ20周年を越えたここにきて、大きな手ごたえを感じました。

人物キャラは濃すぎず、だからといって淡白ではありません。フィクションの「キャラクター」として面白味はありますが、目立ちすぎはしない。人となりや過去、ちょっとした小話は、リーグカード裏面のテキストからうかがい知ることができる。プレイヤーが好きなように楽しめる、ゲームらしいキャラクターづくりだったと思います。

現在、プレイヤーがポケモンに求めるものは千差万別になっています。難易度の面では、手練れの猛者がいるかと思えば、はじめてゲーム機にさわる小さな子もいる。作品の方向性では、ゲーム性を求めてタマゴを何百個もかえし、バトルタワーや公式大会にいそしむ人もいれば、アニメから入りアニメのストーリーを追体験したい人もいる。もっとも、プレイヤーによって腕や考え方に差があるのは初代『赤・緑』のころからなのですが、ポケモンが世界規模のフランチャイズに成長した今日、その差はもはや世界に類を見ないほどに広がっています。実をいうと、『サン・ムーン』という作品から私がもっとも感じたのは、制作者の苦悩や苦渋だったんですよ。プレイヤーの多様性は極値に達しており、もはやすべてのプレイヤーを取り込むのは不可能ではないか、と。

そこをいくと今作『ソード・シールド(剣盾)』は、ポケモンシリーズのアイデンティティと今日の多様化したファンのニーズに絶妙な落としどころを作ったと思います。特定のキャラクターの描写に注力すれば、ゲームという表現、とくにポケモンのような「世界観」で語るような作品では「世界のせまさ」として表れてしまう。……どういうことかというと、関心が主人公の周り数名だけに集まり、そのメンバーだけでストーリーが決着すれば、画面の中の世界に無数のいろいろな人が住んでいるという感じがなくなってしまうのです。しかし『剣盾』のキャラクター設定や心情は、ゲームらしいおもしろさと両立しつつよくできていました。ドラマ性を要するアニメスタッフもネタに困ることはないでしょう。キャラクター描写を求めるタイプのファンも満足できると思われます。

ストーリーの内容的には、ポケモンらしさがよくでていました。とりわけ、伝説のポケモンの気高さが光っていましたね。

キルクス温泉英雄の湯にいるソニア
なぜ人間は英雄の湯につかれないという決まりになったのだろうか。誰がそう決めたのか。かつて人間はポケモンに悪さをしたのだろうか。想像はふくらみ、考えさせられる。

主人公をはじめガラル地方の人々がみな「スーパースターになりたい!」と一直線になれる明るさや開放感は、本作特有の華やぎを与えてくれました。

リアリティある悪役・エール団

そんな本作、特徴的だったのは悪役・エール団でしょう。

悪の組織はこれまでシリーズ全作に登場してきました。初代『赤・緑』のロケット団は世界征服をたくらむ犯罪組織でしたが、その後は伝説のポケモンの巨大な力を利用せんとたくらむ組織が多かったですね。『サン・ムーン』のスカル団はちょっと違って、「ゴロツキ」という感じでした。野望や目的はないものの、たむろしているうち、時には他の組織と結びつく。

ところが本作のエール団は、犯罪めいたことは何もしていない人たちです。ただ身勝手なだけ。応援しているマリィがリーグで優勝できるよう、ほかの選手をジャマする。スナヘビの昼寝を応援すると決めたら最後、通りがかった人にブチ切れる。カジリガメの応援をすると決めたら、居合わせた人に無茶を言い出す。

カジリガメを応援するエール団したっぱ
そんなムチャな……。

エール団は、勝手なことを言っては迷惑行為をはたらく人たちなんですね。巨大な野望がないからこそ、かえって「こんな人いそう……」と思えてきます。

「『応援する誰それのためなら』と見境をなくしていく人々」はエール団以外にも点在していて、それがストーリーの一貫性を生み出し、世界観に一本筋を通しています。

ポケットモンスターソードシールドのマリィ
応援するローズ会長のためならモノレールを止めて町を混乱させてもかまわない、という秘書・オリーヴ。当事者でない人は、あきれ顔か、そら恐ろしさか、こんな目を向けている。

また、本作『ソード・シールド』は、現代の風景をよく取り込んでいます。主人公やその友達は日常的にスマホを使っていて、これから行く町がどんなところかもあらかじめスマホで見ている。SNSも普通に存在していて、へんな髪の

