一眼レフカメラの初心者におすすめな買い方&スマホにはない魅力

携帯電話やSNSの普及で、写真への関心がうんと高まったこの時代。近年は高画質なカメラを売りにしたスマートフォンが次々発売されていますが、だからこそ、よりきれいな写真を求める人々の視線は一眼レフに向くようになりました。筆者もその流れに乗った一人。一眼を手にしてからというもの、私の写真の世界は一変しました。

そこで今回は、一眼レフカメラを購入する際のチェックポイントを初心者目線でまとめ、スマホやコンパクトデジカメにはない魅力を2つ、私が撮った写真をまじえながら紹介していきたいと思います。これからやってみたいと意気込んでいる方、興味はあるけど事情はよく分からないといった方は、ぜひ参考にして一眼デビューをかざってください。

一眼レフカメラとは?―その歴史とデジタルの普及

もともとの「一眼レフカメラ」とは、「レンズに入った光線を内部の鏡が反射させ、鏡をはね上げることでフィルムに感光させる仕組みの写真機」をいいます。

原型は19世紀後半ごろから発明され、1900年前後からはイギリス、アメリカ、ドイツなどのさまざまな発明家が改良を加えていきます。こうした前身はどれも大きな「木の箱」でしたが、しだいに持ち運びできるサイズに小型化されていき、やがては一般人にも広まっていきました。

初期のものはアナログ機器でしたが、世界にデジタル技術が出現すると、各メーカーはデジタル技術を融合させるべく開発を進めていきます。こうして2000年ごろからはデジタルの一眼レフが普及。パソコンで編集しやすいことや、画像を一瞬で遠方に送れる利便性から、今日ではデジタルが主流となっています。(なお、フィルムを現像するアナログの一眼レフカメラは、一部ではいまも健在です。焼き方等によって仕上がりを変えられるので、主にプロのアーティストや往年の愛好家に使用されています。ただ今日では一般にデジタル一眼が前提となっているので、この記事では扱いません。)

デジタル開発はさらに進みます。2008年には、一眼レフカメラのミラーとファインダーと排した「ミラーレス一眼」が登場。撮影は従来通りにできますが、小型かつ安価なので、初心者でも手が届きやすくなりました。厳密にいえばミラーレスはデジカメの一種なので、アナログにデジタルを融合させたデジタル一眼レフとは根本的な部分で異なっているのですが、高機能化はどんどん進み、今ではプロの間でも使用が広がっています。

OLYMPUSの一眼カメラ
筆者初めてのミラーレス一眼、OLYMPUS PEN E-PL6(スマホで撮影)

ミラーレス一眼が発展するかたわら、ミラーありの従来型もそれはそれで開発が進んでいます。価格は基本的にはこちらのほうが高いのですが、最近は必ずしもそうではありません。お店の棚には低価格なデジタル一眼レフとミラーレスのハイエンドモデルが混在してきています。

以上のように商品事情は現在やや混乱しているので、私たちが頭に思い浮かべる「一眼レフカメラ」の範囲をどこで線引きするかはメーカーや電機店によって違ってしまっているのが現状です。内部にミラーがあるかないかは外から見えないのも手伝って、初心者には分かりにくくなっているかもしれません。

この点、一般的には、「コンパクトデジカメと対置された『レンズ交換式/一眼カメラ』と呼ばれる中に、ミラーがある従来型とミラーレスの2種類が混在する」と考えておけばいいと思います。2種類のうちどちらを選ぶかは、以下で解説する通り、お財布や自分の好み、被写体などとの相談なのですが、実際問題、それらの差異は今ではほぼなくなっています。常人には見分けがつかないような微妙な点について「自分の作品はこうでなければ」というこだわりが強いプロでない限りは、ミラーのあるなしは選ぶ際の基準にしなくていいでしょう。写真ブームを背景に、どのメーカーも初心者のニーズに応えられるエントリーモデルをリリースしています。

初心者おすすめの買い方

初めて「一眼レフカメラ」を買うなら、初心者向けの「本体+レンズ」セットを選ぶのをおすすめします。私たちが望むことをまんべんなく叶えられるよう作られているからです。それに何より、選び方で失敗しなくてすむので安心です。

私も、初めて買ったエントリーモデルのセットをかれこれ4年ほど愛用しています。

チェック必須はレンズの有無!

