『Qアノンの正体』徹底解説(ネタバレ有)~混乱はどこから生まれ、どう展開したのか

ネット上で広がる「Qアノン」陰謀論。2021年1月には、その信奉者らが連邦議事堂を襲撃するという凶行に出て、世界を震撼させました。

こうしたいきさつからアメリカ政治の問題と思われがちなQアノンですが、実はその形成にはここ日本が深く関わっているということをご存じでしょうか? さらに、こうしたネット上の陰謀論は、宗教団体等の「カルト」の新形態としての性格を持っており、私はこの点でも注目に値すると考えています。

今回は、計6時間にわたる渾身のドキュメンタリー『Qアノンの正体』全6話を中心的な資料に事実関係を整理し、解説していきます。(以下はネタバレを含みます。同作はドキュメンタリーであり、フィクションのように先の展開を楽しみに鑑賞する趣旨ではありませんが、読者の自律的選択を尊重する見地から記載しておきますので参考にしてください。以下、敬称略。About Translations

目次

前提:Qアノン陰謀論とは?

Qアノンとは、基本的に「米トランプ(元)大統領は、アメリカの政界、財界、マスコミにエリートとして巣くう悪魔崇拝の小児性愛者らと秘密の戦争をくり広げている」という根拠のない陰謀論のことをいいます。

その主張は派生に派生を重ねて多岐にわたっており、例としては

  • 「トランプは救世主である」
  • 「世界は『闇の政府(ディープステート)』に操られている」
  • 「世界規模の児童買春の秘密結社があり、米民主党の政治家やハリウッドセレブが所属している」
  • 「『闇の政府』に所属するセレブや政治家が若返りのために赤ん坊を食べている」

などが代表的ですが、一定はしていません。また「新型コロナのワクチンは危険である」という主張もQアノン陰謀論の一環にあり、アメリカだけでなく、日本を含む世界中に混乱が広がっています。

すべての発端は、トランプ大統領当選から約1年後の2017年10月、英語圏の匿名掲示板サイト「4chan」で「Q」と名乗る者が始めた一連の投稿です。「Q」は「アメリカ政府の国家機密にアクセスする権限を持っている」と自称しました。Q名義投稿は合計約5000件にのぼり、2020年12月を最後に途絶えています。

Q名義投稿の年表

「Q」による投稿および重要な出来事を年表にまとめました。

出来事
2017 10 「4chan」で最初のQ名義投稿がなされる
11 「Q」が投稿の場を「8chan」内の「ボード」に移す
12 「Q」の偽者騒動
2018 1 「Q」が「8chan」内の別の「ボード」に移動。サイト管理人のロン・ワトキンスに本物だと認定される
8 「Q」のトリップがハッキングされる。
「Q」は自身が立ち上げた「ボード」に移動し、以後「8chan」だけに投稿すると宣言
2019 8 「8chan」がダウン。
(銃乱射事件を受けてCloudflareが「8chan」へのサービスを打ち切ったため。)
11 「8chan」がロシアのホスティングと契約し、「8kun」に改称して復旧
2020 11 ロン・ワトキンスが「8kun」のサイト管理人を辞めると発表
12 「Q」が最後の投稿をする

Q名義投稿者が誰なのかを調査するにあたって重要なのは、「Q」が投稿先を移動したタイミングです。その時に起こっていたことがポイントになるので、何度も確認しながら読んでいくといいでしょう。

Q名義投稿の特徴

Q名義でなされた投稿には、いくつかの特徴があります。最も重要な点は、明確な言い方をしないことです。文面が

  • 暗号のような文字列
  • 文に意味のよく分からない単語が含まれている
  • トランプ支持のスローガン
  • 誓いの言葉
  • キリスト教で唱えられる「祈りの言葉」の一部
  • 数字のみ

など、それ自体では何を言っているかよく分からないようになっているのです。そのため、Qアノンにのめりこんだ人々が不明瞭な文面を「解釈」するという独特なプロセスが生まれ、信奉者の間では最良の説を選び出す「Baker」や、解説動画を発信するYouTuber(”Qチューバー”)として人気を博す人が現れました。

ただ、なら信奉者はみな寄ってたかってQの不可解な投稿をこねくり回しているのかといえば、そうではありません。ほとんどの信奉者が読んでいるのは、「解釈」のまとめサイトやSNSです。著名なQチューバーといえども原文には当たっていないと話しているのは注意に値するでしょう。

他の特徴として、Q名義投稿者は、後述する「匿名掲示板」だけをプラットフォームに、どこの誰で、どのような人物なのか、素性を一切明らかにしていません。それゆえ、Qアノン陰謀論に引き付けられた人々は、各自が頭の中で好きなようにQ像を作り上げることができるようになっています。

信奉者による拡大

Qがらみの情報は、掲示板サイトやまとめサイト、またFacebook、Twitter、YouTube、Reddit(アメリカの大手SNS)などSNS上で広まりました。その主張は無数の信奉者が次々に新説を生み出すことで膨大になっています。なので一貫性はなく、互いに矛盾することもめずらしくありません。

アメリカ国旗とスマートフォンに表示されたQアノンの文字

SNS等で見つかる発言から、それを信じている人は世界に数十万人いるのではないかといわれています。

しかし、大元となっているのは「Q」の名義で掲示板サイト「4chan」および移動先の「8chan」でなされた投稿のみ。他の諸説は派生にすぎません。

そこで、正体をかたくなに隠し「Q」という名義で大元の投稿を行ったのは誰なのか、という問題が浮上してくるのです。多くの新聞社、ジャーナリスト、研究者などがその素性を探ってきました。

『Qアノンの正体』作品情報

『Qアノンの正体』(原題:Q: INTO THE STORM、2021年、アメリカ)は、オンラインプライバシーの啓発活動などを行ってきたドキュメンタリー映像作家、カレン・ホーバックが、著名な信奉者、政治家、ジャーナリスト、陰謀論研究者、そして関係するサイトの運営者に取材を重ね、一つの結論を出すまでを撮影した作品です。

取材は約3年、日本の札幌を含む世界各地に及び、エピソードは全6話の合計6時間近くにわたります。力作といえるでしょう。

日本では、動画配信サービス「U-NEXT」で独占配信されています(2022年3月現在)。

私がこのドキュメンタリーを特に貴重だと考える理由は、作者がQアノンに深く関わっているサイトの運営者ら本人に直接インタビューを行っている点にあります。本作を見れば、しゃべり方やしぐさを含む受け答えの全容を、自分で、映像で確認することができるのです。現在はもちろん、今後のネット上の陰謀論研究等においても一級資料になっていくと思われます。

「Qの正体を探ると袋小路に迷い込んだようになる」は本当か

『Qアノンの正体』第1話では、「Q」が誰なのかを探り始める導入部で「袋小路に迷い込んだようになる」という見方が紹介されます。続いて、ジャーナリストや信奉者らが、

  • トランプの家族
  • トランプ支持者
  • トランプの側近
  • 一人ではなくグループ
  • 米軍内のグループ
  • バノン(トランプ政権の首席戦略官)
  • トランプ自身
  • ”Qチューバー”

など、様々な説を述べる様子が映し出されます。

信奉者が数十万、Q名義投稿は約5000件。こう聞いたら、その中から誰かを特定するのはニューヨークで針一本を探すような話に思えてくるかもしれません。トランプ陣営が支持を集めるため自分であおったのだ、と言われれば説得力があるでしょう。

しかし、私はQが誰かを探るのをハラハラするミステリーのようにとらえる見方には賛同しません。なぜなら、以下のように整理すれば、事実関係は案外シンプルだからです。立場上、Q名義投稿者に関わっていないはずがない人物がいるのです。

なぜ「Q」はSNSを利用しなかったのか?―投稿型サイトの仕組みからわかること

SNS全盛のいまの時代。トランプ元大統領は、SNSを武器に過激な発言で支持を集めて当選を果たしました。そんな彼には「Twitter大統領」との呼び名がついています。

にもかかわらず、さんざんトランプ支持を叫んでいる「Q」が、Twitterでつぶやいたり、YouTuberとしてヘイト界のスターになったりしなかったのは、あらためて考えれば不思議ではないでしょうか?

