おすすめなアコースティックギターへの道案内~初心者女性の足跡をたどって

私はアコースティックギターと一緒に自己表現を始めました。最初は実物を見たことすらないゼロからのスタートだったのですが、今ではいちばんの趣味だし、世界にたった1本の私のアコギはどんな言葉でも言い尽くせないほど大事な宝物です。

今回は、私がアコースティックギターについて何も知らなかった時代からついに楽器屋さんで買うまでの足あとをたどりつつ、その魅力や、メーカー、価格、初心者・女性へのおすすめなど、必要なことを全部お話ししようと思います。これからやってみようかなぁと思っている方、興味はあるけど疑問や不安やためらいがあるという方は、ぜひ道しるべにしてください!

アコースティックギターとは―きほんのき

アコースティックギター(略称アコギ)は木製の弦楽器です。本体は大きく分けて、弦をはじいて出た音を共鳴させるボディと、スチール製の弦6本を張るネックの部位から成ります。

マーティンアコースティックギターOO-18V
アコースティックギターの実物。8の字型の部分がボディ、弦が張ってある棒状の部分がネック。

演奏する時は、いすに座ってボディをひざにのせるか、ストラップを左肩にかけて立つかのどちらかで構えます。左手の指で弦を押さえることで音程を上下させ、右手で弦をはじきます。弦を押さえる位置は、フレットといってパーツで仕切られているので迷うことはありません。押さえるフレットがボディに近づくほど、半音ずつ高い音になっていきます。弦をはじくには、たいていピックという2、3cmくらいの三角形の板を使いますが、とくに決まりはありません。つめや指でジャランと鳴らしてもいいし、あるいは指弾きといって弦を1、2本ずつパラパラとつま弾く奏法もあります。

ギターは、主に伴奏用の楽器です。しかしやろうと思えばソロでメロディを弾くこともでき、奏者によってはボディを軽くたたくことでパーカッションのように使うこともあります。それゆえ、「ギター1本はオーケストラだ」などともいわれます。

ちなみにエレクトリック・アコースティックギター(略称エレアコ)は、いわばアコギとエレキのあいのこです。形状はアコギと同じで、普通のアコギとして演奏することもできますが、コードをさしてアンプにつなげばサウンドをスピーカーから出せるというものです。ライブなど、ステージで演奏する人に向いています。

アコースティックギターの選び方

アコギを始めたいけど、一体どうやって選べばいいの? いろんなモデルがあるけどどんな違いがあって、どれが自分に合っているの? 誰にだって、いまや伝説のミュージシャンにだって、そんなふうにモヤモヤしている初心者未満の時代はありました。

ここでは私が初めてアコースティックギターを手にした時のことを、時系列でふりかえっていこうと思います。これからの方は、楽器屋さんに入るところから疑似体験してみてくださいね。

私がアコギをはじめたきっかけ

私の周りには、ギターをやったことがある人など人っ子一人いませんでした。実物を見たことはなかったし、とりたてて好きなミュージシャンがいたわけでもなく、私にはアコギなど縁遠い存在でした。

ではなぜ興味を持ったのかというと、はじまりは学生のころ、歌詞らしきものをノートの端に走り書きしていたことでしょうか。「らしきもの」と言ったのは、私は特に歌詞を書こうと意図していたわけではなく、心の奥にある混沌とした気持ちがたまにぽん、ぽん、と言葉に結実して出てくるのをメモしていただけだから。アートのはじまりは、得てしてそんな自然発生なんですよね。

他の理由は、私は小さいころから好きな科目といえば音楽だったので、楽器をやってみたいというばくぜんとした思いを抱えていたこと。では具体的にどの楽器をやろうか、と考えると、ピアノは小さい子の習い事みたいでいやだったし、スピーカーから出る電子音は私の感性がまったく求めていなかったので、消去法でかなりの楽器が候補から消えました。

そして直接のきっかけは、渋谷へ行くたび楽器屋さんに出入りしていたことです。もともと音楽が好きだった私は、中学生のころ友達に連れて行ってもらって以来、カラオケを趣味にしていました。楽器屋さんには音楽関連書籍コーナーがあるので、私はぶらっと入っては歌やボイトレの本を立ち読みしていたのですが、店内をうろうろしているとどうしても楽器の実物や小物が目に入ってくる。なにせ楽器屋ですからね。テレビでしか見たことのなかったエレキギターの実物が至近距離に並んでいて、そのわきを歩いたりするわけですよ。気になってくるじゃないですか。ギターを背負ったお客さんも見かけます。そんな店内でとりわけひかれていったのが、空調付きのアコギ・ウクレレコーナーでした。