買う時に必ずチェックしなければならないのは、カメラのボディーだけでなく、レンズまでセットになっているかどうかです。セットはたいてい「レンズキット」という商品名になっています。

一眼カメラはレンズ交換式なので、売り場にはボディーだけ、レンズだけのバラ売り商品が多数並んでいます。なのでここでかん違いしてしまうと、家に帰って箱を開けたらポッカリ穴が空いたカメラに愕然……ということになりかねません。

私もかつて電機店をうろついていたころ、いいなと思った商品を指さしたら店員さんに「それはボディーを持っている人向けで、レンズがついていませんよ」なんて言われたりしてよく戸惑ったものでした。いざ買う時には自己判断だけによらず、今一度店員さんに確認するといいと思います。

初心者は中古に手を出さないほうがいい理由

カメラ関係は中古品の売り買いが行われる世界です。なので中古で安く買えたら……という考えが頭をよぎるかもしれませんが、これから一眼デビューの初心者にはおすすめできません。

なぜなら、レンズには規格などがいろいろあり、商品事情が複雑だからです。ボディーとレンズはどんな組み合わせでも使えるわけではないので、バラでそろえるのは初心者には難しいんですよ。下手に中古に手を出して、レンズを付けようとしたらボディーにはまらなかった、なんていうことになったら元も子もありません。やめておいたほうが無難です。

気になる価格

初心者向けセットの価格は、だいたい税込みで6万円台後半から、最高でも10万円以内と、手ごろな範囲に設定されています。こうしたセットを選べば失敗はありませんし、ニーズにもよく応えてくれるでしょう。

家電のお店でカメラコーナーを見て歩けば、「これあたりかな」と思えるようなラインナップが並んでいます。各メーカーが競っている様子が見えてくるはずです。

撮りたいものや使用場所は?

一眼カメラに求めるものは人それぞれ。なので、満足な買い物をするためには、被写体や撮る目的、使用場所に合った機能がついているかどうかを事前によく確認するのをおすすめします。

あなたは新しいカメラで何を撮ろうと想定していますか?

  • 旅行先で広大な風景を撮りたい
  • 子どもの成長や運動会の思い出を残したい
  • 電車を撮りに行く予定
  • 自撮りしやすいことが大事
  • アートフィルターをかけて絵みたいな写真にしたい
  • 食べ物を撮ってすぐSNSに投稿したい

このように目的をハッキリさせておけば、カタログをめくりながら自分に向いた商品に目星をつけられますし、店員さんに伝えればそれに適したモデルや小物をピックアップしてくれます。

たとえば私の場合、店員さんに「撮るのは主に風景、背景をきれいにぼかせるものを探している、高速連写機能は絶対欲しい」と伝えました。

というのも、私は一眼を買うまでずっとコンパクトデジカメを使っていたんですよ。最初は十分楽しめていたのですが、しだいに自分の望むことがスペックを超える場面が増えてきたんですね。花を撮りに行った時に背景がもっとボケてほしかったとか、高速連写機能がないせいで野生のイルカのジャンプを撮り逃してじだんだを踏んだ、とか……。それでしばしば電機店に通い、ぼんやりとイメージする「一眼レフカメラ」について調べ始めたちょうどそのころ、コンパクトデジカメの写真に白いもやのようなものが写るようになったんですよ。なんだろう、おかしいなと思ったら、レンズにごくわずかな傷がついてしまったことが判明。それでとうとう買い替えを決意したのです。(ちなみにその後、満身創痍のコンパクトデジカメは劇的な故障を起こして引退。いまは大事な瞬間を残してきた思い出グッズとして、引き出しの中で眠っています。)

多くの人のあこがれ、ボケた背景は、どのメーカーのどのモデルでもちゃんとできるので安心です。私の場合は、次いつ野生のイルカやめずらしい鳥に出くわしてもいいよう、高速連写機能がついているか、シャッター速度が速いかどうかはよく確かめてもらいました。他方、撮ってすぐSNSに投稿するつもりはなかったので、スマホに転送できるWiFi機能はいりませんね、ということに。