これには、技術的にれっきとした背景があります。投稿型サイトというものの仕組みを押さえれば、Q名義投稿者の抱える事情が見えてくるはずです。

ウェブサイトにおいて、管理人の力は絶対である

まず第一に指摘したい事実は、「ウェブサイトでは管理人の力は絶対である」ということです。サイトを持っている側は、その一存ですべてのデータを思いのままにできるのです。

たとえば、私はこのブログの所有者兼管理人です。なので、サイトの色、幅、機能などは、好きな時にいくらでも変えることができます。新しいページを作る、掲載した文に手を加える、ページを削除するなども、技術的にはすべて自由自在。これがサイト運営者の視点であり、インターネット関連の問題を理解する上では大変重要なポイントになってきます。

大規模なサイトの場合は、たいてい法人化に踏み切ってサイト所有者を会社とし、管理業務に人員を雇います。それでも、「運営する側にサイトのすべてをコントロールする力がある」という原則は、いかなるウェブサイトでも変わることはありません。掲示板やSNSといった投稿型サイトでも同じです。管理運営者は、ユーザーの投稿、果てにはパスワードですら好きなようにできる絶対的権限を有しているのです。

投稿すれば、個人情報が運営者の手にわたる

SNSであれ掲示板サイトであれ、ネットに書き込むということは、正確に言えば、文や画像、投稿に関係する個人情報をサイト側に「送信する」ことを意味します。ワンクリックで送ってしまった情報は、もう手元には戻せません。

運営者の手にわたる個人情報は、サイト各個やネット環境などによって多少違ってくるのですが、たいていは文や画像に加えて

  • IPアドレス(インターネットに接続しているコンピューターに割り当てられる識別番号)
  • 使った端末の情報
  • 閲覧履歴
  • ログインしていた時間帯
  • 位置情報

などが含まれます。

……そんなことまで知られていたのか、と血の気が引いた読者もいるかもしれません。ただ、これはなにもあなたがツイートしたからといって、Twitter社のパソコンにあなたの氏名や住所まで表示されているという意味ではありません。むやみに不安感をあおらないよう言っておけば、集まるデータは限られています。運営者がデータを適切に扱っている限りは恐ろしい事態にはならないでしょう。

しかし、こうした情報が警察の捜査などにかかれば、人物は特定できます。インターネットは匿名ではないのです。

つまり、SNSのアカウントを開いて投稿をするならば、身元につながるデータが運営会社の手中におさまることになります。それを見られる人が社内にまとまった人数出てきますし、リークしないとも限らない。なので、たとえばもし「Q」がTwitterに投稿するなら、その運営者であるTwitter社には正体を隠しきれないのです。

こうした投稿型サイトの仕組みは、「匿名掲示板」とて同様です。匿名というのは見せかけにすぎず、運営者には、投稿した人の身元がかなりのところまで分かるのです。

したがって、「Q」は「8chan」の運営者にはある程度正体を知られていいと判断したということになる。ここから必然的に、Q名義投稿をした人物は「8chan」の運営者とは「仲間内」だという推測が成り立ちます。

以上より、Qアノン陰謀論を検証するため重要となるのは、

  1. 投稿先のサイト
  2. その運営者

の2点だということになります。

このことは、取材に走っていた各メディアも認識しています。著名な信奉者らですら分かっており、それゆえに「8chan」運営者を英雄視しているくらいです。

私は『Qアノンの正体』を視聴していて、同作にやや話を面白くしようとする傾向があるのは気になりました。作品の趣旨自体は、「米政府の機密にアクセスできる匿名のQ」と名乗った人物を白日の下にさらすことで、のめり込んだ人が目覚めるきっかけになればということなのですが、この見せ方ではかえって神秘性をあおりかねないからです。サイト運営という視点があれば「Qの正体」は最初から当たりがついているのだということは、早い段階で指摘されるべきだと思います。

要点はサイト3つと人物5人!

2020年の米大統領選や議事堂襲撃事件で注目が集まったので、Qアノン陰謀論はテレビや新聞などで目にしたことがあると思います。文字媒体のメディアであれば、ある程度詳しい解説を読むことができるでしょう。

ただ、出来事やその時系列、人物の相関関係、そして舞台となったサイトの仕組みは、かなり入り組んでいて分かりにくいです。なんとなくは知っているけど、正直理解はあやふやなまま……という読者も多いのではないでしょうか?

これをどう解説していくかは私にとっても悩みどころだったのですが、最も分かりやすいと結論したのは次の整理整頓法。すなわち、ポイントとなる

  1. サイト3つ
  2. 人物5人

を押さえればすんなり理解できる、ということです。

こうすればIT分野になじみのない人でもドキュメンタリーが見やすくなりますし、おのずから出来事の時系列も覚えていけると思います。

Qアノン形成に関わった3つのサイト―まとめと要点

そこで、まずは、Qアノン形成に関わったサイトがどのようなもので、それぞれ所有者・運営者は誰なのかを、時系列とともに整理していこうと思います。その過程で、冒頭で述べた日本との深い関わりも見えてくるはずです。

「2ちゃんねる」(現「5ちゃんねる」)

1999年、西村博之(ハンドルネーム「ひろゆき」)が開設した日本の匿名掲示板サイト。サーバーを国内ではなくアメリカに置くことで法令を回避し可能になった。管理運営者は、開設から2014年までは西村、以後はアメリカ人の実業家、ジム・ワトキンス。

5ちゃんねるのキャラクター
「5ちゃんねる」(2022年3月現在)。幅広さを謳う「2ちゃんねる」のキャッチフレーズを踏襲している。

同サイトの特徴は匿名性が高いことです。SNSのような会員登録が不要で、かつ一般的な掲示板と異なり、名前を入力しなくても書き込める仕様になっているのです。実際に、投稿の大多数は投稿者名未入力でなされています。

実質的には、問題が多発するアングラなサイトとして知られています。

Qアノンの起源の一つ、”Chan Culture”

同作第2話では、英語圏のユーモア投稿サイト「Something Awful」など、Qアノンの源流をなす投稿サイトや事件・出来事が列挙されているのですが、その一つとしてこの「2ちゃんねる」が登場します。

アメリカのトランプ支持をメインテーマとする陰謀論に、日本の掲示板サイトが一体どう関係しているのでしょうか?

まず一つには、運営者同士の密接な関係があります。それに関しては本作第2話で詳しく説明されているのですが、実は精神的な土壌としてもこのサイトは語るに外せません。「匿名掲示板」というサイト形式およびそのカルチャーは、「2ちゃんねる」を起源としているのです。アメリカでQアノンが社会問題として論じられるようになるにつれ、今日では”Chan Culture”と呼ばれるようになりました。こちらについては筆者から補足解説をしておきたいと思います。

「匿名掲示板」から生じた社会問題、そして独特な風土

同サイトの匿名性の高さは、深刻な弊害を生じさせました。

直接的な問題点としては、

  • 犯罪取引に利用された
  • ユーザーの攻撃性が高まり、誹謗中傷やネットいじめ、ヘイトスピーチの温床になった
  • 特定個人のプライバシー暴露が行われた

などが挙げられるのですが、実はもう一つ指摘すべきことがあります。独特な風土です。「匿名掲示板」というプラットフォーム上で、ユーザー間に「匿名で」「事実と全く関係なく突拍子もないことを言い放つ」かつ「それを面白がる」という独特な言動パターンが醸成されていったのです。

「事実と全く関係なく突拍子もないことを言い放つ」とは具体的にどういうことなのかというと、例として「トトロは実は死神である」というネット上のデマ騒動は参考になると思います。

参考リンク:『となりのトトロ』都市伝説~作品の「読み方」を考える

上記リンクで論じた通り、「トトロは死神である」という言説には根拠がなく、作品解釈としては宙に浮いていて無理があります。しかしデマはデマをよんで拡大し、一時は世界中でまことしやかに信じられました。パターンとしてQアノンの形成・拡大過程とよく重なることが分かるでしょう。

「トトロは実は死神だ」と言い放つことの一体どこが面白いのか、と思われたなら一理あります。ただここでのポイントは、現にそういう感じ方をする人が存在するようになった、というあるがままの現実です。「事実を無視して突拍子もないことを言い放ちたい」というのは、「2ちゃんねる」というサイトが作り出した新しい欲望だといえるでしょう。

トトロのデマ騒動は今日でも出所不明なのですが、少なくとも一連の騒動が”Chan Culture”的であることは確かです。”Chan Culture”とはこのようなものだ、という例としては最適と思われます。同様のことは、実在の人物に対して行われることもありました。それが人に甚大な被害を与えたのは言うまでもありません。

言論の自由の根本原理

「匿名掲示板」には、言論の自由の理論面でも致命的な問題があります。

言論は自己の名において行うのが原則であり、すべての言論には責任が伴います。筆名を使う分には構わないのですが、言論を行う者は実体があり、返答できる状態でなければならないのです。そうでない言論はあり得ず、もしあるなら言論として認められるに値しません。言論の自由は、無条件に「言いたいから言っていいじゃないか」というほど浅いものではないのです。

匿名投稿は言論の自由の前提を踏み倒していることから、社会的に問題視されてきました。

サイト同士の密接なつながり

こうした独特な風土が、以下に述べる英語圏の匿名掲示板との密接な関係を経て、突拍子もない説が日々量産されるQアノン陰謀論が生まれる土壌の一部となったのです。

Qアノンの起源に「2ちゃんねる」があることは、一般にはほとんど認知されていないと思います。しかしIT業界では、アメリカで暗いうねりが出始めた当初から、サイト同士の深いつながりがささやかれていました。「化け物を生んでしまった」などと嘆く声も聞かれていました。

”Chan Culture”は同陰謀論ムーブメントを検証するにあたって重要な要素なのですが、残念ながら、『Qアノンの正体』ではその開設者・西村へのインタビューはありません。西村が取材に応じなかったためと思われます。

「4chan」

「4chan(フォーチャン)」は2003年に開設された英語圏の匿名画像掲示板。Qの最初の投稿がなされたサイトです。実質的には、人種差別などヘイトが大量に投稿されるサイトとして知られています。

4chanロゴのスクリーンショット
「4chan」トップページのロゴ。

開設者は、当時15歳でユーモア投稿サイト「Something Awful」のユーザーだったクリストファー・プール。開設の動機は、アニメやテレビ番組について話せるサイトをアメリカにも作りたかったとしています。