ショーケース内外にたたずむアコースティックギターは光り輝いていました。格調高く、それ自体が芸術という感じで。木の色と香りも落ち着くので好きでした。

私にとって、いろいろな思いの交差点がアコギだったわけです。魅かれて、引かれて、私はとうとう決意に至りました。ある日財布にお金をつめて渋谷へ繰り出し、店員さんに声をかけました。

ギターを選ぶ基準は、意外にも「見た目」

私はけっこう意外に感じたのですが、ギタリストはギターを「見た目で選ぶ」と言います。色や形が気に入るかどうか。とりわけ初めてのギターはそうです。小難しく「サウンドの違いで……」とは言わないんですよ。

なぜかといえば、いちばん大事なのは自分がそのギターを好きになれることだから。自分が「いい!」と思えることが肝心だから。

愛着がわけば弾く機会が増えて上達しやすい、というメリットもあるようですが、技術面よりも「なりたい自分になっていく」ことに重きがあるようです。私はこの世界のそういう雰囲気も好きですね。

だから、初心者のはじめてのアコースティックギターは、見た目で好きなものがいちばんだと思いますよ。

思えば私にとって、あの時が生まれて初めてギターにふれた瞬間でした。それまで高嶺の花だったアコギが手元に来た時の感激は、もう震えるほどでしたね。なかなか写真ではわからないんですけど、アコースティックギターって本当にきれいなものなんですよ。多くはボディの表面がコーティングしてあるので、光沢があるんです(さらっと仕上げてあるものもありますが、これはこれで気持ちいいですよ)。あと、実物でないと見えにくいですが、ふちにはデザインの細工がしてあります。自分の手で持ってみると、木材からていねいに作られたことが、手から伝わってきます。私はあまりにどぎまぎしたので、いまいち集中できなかった記憶があります。店員さんに試奏させてもらったのですが、構え方も弾き方も見様見まねで、ミュージシャンぶっているみたいでこそばゆく、ギターを抱えている自分自身が新しすぎてなじまず、そういう意味でも震えていた気がします。

実はその時、私の頭の中にはまだウクレレもありました。でも歌との兼ね合いで音程には安定感があるほうがよかったし(ウクレレは素朴な味のある音を出しますが、音程の安定感には少し不安が……)、どうせならいちばん望むものがいいので、アコースティックギターの道を選びました。

楽器屋さんでのマナー

これは全然心配いらないと思うんですけど、楽器屋さんが初めての人は不安かもしれないのでマナーをまとめておきます。

まず、無断でギターをいじるのは厳禁です。勝手にべたべたさわったり、持ったり、音を出したりしない。さすがにそこまで図々しいお客さんはめったにいないそうなんですけど、何年か前、私がよく行くお店で怒った店員さんが「試奏するときは必ず声をかけてください」と貼り紙を出したことがありました。楽器屋さんで一番失礼な行為は「無断でいじる」でまちがいないと思います。

あと、店員さんを一方的に質問攻めにしない。壁のギターをあれもこれも指さして「これすごいですね」「あれはどうですか」「〇〇ってどうなんですか」などとひたすらまくしたてる人が、まれにいるらしいんですよ。ワクワクが止まらないんでしょうけど、これでは店員さんが困ってしまいます。普通のコミュニケーションを。

ギターをこよなく愛する店員さんは、私のような右も左もわからない初心者の相談にもきちんとのってくれます。まずはお話を聞くだけでも大丈夫。置いてあるギターはどれも、ていねいに作られた大事な楽器です。楽器に敬意を。

選ぶ時のチェックポイント

ギターは見た目で選ぶ……とはいっても、どうしてもそれ以外に考慮することは出てきてしまいますよね。ここでは、アコースティックギターを選ぶに際して押さえておいたほうがいいポイントを挙げておきます。

手や体の大きさ―女性や大柄な人はとりわけ要チェック

抱えて演奏する楽器ならではのチェックポイントが、体格との兼ね合いです。自分の体格と極端に合わないギターは、とりあえずやめておいたほうがいいでしょう。演奏しにくいことがギターから遠ざかる原因になるのはもったいないからです。