このように、求めるものは人それぞれなので、自分にとってどういう機能が大事で何がいらないかをハッキリさせておくと、満足がいき、価格的にもお得な商品に出会うことができるでしょう。

私はこんなふうにして買った初めての一眼に今でも心から満足しています。私がどんな写真を撮ってきたかは、この記事下とTwitterにて。きっとあなたもやってみたくなると思いますよ。

いっしょに買うべき小物

一眼カメラを買う際には、同時にそろえたほうがいい小物がいくつかあります。

絶対必要なものは、

  1. レンズのクリーニングセット
  2. レンズガード
  3. SDカード

あたりでしょう。本体を首から下げるストラップは、たいていセットに含まれています。

レンズのクリーニングセットとは、ほこりを吹き飛ばすハケ、クリーニング液、専用ティッシュのこと。セットで900円程度からあります。

レンズガードはその名の通り、傷を防ぐ取り付け式の小物です。上でお話しした通り私はコンパクトデジカメ時代にこりた経験があるので、最初に迷わず購入しました。価格は1000円ほどから。レンズに傷がついてしまったので、はりきって買った一眼カメラはほこりをかぶった……なんていうことがないよう、レンズガードは最初から付けておくことを強くおすすめします。

SDカードは写真の保存先なので言うまでもありませんが、もう一歩踏み込んでおくと、SDカードの「読み出し・書き込み速度」に注目したことはあるでしょうか? これは「カードに保存されたデータの呼び出す速度・カードへデータを保存する速度」のことをいいます。「書き込み」速度が速いほど、撮ってから保存までがすばやくなるので、特に高速連写をする人はチェックするといいでしょう。また、SNSへの投稿を考えている人には、WiFi機能付きのSDカードというのがあります。撮った写真を即座にスマホへ転送できるので、本体にWiFi機能がない場合はSDカードをWiFi付きにすればだんぜん便利になります。

他の小物としては、

  • カメラバッグ(持ち歩きに便利で、ポケットやクッション性もある)
  • レンズのフード(直射日光が入って画質が落ちるのを防ぐ)
  • フィルター類(光の反射をカットすることで被写体本来の色を引き出す「PLフィルター」や、エフェクトをかけるフィルターなど)
  • 三脚

などがあります。自分の好みや興味、被写体に応じて、少しずつそろえていくとよいでしょう。

一眼カメラだけの2つの魅力―望遠と広角

以上、買いそろえるまでのコツなどを解説してきましたが、いかがだったでしょうか?

冒頭でもふれた通り、一眼を手にしてから私の写真ライフは世界が一変しました。ただシャッターを押すだけでも古いコンパクトデジカメとは写真の質が違うし、スマホのアレはいくら高性能化したところで「画像処理機能」にすぎないんだと悟った次第。人生のなかで「買ってよかったもの」ベストスリーに入ることまちがいありません。

以下では、そんな一眼ならではの魅力を、私が撮った写真をまじえながら紹介していこうと思います。

望遠レンズで、あこがれのぼけた背景・丸ボケを!

私がコンパクトデジカメから一眼に進みたくなった理由の一つに、背景をぼかしたいというのがありました。

それまでのコンパクトデジカメでもできないわけではなかったのですが、ある頃からスペックの限界にぶつかるようになったんですね。とみに限界を感じたのは、花しょうぶを撮りに行った時でした。「こうなればいいのに」と頭で描くほど背景がぼけず、私が望むよりつまらない、いかにも素人っぽいスナップ写真になってしまったんですよ。

背景をもっとぼかしたい……。一眼カメラを手にして、その願いがついに叶いました。望遠レンズを使用すると、たとえばこんな感じに!

