【緊急声明】共謀罪法に反対します

2017年6月15日、異常な審議打ち切りの末、「共謀罪」法が成立した。私、日夏梢は、言論にたずさわる作家として、また一市民として、この暴挙に断固抗議する。

本法律の目的はテロ対策だと安倍政権は主張するが、実際にはテロと関係ない犯罪も法律の対象として含まれている。また、「組織的犯罪集団」や「準備行為」の定義が文面上あいまいなため、監視や捜査の対象は、一般市民にまで及ぶ

具体的には、「組織的犯罪集団」とはどういう集団のことなのかが不明瞭で、しかも誰がその一員なのかはわからないのだから、全国民がその疑いをかけられることになる。(警察官になったつもりで考えると分かりやすい。「組織的犯罪集団」の構成員が「組織的犯罪集団に入ってるんだー」などと吹聴して回るわけはないので、彼らは特段目立たない「いかにも一般人ぽい人」の仮面をかぶって社会生活を送っているに違いない、と考えれば、あなたのような人こそ疑わしいかもしれない。疑いをかけられた瞬間、あなたは「一般人」でなくなる。)「普通の人」「ただの人」「一般人」と自称・他称される市民が知らないうちに警察の監視対象になっていた、あるいは日常的な行為に「言いがかり」をつけられる形で容疑者扱いされ、捜索を受けたなどという事態が、共謀罪法によって起こりうることとなっている。(具体的には、ある日突然前触れもなく警察官が家に押し入ってきて、たんすの中身からパソコンに保存してあった写真、通帳や日記帳まで閲覧・撮影・コピーしたり、差し押さえによって警察署に持っていくなどといったことがあなたに起こる。)

本法に対して国民からは反対の声が強く、法律専門家のほとんどが反対している。国連の特別報告者や海外メディア、NGOからは、プライバシーや表現の自由制約の懸念が多数出ている。これらに関し、政権はまったく説明できないまま、強行採決に踏み切った。悪法には、必ず聞こえのいい大義名分がある。テロ対策は名目にすぎず、共謀罪法の狙いは、自由な言論活動を委縮させること、および全国民を監視することにあると言わざるを得ない。現政権への批判を封じる作用は、独裁的で極めて危険である。

あらゆる人が表向きは「一般人」らしく愛想笑いし、内心では周囲や捜査機関から疑いをかけられているのではないかとびくびくしながら暮らす。そんな生活は、想像しただけでも息がつまる。こうした生きにくさは、自分とは関係ない誰かが勝手に解決してくれるものではない。日本は、多くの市民が自分のことを「ただの人」などと表現して過度に謙遜し、政治に関わるのは「特殊な人」であり、政治は関わりたくないものだという風潮がある特殊な国だ。しかし現実には、日本全国に「ただの人」は一人もいない。たとえ自覚がなくても、一人一人がこの社会・政治をつくっている。今のうちに人権侵害を食い止めるよう声を上げるのと、このままでは将来首が締まると知りながらなお政治に関わらないでいること、どちらが「危険」だろうか。社会基盤を確保し、他人と自分自身・今の生活と未来の両方を守るため、それぞれが可能な方法で声をあげることこそ、合理的かつ安全な選択である。最も有効な行動は簡単で、次の選挙で野党候補に投票し、安倍政権を倒せばよい。行動する際、違憲な法律は無効なので、おそれる必要はない。

すべて政治家とは、のちの歴史が裁く法廷に被告人として立つ者である。安倍政権が将来の日本史に汚点として刻まれることを指摘し、現在を生きる市民として落胆と憤りを明記しつつ、これからも作家として自由な表現活動を続ける旨を表明する。

共謀罪法は、ただちに廃止されるべきである。国民の代表者たる国会議員には、表現の自由・内心の自由を侵害する本法と闘い続け、廃止を実現させる責務があると訴える。


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