アコギ選びでサイズをとくに考慮したほうがいいのは、女性や大柄な人などです。

具体的にどんな問題が起こるかというと、たとえば身長140センチ台の女性がドレッドノート(いちばん大きい型)を持ったら、重たくて負担……。全体的に小柄で手も指も小さい女性がネックの太いギターで弦を押さえようとしたら、指がうまく届かない……。逆に、大柄な人がコンパクトなギターを持ったら、立ち姿のバランスが悪いし、弦を押さえる手もせせこましい……。こんなふうに体の負担が大きいと、ギターを楽しみづらくなってしまいます。

ギター選びは完全に好みの世界です。なので、たとえ体格に合わなくても好きだというならそれがいいし、「このギターが似合う自分になっていきたいんだ」というならそれもありです。ただ、大きさに限らずメーカーなどでも、最初の1本ではあまり極端なことは避けておいたほうが、ギターの世界に入っていきやすいとは思います。

実際的に言えば、楽器屋さんでは私のようなギターに指一本ふれたことのない初心者でも必ず、何本も試してから選んで買うことになります。なので、「自分の体格に合わないギターを買ってしまった」という失敗談を私はいまだかつて聞いたことがありません。ご心配なく。

価格はやっぱり肝心

ギターを始めるのには、いくらかかるのか。財力が無限にあるはずはないので、避けては通れない疑問でしょう。

何であれ新しいことを始める時は、本当にそれが自分に向いているかのどうか、確信まではできないものです。自分でやってみないとわからない部分がありますからね。なので、最初から大金を出す勇気はなかなか持てないのではないでしょうか。

ギター選びには、絶対こうするのがいいというルールはありません。フィーリングも人によって様々なので、ここでは価格関連で参考になりそうな話をいくつか書いておきます。

まず、楽器屋さんに出入りしていれば、だいたい値段の感覚はつかめてきます。楽器だという性質上、できる限りは通販を避け、実店舗へ出向くことをすすめます。

楽器屋さんによっては、初めてアコギを持つ初心者用のセットを売っていたりします。それだと価格は、必需品込みで15000円くらいから

また、メーカーによってはエントリーモデルを生産しています。こういった初心者用アコースティックギターは、安かろう悪かろうではなく、確実な商品です。音程がいいかげんな楽器なんて売ったら楽器メーカーの名折れですからね。私としては、部活の新入部員さん、音楽教室で習い始める人、あるいは楽器屋さんがあまりに遠方なので通販で買わざるを得ない人におすすめします。

ある店員さんによれば、アコースティックギターは価格10万円を超えるあたりからは完全に好みの世界で、必ずしも100万円のギターのほうが優れているという意味ではないそうです。

アコースティックギターの価格は、木材の種類や枚数、コーティングの仕方やインレイ(装飾の柄)などによって決まります。加工・圧縮・合成などで作られた木材より自然のままの木材のほうが、また、ボディ裏の木材は複数枚をはり合わせたよりも一枚板(単版)のほうが高価になります。

ただ、アコギのサウンドは木材の種類(ローズウッド、マホガニー、スプルースなどが代表的)と使用箇所(トップ、サイド、バック、フィンガーボードなど)の組み合わせをはじめ、複雑な要因で決まります。なのでプロ中のプロでさえ、安めのありふれたモデルをずっと愛用していることもあれば、100万円を超えるギターでも全然ピンとこないことはざらにあるそうです。本体の装飾に関しては純粋にデザインの話で、絵柄を入れるのに材料や手間がかかったというだけ。

このように、アコースティックギターは価格と品質が比例する世界ではありません。音の良さに絶対的な基準があるわけでも、私たちの耳に正解不正解があるわけでもありません。ギターそれぞれの個性と、ひとりひとりの感性です。

私は、初心者向けアコギセットとミニギター(その名の通り小型のアコギ。ミュージシャンだと部屋で作曲するときなどに使うらしい)で悩んだ結果、ミニギターを選んだんですよ。

リトルマーティンミニギター
Little Martin

初めてのアコギとしては、ミニギターはやや変則的です。一般的にはおすすめではないのかもしれませんが、私が後々まずいことになったのかといえば、全然そんなことはありませんでした。楽器屋さんのほうも、「それがいいなら、よく鳴るいい品だから」と言ってくれました。候補に挙がったもののなかで、私はそれが好きだったんですよ。初心者向けのセットを候補から落とした理由は、色が気に入らなかったから。ダークブルーにカラーリングしてあったんですけど、私は青という色に思い入れがなく、かかえてみてもしっくりこず、木の色のほうがよかった。つまり、見た目です。それで正解だったと思います。初めてのミニギターは、今でも好きです。のちにフルサイズのアコギもそろえましたが、そちらがやや個性的なサウンドなこともあり、どうしてもミニギターの音でなければと感じる時もあるくらい、永らく愛用しています。

必要な小物は?