赤く紅葉したモミジの枝

こういうのを求めていたんですよ。しかも写真好きのあこがれ・丸ボケ(玉ボケ)も入っています。丸ボケが入ると、明るい静謐さが感じられるんですよね。一瞬の美を切り取った雰囲気、といいましょうか。

上の紅葉では背景に木や芝生があるとわかる程度にしておきましたが、もっと望遠すれば、背景はもっとぼけます。

満開の桜の花の写真

水彩画みたいですよね。実際には手前の花の後ろに花と枝と空があったのですが、それらの形や輪郭は消えて、水彩絵の具がにじんだような背景になっています。特に桜の写真では、枝って本当にうっとおしいんですよね。あわい桜色の魅力を、ゴツゴツしたこげ茶が邪魔してしまって。そんな問題も、望遠レンズでうんとズームすれば解決します。

花一輪、葉一枚だけにピントを合わせた写真を撮るなんていうこともできます。

青空と桜の花

このように一輪・一枚にズームして背景をうんとぼかせば、ポストカードのような写真を撮ることができます。

さらに、ぼかせるのは背景だけではありません。私は一眼を使い始めてから気づいたんですけど、遠くのものにピントを合わせて手前のものをぼかすのもなかなかおもしろいですね。独特の味が出ます。

赤く紅葉したモミジと黄色や緑の葉

……わかりますかね? この写真では、背景ではなく手前の葉をぼかして丸ボケを入れたんですよ。向こうの景色に緑や黄色のフィルターをかけたような、おもしろい写真にできました。

望遠の圧縮効果でぎっしり感

あこがれのボケ感の他に、望遠レンズには「圧縮効果」というのがあります。遠くと近くの距離感を圧縮するんですね。

この圧縮効果が威力を発揮する場所といえば、たとえば花畑などが挙げられます。

菜の花畑と一羽のメジロ

フレーム内がぎっしり菜の花に。菜の花1本1本の間にはすき間があるわけですが、望遠によってそれをぐっと圧縮することで、こんな幸せ感を出せたりするんです。

被写体が動物や赤ちゃん・子どもの時に真価を発揮!

一眼カメラの望遠レンズが可能にしてくれるのは、ぼけ味と圧縮効果だけではありません。

わぁーすっごいシロフクロウ……。これ、どこでどうやって撮影したと思います?

シロフクロウ
シロフクロウ

このロケ地、実は上野動物園なんですよ。極寒の北極でも、特別な撮影スタジオを借りたわけでもありません。シロフクロウがいるのは猛禽類のケージの一つで、私は一般来園者の一人。まわりはガヤガヤにぎやかで、ファミリーや観光客がそぞろ歩いている。そんな動物園の日常の中で、こんなにも強烈な写真を撮影できてしまうのです。

このように、動物園では望遠レンズが絶大な威力を発揮します。手前がぼけることで柵を消してくれますし、雑然とした背景もやんわりさせたり、なかったことにしてくれるのです。

パンダの毛一本一本までよく写りますよ。

横になっているパンダの背中の写真
上野動物園・ジャイアントパンダのシャンシャン

毛のほわほわ感がよく見えますよね。「シャンシャンと目を合わせたい!」という方は以下の記事でどうぞ。

リンク:上野動物園のパンダまるっとガイド―名前や個性から待ち時間まで

顔のどアップなんかもおすすめです。一眼カメラと望遠レンズを手に入れたら、絶対やってみるといいと思います。

タカの頭部の写真
鷹匠さんのタカ

ここで紹介したのは動物でしたが、望遠レンズは赤ちゃんや子どもの撮影にも向いています。小さい子は近くでカメラを向けると緊張して顔をこわばらせてしまいがちですが、遠くに立ってぐーんとズームすれば、自然でやわらかな表情を撮れるからです。そこにもってきて背景がきれいにぼけたりすると、幸せな一瞬、今だけの笑顔が永遠のものに。スマホでは撮れない愛情にじむ写真になるので、お子さんを撮りたい方には一眼レフカメラがだんぜんおすすめです。

プロっぽい、アートっぽい写真を作るのは望遠レンズ。一眼を手にしたかいがあると感じられると思います。

(以上撮影機材:OLYMPUS PEN E-PL6、レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED40-150mm f4.0-5.6R)

広角レンズでより広く、より高く!