技術的には「2ちゃんねる」から派生した日本の画像掲示板「ふたば☆ちゃんねる」のソースコードがもとになっています。プールは「非公式の姉妹サイト」だとしていました。

管理運営は開設以来プールが行っていましたが、彼は2015年1月に辞任します。理由は、同掲示板で行われた「ゲーマーゲート事件(ゲームに対して批判的な言論を行った女性運動家等に対する脅迫事件)」などの問題への対応負担やストレスとしています。

サイトは西村に売却され、以来西村が所有者兼管理運営者となっています。つまり、初めてQ名義投稿がなされた時点での運営者は、西村だということになります。

未熟、未整備だったインターネットで生まれたサイト

今日となっては信じられないかもしれませんが、SNSが登場する前のインターネットでは、中高校生を含む様々な人が遊びでサイトをやっているのはそう珍しいことではありませんでした。いまの人がSNSアカウントを始めるのと同じ感覚で自分のサイトを開いていた、という感じです。

技術的に複雑なサイトとはいえ、私の視点ではプールもそういった一人にあたります。彼と筆者は同い年。ネットで「匿名掲示板」なるものを見つけた15歳の彼に、海を隔てた日本社会の抱える根の深い病理は見えていなかったと思います。ビジネス的には、プロフェッショナルなビジョンなしに作ったものが、幸か不幸か世で人気になったケースといえるでしょう。問題が発生したときに対応が後手後手にまわりがちになるパターンです。

彼自身が15歳と格段若かったのもありますが、当時はインターネット自体がまだ新しい分野でした。未熟で整備されていない分、中高校生が遊びでやっているサイト、あるいは法的・社会的にグレーゾーンのサイトなども存在する余地があったのです。

今日の問題を理解する上では、インターネット黎明期の状況を把握することは重要であると私は考えています。

「8chan」(現「8kun」)

「8chan(エイトチャン)」は2013年に開設された英語圏の匿名掲示板で、「2ちゃんねる」の公式姉妹サイト。「4chan」よりさらに過激で、白人至上主義者などが多く集まることから、「インターネットの最も暗い場所」とも呼ばれています。

8kunトップページのスクリーンショット
「8kun」トップページ(2022年2月28日)。「Q Research」の投稿が他のトピックより圧倒的に多い。

開設者はアメリカ人のソフトウェア開発者、フレドリック・ブレンナン。運営者は、ブレンナンとワトキンス親子の共同運営を経て、2014年から2020年11月までロン・ワトキンス(ハンドルネーム「CodeMonkeyZ」)、以後はジム・ワトキンス。

「8chan」では、サイト内でユーザーが「ボード」と呼ばれる話し合いの場を立ち上げるというシステムがとられています。「ボード」を作ったユーザーには、その「ボード」について管理権限が与えられます。

「完全な言論の自由」というアメリカ的幻想

本作によれば、「8chan」の運営者は匿名性こそが究極の言論の自由と考えているということです。

これが言論の自由の考え方として荒唐無稽だということは、ここまで読んできた読者にはもうお分かりでしょう。

「8chan」運営者のワトキンス親子は、いわゆるオルタナ右翼思想の持主です。それなら、白人至上主義的なヘイトスピーチを「言論の自由」だと言いくるめようとするのも、良し悪しは別として、文脈としては分からなくありません。

私が頭を抱えたのは、「完全な言論の自由(total/unlimited free speech)」なる概念を、作者のホーバックや、ワトキンス親子と対立するブレンナンも使用していることでした。もっと常識的な普通のアメリカ人が、こんなことを疑いもせず口にしているのです。

はっきり言っておきたいのですが、「完全な言論の自由」なる言葉は俗語です。人権論にそのような概念はありません。言論の自由に限界があるのは、本式の人権論では当たり前の前提です。

なぜなら、至高の価値である人権と、別の人の人権がぶつかった場合には、調整する必要があるからです。宇宙空間に自分ただ一人だけでない限り、どんなことをしても自由だということはありません。自由に限界があるのは、自分と同じく尊厳ある他者が存在していることの帰結です。それは言論・表現とて変わりません。

さらに、言論の自由が高い価値を持つ根拠として重要なのは、それが民主政の発展に不可欠だからです。「言論の自由」だと主張しながら民主主義の価値を傷つけるとか、議事堂を襲撃するなどというのはいささか背理でしょう。

「自由」が俗流化しているアメリカの現実。

世界一の超大国のイメージによってかき消されているだけで、アメリカは自由に対する考え方が極めて独特な国です。「銃を所持する自由」なる概念が平気で闊歩するなど、自由は常にインフレ状態。自由と民主主義を国是とする割には、身分制の歴史がない分、いわゆるコミュニタリアンのように人権論では妙に楽観的です。他国では当たり前な国民皆保険を訴えたら社会主義者扱いされるなど、行き過ぎて折れ曲がった個人主義には世界から失笑が。「完全な言論の自由」というおかしな概念も、この延長線上にあるといえます。

アメリカ人が「自由」と呼んでいるものは、世界から見れば自由の本道から外れているんですよね。アメリカ人自身が早くそれに気付いたほうが身のためだと思った次第でした。

“Chan Culture”に関する私見

アメリカに建国以来の独特な風土があるなら、”Chan Culture”を生んだ日本にも困難な事情があります。

徳川一強・鎖国体制により、日本人は200年以上にわたって極端に閉鎖的な環境で生きてきました。それゆえ、人々の「社会性」が青白く萎えてしまった。徳川と鎖国体制はとうに崩壊しました。その後、大日本帝国体制の成立、そして崩壊という大きな変化を経て、今日では科学技術の面でも新しいデジタル時代に突入しています。しかし、では精神面はどうなのかといえば、日本人の社会性の「リハビリ」はまだまだ終わっていません。”Chan Culture”は、そうした病的な社会環境から生まれたカルチャーでした。

日本の複雑な歴史と社会環境を背景とする“Chan Culture”が、ネット空間でアメリカの独特さと出会い、混ざり合って化け物を生んでしまった――今回は手短になりますが、それが筆者の私見です。

登場人物5人のプロフィールと言動―まとめと要点

サイト3つと人物5人を押さえれば、Qアノンをまるごと理解できる――ここからは、「人物」を軸として事実関係を整理していきます。

要となる人物は次の5人。

  1. 西村博之:「2ちゃんねる」開設者で、Q初投稿時の「4chan」管理運営者
  2. フレドリック・ブレンナン:「8chan」開設者で、同サイトをワトキンス親子に売却後も管理運営に携わり、後に退職
  3. ジム・ワトキンス:「2ちゃんねる」管理運営に関与後、「8chan」所有者
  4. ロン・ワトキンス:2020年11月まで「8chan」管理運営者
  5. ポール・ファーバー:「8chan」内でQが最初に投稿した「ボード」を立ち上げたユーザー

この5人は全員、技術的な視点から、Q名義投稿と何らかの関わりがある人々です。

西村博之

1999年、日本の匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設。管理運営を行っていた。当初、資金難からジム・ワトキンスに援助を求め、以来協力関係にあったが、2014年に決裂。管理運営権はジムに移った(同年、別のドメインで別の「2ちゃんねる」を開設)。2015年には「4chan」を買い上げ、所有者兼管理運営者となる。


Qの最初の投稿が行われた時点では、「4chan」の運営者はこの人です。したがって、Q名義でなされた投稿に関してある程度の情報を持っていることになります。

ただ、西村はQアノンに関するメディアの取材には一切応じていません。本作でも直接のインタビューはなく、関係者として言及されているだけです。一般に、Q名義投稿が1ヶ月で「8chan」に移ったのは、「8chan」より管理の厳しい「4chan」から締め出されたからだとみられているのですが、具体的な内情については判明しないままとなっています。

なお、この人物は「2ちゃんねる」関連で提起された多数の民事裁判で敗訴し、損害賠償が確定しているのですが、いずれも未払いのままとなっています。「時効まで逃げれば支払わなくて済む」と、支払う意思がないことを明言しています。

フレドリック・ブレンナン

フレドリック(フレッド)・ブレンナンは、「8chan」の開設者で、ユダヤ系白人のアメリカ人。2013年に「8chan」を開設し、ワトキンス親子と共同運営の後、翌2014年に同サイトを彼らに売却。以後はジムの従業員の立場で2016年4月まで「8chan」管理に従事し、彼の他のサイトビジネスに関わっていたが、2018年に決裂して辞職。


この人はワトキンス親子から離れた後には「8chan」閉鎖を訴え続け、彼らと激しく対立しています。

その理由は、自らが立ち上げた「8chan」で起こったヘイトスピーチの氾濫や銃乱射事件などに幻滅し、責任を感じていることだとしています。近年はメディアの取材に積極的に応じ、元内部者として公的機関でも意見を述べています。

Qの正体について、ブレンナンは技術面およびかつてロン・ワトキンスが口にしていたことから「Qが誰か、確信している。ロンだ」と発言しています。

ネットでヘイトを浴びせられた少年の過剰適応

上記のプロフィールでは言及しませんでしたが、ブレンナンには身体障害があります。骨形成不全症という障害のため、手足や体が小さく、電動車いすで生活しているのです。彼が幼いころからインターネットに没入したのはそのためでした。