おじぎするソッドとシルディ

も、検索すればすぐに目撃情報が見つかります。ポケモンリーグはエキサイティングで、ジムリーダーはスーパースター。

主人公は満員のスタジアムの巨大スクリーンに映し出され、映像がネットやテレビで放映されているという、現代的な世界設定。

応援する人のために見境をなくしていく人々もまた、いいことではないにせよ、現代の風景のひとつといえるでしょう。ただそれらはあくまで風景であって、「だからこうだ」と制作者側が舵取りをせずプレイヤーの解釈や感性にまかせる姿勢は、これまたゲームらしい表現だったと思います。

ポケモンはもともと、虫取りの体験をゲームに構築した作品です。「こんな人いそう」とか「こんなことありそう」と思える世界観を特徴とし、このリアリティあふれる世界が大ヒットにつながりました。その延長線として見て『剣盾』は良作だったと思います。

ブリリアントダイヤモンド・シャイニングパール(BDSP)

2021年11月19日発売。ハードはNintendo Switch。『ダイヤモンド・パール』のリメイク。

ストーリーは原作に忠実に再現された一方、グラフィック面ではフィールド上のキャラクターがデフォルメの3Dで描かれ、イベントシーンのカットインなどが追加されました。

原作がNintendo DSの上下2画面をうまく活用して人気を集めた「ちかつうろ」は「地下大洞窟」となり、カセキだけでなく石像が掘り出せたり、ポケモンの隠れ家で野生ポケモンと出会えるなどとパワーアップ。またバトル以外の要素「コンテスト」も、4人で協力してショーを行う「スーパーコンテストショー!」に変更されました。

Pokemon LEGENDS アルセウス

2022年1月28日発売。ハードはNintendo Switch。

本作の舞台は遥か昔のシンオウ地方。主人公の目的は、まだポケモントレーナーという概念すらなかった時代に、はじめてのポケモン図鑑をつくることです。本作は通常の野生ポケモンとのバトルに加え、プレイヤーが草に隠れたり動いたりしながらモンスターボールを投げてゲットするなど、アクション要素が追加された作品となっています。

主人公の服装が忍者風だったり、村が和風だったり、ポケモンたちが手つかずの大自然で生きていたりとコンセプトは斬新です。最初の一匹は、モクロー、ヒノアラシ、ミジュマルと、地方の垣根を越えたラインナップ。そして物語のカギを握るのは、これまでの作品では物語に直接登場したことのないアルセウス。意欲作となっています。

(レビュー執筆予定。しばらくお待ちください!)

スカーレット・バイオレット(SV)【最新】

2022年11月18日発売。ハードはNintendo Switch。舞台は、壮大な自然と色彩豊かな街が美しいパルデア地方(モデルはスペイン、イタリア、ギリシャ、トルコ、エジプトなど地中海沿岸地域を中心に、世界の様々な地域がモチーフに使われている)。悪役はスター団。

本作ではシリーズで初めてオープンワールドが導入され、3つのストーリーを自由な順番で進めていくことができました。また野生との戦闘は、草むらから飛び出すという従来の概念が廃止され、こちらもシリーズ初の完全シンボルエンカウント制になっています。最大4人でのマルチプレイに対応し、従来の交換や対戦だけでなく4人が同じフィールドで遊ぶことができるなど、オープンワールドの特性が活かされました。

シリーズでおなじみとなったバトル中のパワーアップは、ポケモンが宝石のようにキラキラ輝く「テラスタル」。そのタイプの技の威力が上がります。さらに、本来とは違うタイプに「テラスタル」すると自分のタイプを変えることができるので、戦略の幅が大きく広がりました。

ストーリーは学園が舞台であり、最初からパッケージのポケモンに乗って旅をするなど、シリーズ中では異色の作品となっています。

(※以下のレビューには、ストーリーの核心を含むネタバレがあります。)

着実に受け継がれるポケモン的リアリズム

初のオープンワールドで、舞台は学園。野生ポケモンは、すべてシンボルエンカウントに。こう聞いたら、真っ先に浮かんでくるのは「不安」ではないでしょうか。なにせこれまでの世界観と違いすぎるし、らしくない。発売前、私は「ポケモンにそういうものは求めていない」などと話すファンを見たものでした。私自身も、完全新作発売というわりには乗り気になれませんでした。