一眼の魅力は望遠だけではありません。望遠の反対、広角レンズにも、それにしかない魅力があります。

広角レンズは、広い範囲をとらえることができます。人間の目よりも広いんですよ。圧縮効果とは反対に距離感が広がるので、奥行きもうんと出せます。

上野不忍池と弁天堂の写真
東京・上野不忍池

池はひろーく、桜の道はながーいでしょう? 遠近感満点、弁天堂ははるか遠くに見えますね。

同じあたりから40mmまでズームして撮ると……

上野弁天堂と池と満開の桜
東京・上野不忍池と弁天堂

こんな感じに。弁天堂までの奥行きがぐっと縮まっていますよね。40mmはまだ標準域で、望遠の域ではないのですが、広角との違いはよくわかると思います。

このように、広角レンズを使えば、町や自然の広大さはもちろん、やりようでは孤独感なんかも演出できます。

幅と奥行きだけではありません。タワーなどの高さを強調したいのに、せっかくの高さに圧縮効果がかかってしまっては残念ですよね。そこで広角レンズに付け替え、ふもとから見上げれば、タワーがそびえ立っている様子をありありと表現できます。

高くて迫力あるものにも最適です。……迫力あるもの? どんな??

等身大ユニコーンガンダム
東京・お台場の等身大ユニコーンガンダム(撮影:日夏梢)

どうです、この迫力!(……私、ガンダムのことは何も知らないんですけどね。被写体としては最高です。)

このように一方で迫力、他方で孤独感なども表現できる広角レンズは、風景の撮影では必需品です。私は一眼を買ったばかりのころ、そのすごさに感激しました。

満開の桜と柳と歩いている人々
上野公園・不忍池

春の日の何気ない風景に見えたかもしれませんが、一眼カメラの広角レンズでなければこの横幅は望めないんですよ。フレーム内にこんなに広い範囲をおさめられるようになって、桜の撮りがい、風景の撮りがいがうんと高まりました。カメラを買うと、撮影のために出かけようかな、という気持ちもわいてきます。

野原、海、山脈など、広大な景色を撮りたいなら、広角レンズは欠かせません。思い出用のスナップ写真はもちろん、旅先での撮影を考えている人にも向いています。

(以上撮影機材:OLYMPUS PEN E-PL6、レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED14-42mm f3.5-5.6ⅡR)

初心者の一歩先

以上、一眼のエントリーモデルで撮った私の写真はいかがだったでしょうか。こんな感じに撮れるんだと参考になればうれしいです。

では、そのうち初心者を域を越えたらどんな方向に進んでいくのでしょうか。初心者向けとハイスペックなモデルはどう違うんだろう? 一歩先の世界を最初から視野に入れておくのもいいので、だいたいこんな感じという方向性を紹介してみます。

あとで仕上げる「RAW現像」

初心者の一歩先でよく挑戦するのが、「RAW(ロー)現像」です。

普通、写真というのはシャッターを切った瞬間に完成しますよね。ところがRAWは、写真という形になっていない「生の」データだけを保存するというもの。家に帰ってからパソコンソフトを使い(Adobe Photoshopなどが有名だが、たいていカメラ本体の付属品としてついてくる)、生のデータを自分で画像に仕上げるのです。露出、ホワイトバランス、カラーバランス、コントラスト、明度、彩度などをすべて自分の思い通りに加工できるので、プロのフォトグラファーや趣味の高じたハイアマチュアによく使用されています。RAWはデータ量が多いので容量の多いSDカードこそ必要になるかもしれませんが、他に新しい道具等はいりません。

私はまだRAW現像には着手していません。ただRAW現像だと息をのむような風景写真を制作できるのはよく見知っているので、湖かどこかへ旅行に行く計画が持ち上がったらチャレンジしてみたいなと思っています。

個性いろいろ、ニーズに応える替えレンズ

ほかでは、替えのレンズを増やしていくことはよくあります。個性さまざまなレンズのなかから、自分の求めに応じたものを買い足していくのです。

たとえば、バードウォッチャーやプロの報道写真家がどっしり長いレンズをつけている姿は思い浮かびませんか? 先ほど菜の花畑のメジロの作品を紹介しましたが、「メジロの瞳まで激写したいんだ!」という人は、超ズームできる超望遠に進むことになるでしょう。

あるいは、ズーム機能がない「単焦点レンズ」というのもあります。「なんじゃそりゃ、使い物にならん!」というのは早計で、単焦点には「レンズが明るい」という特長があるんですね。レンズが明るいと、よりきれいなぼけを出せたり、シャッターのスピードを上げたりできます。

もしくは、撮影の目的のしぼられたレンズもあります。広大な風景を撮る人には超広角、食べ物や花を至近距離で撮る人にはマクロレンズ、などなど。

私は単焦点のレンズに少し興味を持っています。しばらくはキットのズームレンズ2本で続けるつもりですが、そのうちはワンランク上の美を求めるかもしれません。

ボディーを上位モデルに?