『Qアノンの正体』で最初の取材が行われた際、ブレンナンは12歳にして「4chan」で衝撃的な障害者ヘイトに出会ったと語ります。

それに対する当時の彼の反応は、「みんなの本音を見た」というもの。「違っていい」などというのは建前であって、これが本当なのだ、と受け止めたのだとか。

被差別属性というのは、デリケートで、見た目より難しいテーマです。ひどく虐げられた側の人が倒錯した反応を示すのは、悲しいかな、時折みられる人間の行動パターンの一つ。あの聞くに堪えない人種差別をがなるトランプに黒人の支持者が熱狂しているのでいぶかしく思ったことはないでしょうか? 自らの障害に悩むフレッド少年の反応も、差別の被害者が加害者に過剰適応するパターンだったように思われます。

「4chan」には「言論の自由」がある、というとらえ方は、彼が自身のサイトを立ち上げる動機となります。「4chan」の匿名仕様と、「Reddit」(英語圏の投稿サイト)の管理人の許可なく「ボード」を立ち上げられる仕様を組み合わせた「8chan」。当時、彼はまだ19歳でした。

こうしたいきさつゆえ、スパッと指摘するのは酷なようで気が引けるのですが、彼が口にする「言論の自由」はガタガタです。自由への理解も何もなく、ネット上でヘイトを浴びせられ、ズタズタになった十代の少年が心理的反応としてこぼした言葉にすぎない。矛盾だらけで、空虚に響きます。

自由の名のもとで起こっている現実を見ると考えがゆらぐ、言論の自由の崇高な思想と違う――彼にそんな心境の変化が訪れたのは、2016年に「8chan」管理業務から離れたころだったようです。

私は上記「4chan」と同じく、「8chan」についても、開設者の若さおよび当時のインターネットの未熟さが根底にあることを指摘したいと思います。

パートナー・ワトキンス親子との緊張関係

「8chan」にアクセス・利用が殺到したことについて、本人は「たまたまだ」と話しています。当時、ブレンナンは19歳。社会にはまだうとく、激務となったサイト管理はやりきれず。そこで彼は管理運営にパートナーを募り、大量に送られてきたメールの中から経験豊富なワトキンス親子を選びます。

しかしその後のパートナーシップはお世辞にも良好とはいえません。ワトキンス親子はサイトを買い上げて所有者となり、ブレンナンのことは管理を行う従業員として雇った。しかも、ジムはブレンナンをフィリピンに呼び寄せ、高級マンションを与え、生活を負担します。

はっきり言えば、丸め込まれたんですよね。まだ二十歳になるかどうかの若者が、あれよあれよという間に自分のサイトの所有権を失った。しかも、至れり尽くせりの生活を与えられることで鎖につながれた。

本作第2話の時点では、ブレンナンはジムのことは悪く言わず、こじらせたくないと慎重な態度をとっています。一方では「8chan」への幻滅や、立場との葛藤も語っています。

決裂、そして怒涛の告発

ホーバックが再取材をした時点では、ブレンナンはもうワトキンス親子の下で働いていませんでした。決裂したのです。

この時のインタビューが収録されているのは本作第3話です。辞めるきっかけとなったのは、ジム・ワトキンスとの人間関係トラブル。マンションがジム名義だからといって無断で部屋に押し入られた、怒鳴られたなどがあり、「ここを出よう」と決めたといいます。

ブレンナンの怒涛の告発はここから始まります。「前回取材の時点ではリスクを避けたかったのでジムを守った」という告白を皮切りに、ワトキンス親子の会社や人間性、言動を暴露していきます。

  • 前回取材で「Qが『8chan管理人にお礼をしたい』と投稿した後、自宅に青いQの字の置物が送られてきた」と答えたのは、ロンとの作り話だった
  • ジムが政治に関心がないと言っているのは嘘である。おそらくトランプ側近とも関係している
  • ロンがQアノンを呼び込みたいと連絡してきたことがあり、その時ロンはQと連絡をとっているとほのめかした。だから「8chan」の関係者はQと密に関わっている
  • ロンはQによってサイトへのアクセスを稼ぐことができ、今後の成長もかかっていると知っていた

Qアノン陰謀論の騒動を検証するには、やはり元従業員であるブレンナンの証言が最も重要ですね。また、第3話以降では、彼のインターネット観や社会的責任、言論の自由に関する考え方に変化がみられるところも興味深いです。

「8chan」改称の背景にあった「和平交渉」と、もたらされた結果

2019年には「8chan」が「8kun」に改称するという出来事があるのですが、これはただのサイトリニューアルではありません。背景にあったのは、ブレンナンとワトキンス親子の激しい対立。その様子は『Qアノンの正体』で撮影され、第5話に収録されています。

当時、ブレンナンは取材に訪れたホーバックだけでなく、テレビのインタビューに応じたり、自らネットで発信したりして「8chan」の閉鎖を訴えていました。

そのころ、ワトキンスも社会からの批判に手を焼いていました。ニュージーランドのモスク襲撃など3件の銃乱射事件で犯行声明が「8chan」で行われたため、サイト運営者の責任を問う声が高まっていたのです。

そこで両者は「和平交渉」へ。ブレンナンの「8chanを終わらせるか、関係するドメインを一切使わないでほしい」という要求でまとまります。ブレンナンは新サイトがどんな名前でも自分には無関係だと話し、ワトキンス側で交渉に現れたトム・ライデル(20年来のジムの従業員)は、ブレンナンの攻撃が終わるなら問題は片付いたと考えます。

ところが、ブレンナンは「和平交渉」の会話を録音しており、自身のTwitterに次々アップ。ワトキンスの新サイトの出足をくじこうとします。

改称した「8kun」は、それまでの問題から運営するためのサーバーが見つからず、ドメインの登録もできません。サイトはダウン。ロシアのサーバーと契約にこぎつけ、何とか復活はするものの、サイトの大半はQアノン関係になります。

つまりこれをきっかけに、「8kun」サイト運営の行方は、Qアノンの盛り上がりに依存するようになったのです。サイト改称という出来事は新聞などではあまりピックアップされていないのですが、ここを境に生じたサイトとQの利害関係はしっかり押さえるべきだと思いました。

ジム・ワトキンスからの反撃、フィリピン脱出

和平は破れ、対立は激化。

ここでジム・ワトキンスは反撃に出ます。ブレンナンがネットに「もうろくじじい」などと書いたのに目をつけ、フィリピン法にあるサイバー名誉毀損罪で刑事告訴するのです。批判のつもりで中傷に踏み込み、あげ足をとられてしまった形なんですよね。

打ちのめされたブレンナンは、弁護士のアドバイスでホーバックらと国外脱出。まるでスリリングな映画のようにアメリカへ帰国します。

戦いは続く~現在

帰国後、ブレンナンは国際ハッカー集団「アノニマス」の創始者、オーブリー・コトルと手を組むなどしてQアノンへの反対運動を展開します。

彼は現在も、「8kun」閉鎖の訴えとワトキンス親子への批判を続けています。(Twitter@fr_brennnan

国際ハッカー集団「アノニマス」創始者への直接取材

興味深いことに、同作では、コトルもホーバックのインタビューに応じています。「アノニマス」は同じ「4chan」をルーツとする集団なので、自分たちの活動方法が「ゲーマーゲート事件」、続いてQアノンにつながったことに責任を感じている、とのこと。Qアノンとの全面対立を宣言しています。

「アノニマス」の直接行動主義的な思想が断片的ですが直に確認できるので、同作はこの点でも貴重ではないでしょうか。

ジム・ワトキンス

アメリカの元軍人で、フィリピンを拠点にインターネット関連、レストランや養豚場などを営む実業家。ワトキンス親子の父親。ネットビジネスでは、サーバーをアメリカに置くことで日本のわいせつ規制を回避したポルノサイト「Asian Bikini Bar」で初めて利益を出す。長年「2ちゃんねる」の管理運営に関与し、西村がサーバー代を支払わなかったとして日本で提訴、2014年から管理運営者となる。「8chan」所有者で、2019年8月には、同サイトが3度の銃乱射事件で犯行声明等に利用されたとして米下院公聴会に召喚される。2020年11月に息子・ロンが同管理人を辞した後はジムが後継。


ブレンナンは、父親のほうは技術面はさっぱりだがビジネス肌だと評しています。

思想的には極右で、白人至上主義的な発言をたびたび行っています。トランプ支持の集会にも参加しており、同支持者・Q信奉者らにはよく知られた存在となっています。また、軍にいた経験から、秘密を守ることには訓練されているといわれています。

破綻した言動

全6話を追っていけば、この人の言動には多くの矛盾が見つかります。しかもそれは、こちらが頭でよくよく整理しないとピックアップできないような細かい矛盾ではなく、あからさまな破綻なんですよね。視聴者が気づかないことはまずありません。

「政治には関心がない」という主張と矛盾

最初のインタビューで、ジムは政治には関心がなく、アメリカから離れているので詳しくないと繰り返し述べています。「8chan」は利用していないとか。

しかし、彼の言動には矛盾があります。第3話でブレンナンは「ジムは政治が大好きだ」と証言しており、本人はトランプ支持の集会に堂々と参加しています。

実のところ、「8chan」の運営は赤字続きで、第2話のインタビューではジム本人が運営費を養豚場の利益からまわしていると言っています。つまり、ビジネスとしては重荷だった。しかも第6話、2020年ごろには彼は破産寸前となっており、養豚場も手放しています。

にもかかわらずジムが「8chan」にこだわる理由は、政治的投稿以外には考えられません。

「言論の自由」の使い方

私が『Qアノンの正体』で指折りに鋭い質問だったと思っているのが、ジム・ワトキンスがブレンナンを名誉毀損で刑事告訴した際の「自由な言論を許すサイトを運営しているのに名誉毀損で訴えるのは皮肉では?」(第5話収録)です。