それがプレイを開始してみれば、画面の中の世界はじつにポケモン的な「身近にありそうなこと」で満ちあふれていた。発売前に想像したのとは違った意味で驚きでしたね。

特にリアリティがあったのは、学園ものである「スターダスト☆ストリート」でしょう。私たち誰もが体験する学校生活の雰囲気をよくとらえていたと思います。

『スカーレット・バイオレット』の悪役・スター団は、前作『剣盾』に続いて、壮大な野望はないけれど困った人たち。今回は学校の不良グループでしたね。

ポケモンスカーレットでメロコが登場するシーンのスクリーンショット
不良グループのリーダーがデコトラに乗って登場!

その不良グループとともに展開するテーマは、なんと、学校内でのいじめ。まさかポケモンがこういうテーマを扱ってくるとは思わなかった……! でも、学校生活で陰に追いやられたいじめられっ子の居場所のなさや、いじめのターゲットが変わった話など、「こんなことあるある!」と思わずうなずくエピソードは非常にポケモン的だと感じました。

主人公のスマホがハッキングされるのもそうです。

ポケモンSVで主人公のスマホがハッキングされた場面のスクリーンショット
自分のスマホが乗っ取られた――そんなヒヤリも現実に起こる時世。

これは現代の学校生活では絶対にない話ではありません。少なくとも現代デジタル社会の一面ではあるでしょう。(もっとも、中高校生でこういうハッキングをするのはカシオペア改めボタンのような天才ハッカーではなく、むしろ逆なんですけどね……。)

しかも、いじめの話は「スターダスト☆ストリート」クリアで完結かと思いきや、3つのストーリーの総決算である「ザ・ホームウェイ」にも通じていきます。

なんとコライドンもいじめっ子におびえていたのだと判明。ペパーたちに励まされて立ち上がる。

学園ストーリーが浮くことなく、作品全体にゆるやかな一貫性があって良かったと思います。

他にも、今作ではジムリーダーは全員他の職業を持っているのが印象的でした。ジムを訪ねるたびに「こんな人いそう!」と感じられたのではないでしょうか。

宝石のように光輝く作風の個性

このように、学園ものをポケモンの世界にうまく落とし込んだ時点で、『スカーレット・バイオレット』は異彩を放つ非常に個性的な作品でした。

が、個性的だったのは舞台設定だけではありません。3つのストーリーから紡がれたエンディングは、これまたシリーズ他作との違いが光ります。

ストーリー冒頭から触れられていた、ペパー親子のすれ違い。ならばゲーム的に、だんだん真実が明らかになっていって、最後は感動の再会の末に和解するんだろうな……という私の予想は見事に裏切られました。オーリム/フトゥー博士はすでに亡くなっていたと判明。しかもオーリムAI/フトゥーAIは別の時代へ消えていき、タイムマシンは停止して、悲しい終わり方をするのです。

私は驚きました。悲しいエンディングというのは、ポケモンとしても、またゲームとしてもめずらしいからです。

ポケモンスカーレットの主人公、ネモ、ペパー、ボタンがうつむいて歩いている場面のスクリーンショット
4人ともうつむいて、とぼとぼと帰路につく。こんなエンディングは見たことがない。

まず、ポケモンのエンディングは、激闘の末四天王に勝利し、殿堂入りして家路につくのがお約束。スタッフロールは感動に浸りながら見るものでした。

さらに、ゲーム業界全般を見渡しても、悲劇で終わる作品はほとんどありません。

そもそも、ゲームはなぜおもしろいのか、ゲームをプレイする喜びは何なのか――その答えは「達成感」にあるといえるでしょう。最初はおぼつかない手つきだったのが、だんだんうまくなる。強くなる。ゲームの全クリアは最高の達成であり、その作品の到達点でもあります。

だからでしょう、ほとんどのゲームでは、エンディングは喜びに満ちたものとなっています。RPGだと、だいたいは平和が戻った、黒幕が暴かれ捕まった、などのカタルシスが定番ですよね。アクションなどストーリーがないジャンルでも、スタッフロールは華やかなものと決まっています。もっとも、エンディングに悲劇的要素を含んだ作品はあることにはあります。でも、そうした作品にプレーヤーから賛辞が上がったかといえばそうではなく、ゲーム業界でメジャーにはなっていません。やはり「達成してゴール」というゲームの性質上、ゲーマーは喜びで胸いっぱいのエンディングを望むのではないでしょうか。