他では、レンズではなくボディーを上位モデルに買い替えることが考えられます。ミラーレス一眼からデジタル一眼レフへの移行を考える人も出てくるかもしれません。

一般に、ミラーレスでない一眼レフカメラは動くものを撮るのに強いといわれています。かなり微妙なところで諸説あるようなのですが、電車、野生動物、野鳥、スポーツなどを被写体にするなら、案として浮上するかもしれません。

私はこれまでの経験から、写真の世界は、カメラのスペックすべてを使い倒した時に次へ進むものだと思っています。いまはミラーレス一眼で十分満足しているし、まだ手をつけていない機能も多々残っているので、ボディーの買い替えは考えていません。それに、ここ20年ほどで、カメラ事情は激変しました。今後も開発は進み、変化していくでしょう。テクノロジーがどんなふうに移り変わっても、私は自分の望みにかなうカメラを追いかけていたいです。

結びに―手軽さはそのままに、アートの領域へ

時をさかのぼる19世紀。「写真機」という新たな発明は、画家たちに激震を走らせました。肖像画家は失業の危機に恐れおののきました。画壇はその「木の箱」に猛批判をあびせました。「あんなの、ただボタンを押すだけじゃないか。アートではない」と。

時は過ぎて21世紀。「木の箱」は小型化に次ぐ小型化、デジタル技術との融合、そして携帯電話の付属物としての地位獲得などめまぐるしい変遷を経て、一般人の日常へとけこむに至りました。アートの一分野としてもすっかり定着し、今ではこだわりの強いアーティストまで生まれています。

ただどこまで進もうとも、「ボタンを押すだけ」というのはカメラのれっきとした事実なんですよね。このフレーズは決して時代に取り残された画家たちの怨嗟ではありません。撮影スタジオで理屈をこねるプロの写真家といえども、最終的には「カシャッ」で完了。動物園へ行楽に来たファミリーと同じです。しかし、その気になりさえすれば、思うままの作品をつくることができる。驚くべき簡単さと深い可能性が、一台の中に共存している。それがカメラならではの面白さだと思います。

一眼カメラを使用すれば、ぼけ感や圧縮効果といったテクニックもそうですが、撮る時の構図などを決めることで「最高だ!」と思った瞬間の「絵」をボタン一つで作ることができます。そう、「写真」は「真実を写す」ものではありません。「作る」ものなのです。

近年では、携帯電話メーカーが高画質なカメラを前面に押し出した高価な機種をこぞってリリースしています。「デジカメはもういらない」なんていうキャッチフレーズを耳にはさんだこともあります。しかし一眼を手にしたら、携帯電話の「カメラ」はいくら高画質にしたところであくまで簡易的・補助的な画像処理機能にすぎないのだ、と、まもなく実感することになるでしょう。質が違う。芸術性が違うのです。

「ボタンを押すだけ」でありながら、ワンランク上の「表現」を可能にしてくれる。そんな一眼レフカメラを手にしたいなら、時代は熟しています。興味があるなら手を伸ばし、挑戦してはいかがでしょうか。

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著者・日夏梢プロフィール||X(旧Twitter)MastodonYouTubeOFUSE

(商品事情や価格が時とともに変動する性質上、この記事は更新されることがあります。公開:2019年4月6日、最終更新:2023年12月26日)

上野動物園のパンダまるっとガイド―名前や個性から待ち時間まで – シャンシャンと目が合った瞬間の激写に成功! こんなのも撮れます。ぜひ見ていってください。

メーカー公式サイトリスト

OM(旧Olumpus)公式サイト – 筆者が使用しているPENシリーズのメーカーです。企業の再編で社名が変わりました。

他だと、

などが代表的です。売り場では、一眼に期待すること、目的、予算等に合ったものを探してみてください。

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