それに対するジムの答えは「言論の自由は許される。でも法を犯して責任を免れることは許されない」。

だったら「8chan」に山ほど投稿された名誉毀損も許されないことになるはずです。

これはブレンナンも指摘しているのですが、ジムが乱発する「言論の自由」は自分を守るための口実なんですよね。自分は他人を攻撃したい。でも自分がやられたら法に訴える。言論の自由の解釈が実に都合よく、強い自己中心性がみられます。

本作はQアノン形成に深い関わりのある人物への直接インタビューを直に見られる点で貴重だと言いましたが、私が全6話を通して見たところでは、ジム・ワトキンスという人は自分の言動に一貫性がないことが平気なんだなという印象でした。その時々で自分をごり押しできればいい、という感じでしょうか。言動は破綻しているのですが、それを取り繕おうとしないのです。私はこういう人は直接の知り合い、メディア上の双方含めて見たことがなく、性格の面で特殊性を感じました。

マフィアのような秘密主義と上下関係

そんなジム・ワトキンスについて、ブレンナンが第3話で「閉鎖的で、マフィアのようだ」と話していたのは印象的でした。

取材を追っていくと、ジムに関わった人がなぜか黙ってしまう場面にたびたび遭遇します。

たとえば作者に情報を提供したコートニー・タブス(ハンドルネーム「Red Pill」)。この人はワトキンス親子のニュースサイト「ゴールドウォーター」で働いていたものの、経営不振によって解雇された元従業員です。作者ホーバックに「『ゴールドウォーター』はトランプの側近・ストーンから資金提供を受けていた」「ジムとロンはホーバックが来る前に口裏を合わせている」など重要な情報を提供するのですが、そのことについてホーバックがワトキンス親子にインタビューした後、パタッと返事が途絶えるのです。その前、タブスは脅迫を受けているとネットに書いていました。

また、フィリピンでは、ブレンナンの弁護士がなぜか当日法廷に来ない、ということも起こります。裏で何があったのか、不気味でした。

秘密主義的で、組織内部には絶対逆らえない上下関係が敷かれている。Qアノン陰謀論生誕の地は「マフィアのよう」な世界なのだということは、世に広く伝える価値があるのではないでしょうか。

ロン・ワトキンス

父親は白人、母親はアジア系のアメリカ人で、ワトキンス親子の息子。ハンドルネーム「CodeMonkeyZ」。西村とは10代のころから知り合いだと話しており、「2ちゃんねる」の管理運営に関与。2015年ごろから2021年秋まで札幌に居住。本人は「通訳者として広告会社の職を得た」と説明しているが、その会社は「2ちゃんねる」の関連会社。現在も札幌に住居がある。2014年~2020年11月まで、Qが投稿先とした「8chan」の管理運営者。2022年の米下院議員選挙にアリゾナ州から立候補。(アリゾナ州内の共和党候補選において7人中最下位となり、敗退。※2022年11月11日追記。)


「Q」が唯一の投稿先だと宣言した「8chan」の管理運営者。ロン・ワトキンスはQアノンと最も深い関わりのある人物だといえます。

ロン本人はQであることを否定し、その素性も分からないと言い張っています。

しかし、すでに指摘した技術的な観点から、彼とQ名義投稿者に何の関係もないということはあり得ません。そのため、本作に限らずメディアからの取材は彼に集中し、「Qではないか」と名指しされてきました。

それはほぼ確定であって、あとは裏付け証拠をあげるだけ、と言って過言でないでしょう。

サイト運営とは別に、ロンは熱狂的なトランプ支持者でもあります。TwitterやTelegramなどSNSではインフルエンサーとして活動し、Twitterアカウント(現在は凍結)には50万以上のフォロワーがいました。信奉者が集まるイベントで登壇するなど、ロン・ワトキンスは信奉者の間ではアイコン的人物の一人となっています。

なぜ「Q」だけ「8kun」に投稿できたのか

秘密主義的で、「Q」との関係をかたくなに否定。この人には、インタビューでの質問を引用ではぐらかしたり、別の人に疑いの目を向けようとする態度が目立ちます。

ただ、ロン・ワトキンスは数々の言動でボロを出しています。周到とはいえません。『Qアノンの正体』ではロンへのインタビューの様子を映像で確認できますが、言葉につまったりと、苦しい受け応えが多くみられます。

なかでも大きなボロを出したのは、「8chan」が「8kun」に改称した時でしょう。その直後は、技術的な問題により、誰も投稿できない状態になっていました。

しかし、その状況下で「Q」だけは投稿を行っています。

私が解説に入る前の段階で「サイトでは管理人の力は絶対だ」と指摘したのはこのためです。一般ユーザーが投稿できない時に、唯一できるとしたら管理人しかいないのです。

社会においては、確定的な証拠はなくても、周辺証拠を重ねればそうだと判断され得ます。「8kun」がスタートしてすぐ、他のユーザーが投稿できないのにQ名義投稿がなされた時点で、「Q」がロン・ワトキンスである蓋然性は十分に高まったと考えます。

なぜ取材を受けたのか~心理と人物像

ブレンナンはロンの人間性について、「本心では名声を求め、賢い奴だと思われたがっている」と話しています。

なら、彼は世間で「きっとこの人がQなんだ」とささやかれたがっているのか、という気もしてきます。ホーバックの取材を受けたのも、これだけ世界を荒らした混乱の「黒幕」ができる人だと世間からちやほやされ、口では否定しながら内心でほくそ笑んでいたかったからなのか……と推測できなくもありません。

ただ、胸のどこかにはそんな思いがあるにせよ、隠したがっているのはこれはこれで事実なんですよね。たとえば第4話では、ホーバックがカメラを切ったふりをして会話を録音しているのですが、そこでは必死でホーバックの疑いをバノン(トランプ政権の元主席戦略官)に向けさせようとしている。

もし「この緑のキャップをかぶった人がQだ」と確定すれば、信奉者には幻滅する人が大勢出てくるでしょう。たいてい、「Qは米政府の機密情報にアクセスできる」という陰謀論の根本がミステリー小説からとってきたような作り話なのですから、そこを追及されたらすべてが崩壊です。仮面を守る必要性はれっきとしてあり、そのためにはどこかしらの取材に応じて自分がQであることを否定すべきだという事情はあったと思います。

なぜ選挙に立候補したのか

私が驚いたのは、ロン・ワトキンスが米下院議員に立候補したと知った時でした。正気か、と。

議員というのは、「匿名掲示板」を運営しようかという人からは最もかけ離れた職業です。すべての発言は自己の名で行い、過去や財産まで追及されますし、特にアメリカでは「政治家にプライバシーはない」というのが共通認識。もしロン・ワトキンスが内心で賢いと思われたがっているなら、選挙への立候補は大きな失敗で、社会をまるで理解していないことを露呈してしまいました。

2018年8月にQのトリップがハッキングされ、何者かがQを「若く未熟(untrained)なアメリカ人だと思う」と痛烈に批判するのですが(第3話収録)、ロンにその感は確かにあると思います。

一貫して「ゲーム」のつもりで面白がっているというわけではなく、だからといって隠し通すには粗がある。ロン・ワトキンスの人物像は、私の目には思想性に浅く、その場その場の思い付きで動いているように映りました。

ポール・ファーバー

南アフリカ在住。「8chan」内でQの投稿先となる「ボード」を立ち上げたユーザー。熱狂的なトランプ支持者で、信奉者の番組「インフォウォーズ」などに出演。2018年1月、Qの投稿は同じく熱狂的支持者であるロジャースの「ボード」に移っていった。


メディアの取材ではQであることを否定しているのですが、ファーバーもQではないかと言われてきた人物です。

「Q」が「8chan」内で移動した背景

「Q」は偽者騒動の後、「8chan」内の別の「ボード」に移動。この内幕について、『Qアノンの正体』ではファーバーが証言する様子を見ることができます。

ファーバーの主張によれば、ボード管理人として「Q」のIPアドレスが変わったことに気づいたため、その偽者をブロックした、とのこと。

その後、「8chan」上では、「Q」が自分が本物だと確認するよう管理人であるロンに依頼し、ロンが「その投稿者がQである」と承認する投稿をします。これにて偽者騒動は決着しました。

ファーバーは「コードモンキー(=ロン・ワトキンス=「8chan」管理人)の助けがなければ偽のQは逃げられなかった」と話しています。

こうした事実関係はファーバーが語ったことなので、そのまま採用するのではなく、ワンクッションは置かなければなりません。ただ、Q名義投稿者を特定する上で重要な情報にはなってきます。

トランプ陣営にとってのQアノンの利用価値

以上、Qアノン形成に関わったサイト3つと関係者5人を整理する形で解説してきましたが、いかがだったでしょうか? 事実関係の要点はほぼ網羅できたと思うので、理解に役立てば幸いです。

さて、Qアノン陰謀論というのは、要するにトランプ支持を中核としているわけですが、では当のトランプ陣営はそれとどう付き合ってきたのでしょうか? 癒着はあったのか。ここからは同ドキュメンタリーを主な参照元に、トランプ政権との関係を時系列で整理していこうと思います。