『スカーレット・バイオレット』のエンディングは、ポケモンとしてもゲームとしてもかなり個性的な結び方でした。だからといって後味が悪いわけではなく、他とは違うしんみりした余韻が残ります。色彩豊かなパルデア地方は、異彩を放つ作風とともに記憶されていくのではないかと思っています。

ネモがより道を提案するシーンのスクリーンショット
仲間とより道して帰るのもシリーズ初だった。

オープンワールドの長所・短所と今後の課題

シリーズ初採用となったオープンワールドですが、これは前作『剣盾』のワイルドエリアがマップ全体に広がったものといえます。また、全シンボルエンカウント方式や、モンスターボールを投げつけて野生とのバトルを開始するアクション要素は、同年1月に発売された『アルセウス』と共通なんですよね。なので『スカーレット・バイオレット』のオープンワールドは前の作品で少しずつ慣れていた方式を結実させたともいえるでしょうが、今後もこの形式が引き継がれるのかどうかは不明です。私はプレイしていて、一長一短あるなと感じました。

メリットといえば、まず挙げられるのは最初の3匹でどれを選ぶかによって有利不利が出にくいことではないでしょうか。

ニャオハ、クワッス、ホゲータのスクリーンショット
パルデア地方最初の3匹。

最初のジムは草か虫かどちらでもOKですし、ニャオハを選んだとしてもスパイス探しを先にやるなどが可能。タイプによる得意なエリアに進めば無理なくレベルアップできました。

またシンボルエンカウントは、図鑑を埋めるのには便利だと感じました。これまでは、何が生息しているのか知らず、目当てのポケモンがいつ出るかもわからず、やみくもに草むらをかきわけていましたよね。それがシンボルエンカウントだと、野性ポケモンをズバリ姿で確認できます。「あっ、こんなのがいた!」とか「あれまだゲットしてない!」と目で分かるので、図鑑はいつになく効率的にサクサク埋まっていきました。ポケモンがもともと図鑑完成をメインテーマとするゲームであることを思えば、シンボルエンカウントは功を奏している面はあったと思います。図鑑のレイアウトもアカデミックな雰囲気で目に楽しく、図鑑を読むおもしろさを思い出させてくれました。

他方、やはり初のオープンワールドにはデメリットもあると感じました。まず気になったのは、戦闘や移動中にたびたび起こるグラフィックの崩れです。バトルへのシームレスな移行はあまりうまくいっておらず、製作者がオープンワールドを作るのに慣れていないのかなという印象でした。

あと私としては、ほとんどの家や建物に入れなくなったのがとてもさびしかったですね……。前作までと比べて、町の人との会話は極端に少なくなりました。私はテキストから人々の生活ぶりや息づかいが伝わってくるのはポケモンシリーズの魅力だと思っていたのですが、そうしたおもしろさはすっかり削られてしまった……。

また、オープンワールドといっても、どのみちストーリーの流れや、コライドン/ミライドンの能力が解放されるまで行かれない場所はあります。そうなると、オープンワールド化にどこまで意味があるかは問われるところだと思います。

草むらから飛び出すポケモン。町の住人たちとの会話や、肌で感じられる世界観。『スカーレット・バイオレット』でオープンワールド化のために削った要素を、次作以降では戻すのか――今後のポケモンは、その取捨選択が課題になってくると思います。

結びに―自分だけの冒険へ

歴史を重ねてきたポケモンシリーズ、みなさんはどのバージョンが好きですか?

ゲームというのは一人ひとりが違う経験をするものなので、みなさん自分だけの思い出があると思います。私にもこうした数々の思い出がありますが、自分でやろうと決め、がんばってやりとげた経験は、決して忘れることがありません。いつまでも輝き続ける、貴重な宝物です。

これからもポケモン最新作の情報は、「ここを見れば要点がまとまっている」となるように、随時更新していく予定です。

(記事公開:2019年6月11日、最終更新:2024年1月1日)

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著者・日夏梢プロフィール||X(旧Twitter)MastodonYouTubeOFUSE

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