利用価値の発生と増大

初期のQアノンは、「8chan」ユーザーという限られた範囲での動きにすぎませんでした。共和党の政治家にとっては煙たい存在であり、党として距離をとっていました。

それがトランプ政権にとって重要なファクターなるのは、2019年あたりからです。SNSを通じて信奉者が爆発的に増加し、影響力が増大したことで、Qアノンは共和党の顔にまでのし上がっていました。

そして2019年末には、トランプ大統領(当時)が弾劾訴追されます。この時、トランプはQ関係を大量にリツイートして国民の目をそらそうとします。この弾劾訴追のころからトランプ政権はQアノンを必要とするようになり、政府関係者や支持者はロン・ワトキンスやQチューバーらに接近していきます。

新型コロナでの混乱と接近

この後、誰にも予測できなかった事態が生じます。新型コロナのパンデミックと、それにともなう人々の混乱です。

ロンもパニックに陥った一人で、Twitterでは事もあろうにホーバックにダイレクトメッセージを送りつけたり、公では武漢の生物兵器説をしきりと投稿。この時は、ロンに続いて「Q」が同内容を投稿し、さらにトランプ大統領も同意見を口にします。ところがここで、ロンはコロナ関係のツイートを全削除。ブレンナンは、「ロンはQとして発言していた。度が過ぎて仮面がはがれそうになり、怖くなってTwitterでの発言を撤回した」という見方を示しています。上記でロンの言動は周到ではないと言いましたが、ここでも再度バタついてボロを出した印象です。

やがて、トランプ大統領はQを承認。このころからQとトランプは互いをまねるようになります。

トランプ政権との関係が最高潮だったのはこの時期といえるでしょう。

足手まといへの変貌

しかし、トランプ政権にとっての利用価値はそう長くはもちませんでした。こうなれば記者会見でメディアから「Qアノンを否定しますか」「『悪魔崇拝の小児性愛者から世界を救うのはあなただ』という話がありますが、そのような考えを持っていますか」など、トランプ自身がついに直接的な質問をされるようになるのです。

これはトランプにとっては苦しいんですよね。「はい、私は自分のことを救世主だと考えています」などと肯定するわけにはいかない。だからといって否定すれば支持者を失う。

トランプはメディアの質問に「私を応援してくれていることだけは知っているが、詳しくは知らない」と手短に答えるのですが、すごすご逃げようとする姿には苦しさがにじみ出ています。

トランプ政権はQを再選に向けた支持集めに利用しましたが、だからといって使い続けられるものでもなかった。Qアノンは足手まといに変貌したので、この先はロン・ワトキンスとの関係も変えざるを得なくなったといえるでしょう。

示唆に富む、信奉者の「Q離れ」

Qがトランプ政権にとって足手まといに変貌しつつあったころ、ホーバックのカメラが信奉者たちの変化をとらえているのは興味深いです。

Twitter社がQアノン排除に踏み切ったのをきっかけに、信奉者らは凍結逃れの口実を必要とするようになります。そこで白羽の矢が立ったのが、縁もゆかりもないハッシュタグ「#SaveTheChildren」。NGOのハッシュタグで、これをつけて投稿すれば削除や凍結対象にひっかからないというわけです。これがQアノンの新たなアイデンティティとなり(本物のSave The Childrenにとっては迷惑千万ですが)、本ドキュメンタリーでは、集会であからさまに「”ニューアノン”だ」と話す信奉者も映されています。

恍惚として涙を流す信奉者に、「アメリカ政府の機密にアクセスできる謎の人物・Q」の存在はもういらない。Qアノンに「Q離れ」が生じたといえるでしょう。

むき出しになった本質。はっきり言えば、Qを信じた人たちは何だってよかったわけです。人に暴言を吐き、集会で興奮の渦に身を委ね、自分が世の役に立っていると感じられ、世界が変わるという希望を持てれば、Qアノン陰謀論の中身が何か、それが事実かどうかなんてどうだっていい。

信奉者側だけではありません。Q名義投稿者が求心力を失い、自らの生み出したムーブメントがコントロール不能に陥った、という点も注目に値するでしょう。

「Q離れ」は、陰謀論の研究や、ネット上のそれ特有な点を洗い出していく上で示唆に富むと思います。

不正集計を主張するため再び接近

こうして一時は距離感に苦戦していたトランプ陣営ですが、今度は別の形をとって再接近します。大統領選でバイデン勝利となった後、ロン・ワトキンスが実名で「テクニカルアナリスト」として票集計ソフトへの疑問をあおるのです。つまりここではQ関係としてではありません。同時に、これがトランプ陣営とワトキンスが表立って癒着した瞬間でもあります。

この時の背景には、ワトキンス親子のサイト運営状況があります。

「8kun」はQに依存しており、しかもユーザーが95%減となるなど経営面で追い詰められていました。したがって、トランプが負けることは、ワトキンス親子にとってQの終わり、会社の終わりを意味していたのです。インタビューでは、ジム・ワトキンス自身がその切迫感を述べています。

そしてもう一点、大統領選では、トランプ・バイデン両陣営とも、それまで投稿サイト運営者に責任を課していなかった通信品位法230条改正の意向を示していました。ロン・ワトキンスが「8kun」管理人を辞した理由はこれだと、こちらもロン本人がはっきりと述べています。

世界中を混乱させた陰謀論ムーブメントですが、視点を政治の舞台から「サイト運営」というバックグラウンドにずらせば、違った景色が見えてきます。「8chan/kun」には、Qが金になるというビジネス上の都合が根差していました。現実にトランプ敗北となった時には、政治的主張よりそちらが前面に出た印象です。

「8kun」運営者、トランプ陣営の双方がQを必要としたものの、だからといってQを維持することもできずに立ち消えた――それが実情のように思いました。

作者・ホーバックの心理戦と下した結論

数年にわたる取材を経て、ホーバックは全6話6時間の最後に結論を出しています。作者の見解は「Qの正体はロン・ワトキンスである」です。

決定的な瞬間が訪れるのは、ホーバックとロンのSkypeでの会話です。ここまでもずっと、ロンは威圧的というわけではなく、二人は普通にしゃべっているのですが、水面下では緊張感が張りつめていました。ホーバックは、相手に強い疑いを抱いている。他方のロンですが、こちらもシッポを出すのを待たれていることは承知です。サイト運営者として何も知らないはずがないと思われていることを認識した上で、隠している。

ホーバックは、Qの正体は本人が名乗り出ない限りは断定は難しいから動機を洗い出しているとし、「あなたには動機がありますよね」と切り出します。

ここでついに、ロンが決定的なボロを出します。「(大手メディアをつぶす、大衆を目覚めさせるといったこと)なら今Twitterでやっている。10年以上前から匿名でそういうリサーチは続けていて、今は堂々とやっている」。

「自分は堂々とやっているからQではない」と言いたかったのでしょうが、口を滑らせた余計な箇所が命取りでした。

極めつけは、会話最後の部分です。ロン曰く、「3年くらい前から諜報技術をトレーニングしてきて、普通の人たち(原文:normies、オルタナ右翼でしばしば使われる用語)に教えてきた。基本的には匿名でやってきたけど、Qとしてではないよ」。

一瞬の間。次の瞬間には双方とも吹き出し、腹を抱えて笑い出してしまいます。

ロンは「Qとしてじゃなくね、Qじゃない、違うよ」と取り繕おうとしますが、後の祭りでしょう。

この場面は新聞やネットメディア等も取り上げているのですが、文章メディアでは表情やしぐさなどは見られません。会話の前後関係や文脈も省かれてしまうので、どういうことなのか、何とも分かりにくい説明になっていることが多いです。なので、気になる方は、インタビュー映像そのものをご自身の目で視聴するのをおすすめします。

一つ嘘をつけば、十の嘘をつかなければならなくなる。前の嘘を支えるため、ネズミ算式に増えていく。いつかは必ず無理が出る。長い茶番劇の崩壊でした。

ロンの発言やしぐさは、「Q」であることを直接証明するものではありません。しかし、証拠というのは高い蓋然性を認定できれば十分なのであり、以上の会話はそれを満たすと考えられます。

研究チームによるAI分析で正体はほぼ確定

こうしてホーバックはロン・ワトキンスがQであると結論付けましたが、後にロンの関与を裏付ける研究結果が出ます。

2022年、スイスとフランス2つの科学者チームは、ソフトウェアやAI(人工知能)を使ってQの投稿の文字列や文章の書き方などを分析し、結果を発表しました。

調査結果は、ファーバーがQ名義投稿を始め、「8chan」に移ってからはファーバーとロン・ワトキンスの両方になり、別の「ボード」に移ってからはロン・ワトキンスのみだとしました。2チームは別々に調査して同じ結論にたどり着き、結果の正確性は92%以上だとしています。

以上をまとめれば、

  1. 最初はファーバーのアイデアで、「4chan」で謎めいた投稿を始めた
  2. ファーバーが「8chan」に移動したところ、サイト管理運営者のロン・ワトキンスが便乗し、Q名義で投稿をするようになった
  3. ファーバーとロン・ワトキンスが手を組んで二人体制でやっていくことにはならず(原因は不明)、ファーバーがロンを閉め出す
  4. ロン・ワトキンスが「8chan」内の別のボードに移動し、サイト管理運営者の立場を利用して、自分のQ名義投稿が本物だと一人芝居を打つ
  5. 以後はロンが「Q」になり替わる

ということになるでしょう。

「謎の人物Q」と言いながら、最初からその候補はしぼられていた一連の騒動。これにて「Qの正体」は決着と言ってよいのではないでしょうか。

新型のカルトとしてのQアノン陰謀論

本稿では、Qアノンの「新型のカルト」としての側面に焦点を当てたいと思います。他の論点については末尾の関連記事をご覧ください。

さて、「カルト」というと、一般にはオウム真理教のような宗教団体を思い浮かべる人が多いようです。

しかし、宗教以外でもカルト的な集団はいろいろあります。言い換えれば、カルトというのは宗教を指すのではなく、カルト宗教のように破壊的な集団のことをいうのです。

Qアノン陰謀論には、教団のような組織はありません。著名な信奉者がまばらにいるだけで、特定の指導者が主導しているわけでもありません。

しかし、信奉者の言動や心理に目を向ければ、それらはカルトの主要な特徴と共通していることが見えてきます。Qアノンはインターネットという新たな社会インフラで生じた「新型のカルト」と言うことができ、私は検証する上でそのアングルが不可欠だと考えています。

以下では、信奉者の言動とカルトの特徴との共通点および類似点を指摘していきます。人の心をがんじがらめにし、時に社会のルールを無視した凶行に向かわせるカルトの性質を知ること、および対処方を学ぶことが、Qアノン問題を解決する一助になっていけばと思います。

以下の記事でも解説しているので、併せてご覧ください。

参考リンク:カルト宗教の勧誘に注意―大学で本当にあった3つの話とその検証

最初は一般的な話題をよそおう

最初の共通点は「入口」です。

カルト宗教はたいてい、最初は宗教であることを隠します。普通のコーラスサークルや就職セミナーなどをよそおって人を誘い込み、かなりはまり込んだ段階になって初めて「ここは〇〇という宗教だ」と明かすのです。

Qアノンには教団はなく、したがって組織的な勧誘はありません。しかし、「最初は普通」という状況自体はカルト宗教と共通しています。

たとえば、その代表的な主張にはしばしば「児童への性的虐待に反対する」旨が出てきますが、児童への性的虐待自体は、Qアノン信奉者でない一般の人も扱うテーマです。撲滅のため国際的な取り組みが行われており、新聞などでもしばしば取り上げられ、かく言う私も論じることがあります。

報道の公平性。芸能人のスキャンダル。……どれも万人が日常的に触れているテーマです。

深入りすればとんでもない話になっていくQアノンも、最初はまっとうでもっともらしいのです。それが大勢の人――高度な知識を持つ人も含まれる――が引き寄せられる原因の一つとなっています。

外部の人には何を言っているのか分からない

カルトの特徴の一つに、「内部でしか通じない特殊な用語が使われる」というのがあります。オウム真理教で使われた用語「ポアする(=魂を高い次元に送るという意味で、後に殺害するの意で使われるようになった)」はその典型でした。

そこをいくと、Qアノン信奉者は内部でしか通じない用語を多数作っています。一部を紹介すれば、

  • パンくず→「Qの投稿」の意
  • 17→Qを連想
  • フクロウ→「悪魔のモロク」の意
  • ピザ→「女の子」の意

これでは、外部の人には彼らが何を話しているのか分かりません。入口こそ普通で、誰の目にも留まるQアノンですが、分け入ればしだいにカルト的世界になっていくといえます。

外部には通じない「2ちゃんねる」の会話と陰謀論

外部の人には何を言っているのか分からない会話は、そのルーツの一つである「2ちゃんねる」の時点からみられていました。

「事実と関係なく突拍子もないことを言い放つ」かつ「それを面白がる」という行動パターンはすでに述べた通りなのですが、「2ちゃんねる」はスラングも盛んでした。同サイト上で生まれた特殊な語は一説には3000にのぼるといわれ、その多くは外部者には何を言っているのか見当がつなかいようなものでした。

筆者は「2ちゃんねる」ユーザーではありませんでしたが、IT分野のトピックとして外部者視点での知識はある程度持っています。同サイト上のスラングは、仲間意識から文の途中に少し挟んで楽しむといった生ぬるいものではありません。それを使えない人は、そこでの人間関係に入っていくことができないのです。誰でも投稿できるはずの掲示板ですが、スラングによって閉鎖性が生み出されていたといえるでしょう。また「空気嫁(=読めの意)」という語がよく表すように、周囲への同調や雰囲気を壊さないことが強く求められるなど、カルチャーとしては古臭い世界でした。

カルトや陰謀論との関係で特に問題となってくるのは、次のような特殊な会話パターンです。ある書き込みに対して、それは違うなどと指摘がなされると、元の書き込みをしたユーザーが「自分が正しいと証明された」と主張するのです。

具体的に言うと、たとえば誰かが面白がって「トトロは実は死神なんだ!」と突拍子もない書き込みをしたとします。これに「根拠がありませんよね」「作品解釈に無理があるのでは」と返信が付いたら、元の投稿者が「これでトトロは死神だと証明された!」と言い出すのです。

……これでは、彼らが何を話しているものやら、一般の人には意味が分かりません。そのため、「2ちゃんねる」が全盛だった時代には、内部に通じた人がネットで解説を発信していることがありました。そのうち筆者が読んだものによると、この会話パターンでは、まず「裏に何者かがいて、不都合な情報を操作しようとしている」という仮定というか、思い込みのようなものが前提となっています。これに基づき、投稿者は「その何者かは自分の書き込みを見て、否定しなければならないと考えた→それは自分の言ったことが真実だったからだ」と結論する、というのです。

無論、このパターンは論理的思考として誤っており、意思疎通としても成り立っていません。第一に、「裏に何者かがいる」という思い込みが妄想にすぎないからです。他のユーザーが否定的な返信をしたのは、本当に書き込み内容が事実でないからかもしれないし、言葉通りの指摘をする意図だったかもしれません。にもかかわらずそうした他の可能性は無視され、コミュニケーションの過程をとばし、自己正当化を重ねていくのです。結論は最初の思い込みで固まっている。端的に言うなら、妄想の中で話を完結させている、といった感じでしょう。

Qアノンのルーツの一つ、「2ちゃんねる」。その時点ですでにカルト的な閉鎖性があり、また陰謀論めいていることが分かります。その後、2010年代になると、同サイトは新興のSNSに取って代わられ、人気を失っていきました。しかし、それが生んだカルチャーはいまもネットの世界に残存しています。

「世間の情報は間違っていて、ここで言われていることだけが真実だ」

入口はまだ分かるとしても、Qアノン諸説の荒唐無稽ぶりからすれば、なぜ途中でおかしいと気づいて引き返さなかったのか、と思われたかもしれません。

この段階においては、カルトの構造や心理が顕著にみられます。「世間で言われていることは全て間違っており、教団の言うことだけが本当である」と信じ込むことで、信者が一般社会から切り離されていくのです。

具体的には、Qアノンでは、「メディアは『闇の政府』に操られている」とされていますよね。一般社会に出回っている情報はすべて偽物だ、と。ここから、「Qだけが本当なのだ」という思考回路に追い込まれていってしまうのです。

信奉者はしばしば「昔は何も知らないで生きていたけれど、Qに出会って目が覚めたのです」などと口にします。本人は高揚感や力のみなぎりを感じられるのですが、客観的には、カルト心理と情報統制同様の環境がもたらした感覚にすぎません。

もとはごく普通だった人でも、ひとたびカルト心理が働き始めれば、自力でおかしいと気付くことができなくなっていきます。気付こうにも、自分のアタマが変わってしまっているからです。

マインドコントロールとは?

カルトに関連して「マインドコントロール」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。

マインドコントロールとは、正確に言えば、自分本来の見方、考え方や価値観、善悪の基準が、教団のそれに置き換わり、教団の思考回路でしか物事を考えられなくなる状態のことをいいます。

『Qアノンの正体』第1話で、ホーバックが「入り込むと、物事を見るレンズが変わる」と言った時、私は「これはいきなり核心を突いてきたな」と思わずうなずきました。本作ではそのような見方は示されていないのですが、これはマインドコントロール状態そのものだと私はぜひ指摘したいと思います。信奉者たちの言動では、「Qアノンの思考回路でしか物事を考えられない状態」が顕著なのです。

エプスタイン逮捕に対する信奉者の反応は、その特に深刻な事例だと思います。理にかなった普通の考え方をすれば、トランプと近い人物が性的人身取引で逮捕されたとなれば、トランプが児童買春組織と秘密の戦争をくり広げているという従来の主張は崩れたも同然ですよね。しかし、この時信奉者はこともあろうに「Qの主張が証明された」と受け止めます。トランプとエプスタインの深い関係は無視、あるいは否定して、「これが一斉逮捕の始まりだ」と解釈するのです。

何もかもをQと結びつけてしまう。この世の全てを「だからQアノンは正しいのだ」という結論の根拠にしてしまう。

Qアノンの主張は、自己を正当化するための曲解ばかりです。なので読者が信奉者を「物事を自分にとって都合いいように解釈する自己中心的な人」というふうに受け止めたとしたら、それは当然といえば当然だと思います。

ただ少し視点をずらせば、性格の問題というよりは、カルトの心理として見ることができるのではないでしょうか。

「大義のために、家族、友人、仕事を捨てた」~一般社会からの切り離し

同作には著名な信奉者への取材がふんだんに盛り込まれていますが、その多くが「高校の友人を失って家族との関係が悪化したけど気にしない」「(活動のために)退職した」などと話しています。

「信仰」のために人生を投げ打つ傾向もカルトと共通です。カルトは「出家する」「信仰生活に入る」などの名目で、信者に家族や友人などそれまで親しかった人々との関係を断たせます。

親しい人との間が断たれ、一般社会から切り離され、カルト内部が世界のすべてになることで、その人本来の思考回路はますます錆びついていきます。こうしてマインドコントロール状態が進んでしまうと、その教団・集団が社会から批判されているというだけで脱する/脱させるのは困難になります。ホーバックが冒頭一番、制作の動機として「ただ信奉者を黙らせるだけでは解決しない気がした」と話していますが、これは当たっていると思います。

批判されるとかえって燃える

家族や親しい人がカルト的集団にはまっていくと、周りの人は気が気でなくなり、必死で引き戻そうとするものです。当然でしょう。

しかし、ここで家族や友人にとってはやっかいな心理が働きます。カルトにはまった人は、教団を批判されるとかえって燃え上がり、教団への忠誠心を高めてしまうのです。

大事な人がのめり込んでしまったら~救出したい時の鉄則

批判されるとよけいに燃える心理がつきまとうため、カルトから誰かを救出するのはかんたんではありません。

そこにもってきて、救出しようとする側には「ミイラ取りがミイラになる」危険性があります。……そんな馬鹿なことはあり得ない、と思われるかもしれません。しかし、これにはれっきとした実例があります。オウム真理教で、善良だった大学生が友達を救出しようとしているうちに引き込まれてしまった事例があるのです。なので、もしあなたの大事な人が陰謀論にのめり込んでいるなら、救出には専門家のバックアップを取り付けることが強く勧められます。

一般的なノウハウとしては、「批判せずにただ話を聞く」ことが効果的だといわれています。教団や教義について「それはどういう意味なの?」などと言葉のキャッチボールをしていれば、のめり込んだ人自身がおかしさに気付くチャンスがめぐってくるからです。

それでも引き戻せなかったら? 近年では、ごく普通だった人がネット上の陰謀論やヘイトスピーチにのめり込んで性格が豹変し、社会生活を送れない状態になるケースが世界中で発生しています。家族が離婚や別居せざるを得なくなるケースも多く、「突然の悪夢」に打ちひしがれる声が聞かれるようになりました。

それでも、救出の望みは絶たれたわけではありません。今は止めようがないほど燃え上がっているかもしれませんが、長い目で見れば、多くのカルト信者はいつかは気持ちが冷め、脱会に至っています。何かのきっかけで、教団のおかしさに気付くのです。その時に戻って来られるよう、待っていてあげることが脱会支援になるといわれています。

家族や友人がQアノンに染まり、「突然の悪夢」に苦しんでいる人には、こうした「マインドコントロールを解く方法」が効くと思われます。今後の課題や方向性として、まとまった調査や研究が行われるべきであり、同時に心理専門家による具体的な救出ガイドを期待したいと思います。

教祖・教団/Qの矛盾にぶつかって熱狂からさめる

こうして猛威を振るうQアノン陰謀論ですが、入口が同じなら出口もカルトと共通です。内部で言われていたことと矛盾する現実にぶつかった時に、熱がさめるのです。

カルト宗教なんかにはまりこむのは心が弱い人だと思われがちですが、実際にはそうとは限りません。歴史上、カルトは知性ある人を含むあまたの人をとりこにし、マインドコントロール状態に陥れ、組織や国家に隷属させてきました。

しかし、長い目で見れば、こうして夢中になった人も多くはどこかで脱会に至っています。そのきっかけはたいてい、教祖や指導者、教義の矛盾にぶつかったこと。典型的には、教団で「模範的な信仰生活をしているから神のご加護があるだろう」とベタ褒めされていた信者が突然事故など悪いことに見舞われた、といった出来事がよく聞かれます。教団の言う通りにならなかった。おかしいじゃないかと気づいて、教祖・教団や教義に対する気持ちが冷え込むのです。

2020年秋の米大統領選前、Qアノン陰謀論では「トランプが勝利する」と「予言」されていました。しかし結果は、バイデンの勝利。米政府の機密に触れられると自称するQの「予言」は実現せず、この時点で一部の信奉者は去っていきました。

それでも陰謀論は新たなストーリーを生み出し、残った信奉者らの熱狂は続きます。新たに信じられた「予言」は、「2021年1月20日が審判の日となり、アメリカの政財界にエリートとして巣くう『闇の政府』関係者がトランプ大統領の命令で一斉逮捕され、処刑される」というものでした。

しかし実際に2021年1月20日を迎えてみれば、そのような一斉逮捕など起こらなかった。

「予言」通りにならなかった現実が、Qアノン支持者らに衝撃を与え、幻滅させ、分裂を生みました。疑問を持つに至った多くの支持者が「もう終わった。自分たちはのせられたんだ」「何もかもデマと間違った期待で、もううんざりだ」などと「脱会」していきました。「くたばれQ」などと、かつての「教祖」に吐き捨てる人もいました。

こうして現実にぶつかったQアノンは、米大統領選前後からすれば下火になりました。他方、がんじがらめなまま未だ抜け出せない人は、まだ世界中に残っています。

おわりに―インターネットの黎明期を終わらせる時

人類社会にインターネットが登場したころ、社会的立場などが分からない状態で議論が行われることには期待するような見方がありました。「匿名掲示板」にも、社会実験だとして注目する動きがありました。

それから20年あまり。社会実験の結果が出たのが今になります。社会実験の結果が、いま我々が直面している、突拍子もない陰謀論が世界を荒らしまわっている現実です。

私は、「4chan」と「8chan」、そしてその元となった「2ちゃんねる」や英語圏の投稿サイトは、インターネット自体が新しくて未整備だったから存在し得たものだととらえています。「匿名掲示板」は現状非合法ではありません。しかし、すべて言論は自己の名において行うものであり、責任を伴うという言論の自由の前提からすれば、社会的にグレーゾーンではあることを強調しておきたいのです。我々は今、インターネットの黎明期を終わらせるべきタイミングにさしかかっているのではないでしょうか。

Qアノンはまだ終結に至ったとまではいえないでしょう。自由と民主主義の問題として、またインターネット特有の現象として、さらには「新型のカルト」として、その行方を注視していくべきと思われます。

(記事公開:2022年3月10日。同3月20日、「『完全な言論の自由』というアメリカ的幻想」「”Chan Culture”に関する私見」の項を追加しました。同4月14日、「外部には通じない『2ちゃんねる』の会話と陰謀論」の項を追加し、人物とサイトの解説に若干の加筆を行いました。同11月11日、ロン・ワトキンスのプロフィールに米中間選挙の結果を追記しました。)

関連記事・リンク

著者・日夏梢プロフィール||X(旧Twitter)MastodonYouTubeOFUSE

責任なき言論に信用はない―法律論と芸術論からみる表現の自由 – ワトキンス親子の主張や匿名での表現について解説し、筆者の意見や提言も述べました。

<陰謀論>

5Gに危険性や悪影響?~人はなぜデマを作ってしまうのか – アメリカを中心に広がった5G危険説・陰謀説を紹介しました。人が陰謀論を好む原因にも触れています。

人工知能(AI)の問題点・デメリット5選と、人間の未来 – SNS、特にYouTubeの関連コンテンツ表示プログラムによって普通の人が陰謀論や過激思想に一気に傾倒していく「突然の悪夢」を解説しました。

<カルト>

カルト宗教の勧誘に注意―大学で本当にあった3つの話とその検証 – 大学の新入生に限らず、カルト団体が近づいてくる時の特徴や対策をまとめました。家族や友人がカルトにのめり込んでしまった場合の救出法にも触れています。こちらでもネット上の陰謀論やヘイトスピーチを解説してありますので、併せてご覧ください。

オウム真理教元幹部・死刑囚の言葉から得られる教訓 – 「教祖」が根本的には不安定で一貫性を欠く、選挙に出馬したがる、落選すると票の集計に不正があったと主張するなど、オウム真理教の麻原彰晃とQアノンの首脳部には多くの共通点がみられます。さらにこちらの記事では、筆者の高校時代の友人が「2ちゃんねる」からヘイトスピーチにはまりこみ、当時の私が友人関係断絶を決断した経験について書きました。

<アメリカ大統領選・ポピュリズム>

映画『華氏119』:マイケル・ムーア監督が映したトランプ当選を考察! – トランプ当選を可能にしたアメリカ社会の背景事情が分かります。

ポピュリズム事例集―日本の小泉政権からトランプ大統領まで – 代表的なポピュリストとしてトランプを取り上げました。また、それを止められなかった反トランプ運動の欠陥も指摘しています。

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評価二分の『ONE PIECE FILM RED』~ウタはなぜ”炎上”したのか – 「サブカル界のリーダー」と呼ばれる谷口悟朗が監督を務めた、人気マンガ『ワンピース』の映画作品のレビューです。ストーリー展開において合理的な説明をしないなど、”Chan Culture”と共通する傾向がみられる点を指摘しています。

主要参考資料・リンク

「Q: INTO THE STORM」(カレン・ホーバック、米、2021年)

【解説】Qアノン陰謀論とは何か、どこから来たのか 米大統領選への影響は(BBC NEWS、2020年9月25日)

Qアノンの“Q”の正体が判明か。研究チームが背後にいる2人を名指し(ハフポスト、2022年2月21日)

米陰謀論「Q」を追う(朝日新聞、2022年2月15日朝刊)

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