いざ楽器屋さんに出向く時、お財布の中身はギター本体のお金だけで足りるのか。楽器のなかにはいろんな備品が必要になってくるものもあるので、本体さえ買えばやっていけるのかどうかは大事なチェックポイントです。

結論を先に言ってしまえば、アコースティックギターの小物は種類が少なく、しかも安価です。

唯一絶対必要なのは、チューナーです。アコギを弾くときは、毎回弦を張る強さを調整して、正確な音程に合わせなければなりません。では、音程がぴったり合っているかどうかはどうやって判断するのか? 方法は音叉を使うなどいくつもあるのですが、最近は計量器のような目盛りで音程を判定してくれるチューナーが一般的になっています。必需品であるチューナーはエントリーモデルのセットなら必ず含まれていると思うので、一応店員さんに確認してみてください。さらにスマホの時代に入ってからは、アプリのチューナーが手に入るようになりました。「ギター チューナー」でアプリストアを検索してみてください。無料で質のいいアプリもあり、私もけっこう利用しています。

次に、弾き方のところで紹介したピックです。ピックには様々な素材や厚さのものがあり、案外これが音の感じを大きく左右します。ただピックは、1枚100円程度とまさしく小物。しかもつめや指ではじくのもありなので、絶対の必需品ではありません。とりあえず、薄めでスタンダードなピックを買っておいてはどうでしょうか。私はいろんな素材や厚さのものをジャラジャラ持っています。

ほか、ネックにはさんで音の高さを変える「カポタスト」という道具があります。カポタスト(通称カポ)は必需品ではないのですが、演奏の不自由をうんと減らし楽しみが広がるので、個人的には最初からそろえておくのをおすすめします。1000円くらいを想定しておけばいいでしょう。

最後に保管方法ですが、ギターを買えばたいていソフトケースかハードケースがついてきます。保管はそれがあればじゅうぶんです。店員さんによれば本体をふくのはTシャツがベストだということなので、とりあえず専用の布等はいりません。

ほかには、弦が古くなったり切れたりしたときの替え弦、弦交換に使うペンチ、見た目をカッコ良くするストラップなどの小物があります。必要になったもの、自分の好きなものから追い追いそろえていくといいでしょう。

このように、初めて楽器屋さんでギターを買う時には、必需品の小物はほとんどありません。チューナーは無料アプリでいくというなら、極端な話、本体以外0円でもいけるでしょう。あとでもう一度お話ししますが、のちの負担が少ないアコギは、趣味としておすすめできる類だと思っています。

ギターの世界では、中古ってどうなの?

楽器屋さんはたいてい買取をやっていて、中古ギターもそろえています。中古はどうなんだろう、と気になっている方のためにこちらも解説しておこうと思います。

まず、本や服と違って、ギターは「中古=安い」ではありません。むしろ、元値から跳ね上がってプレミア付きの何百万、なんていうこともあります。ヴィンテージギターをこよなく愛するコレクターもいます。

アコースティックギターは木でできていますから、経年により木材の感じが変わっていきます。それに伴い音が変化するのですが、これが「たまらなくいい!」というマニアもいるのです。具体的には、木から水分がとぶので、やや乾いた感じの音になっていきます。あとは、ボディ音の振動を受け続けることで、こなれた感じというか、そういう味も出てきます。一方、何十年も前に制作されたギターのそういう音は「枯れている」とマイナスに感じる人も。これもまた、それぞれの感性による好きかどうかの問題です。

品質の面でも、中古だと特有の問題が出てくることがあります。なにせ木製なので、前の所有者が演奏するうちにネックの木が若干反った、などということが起こるのです。これに関しては、熟達した人でなければまず見逃してしまうでしょう。

このように、中古ギターはどちらかといえばマニア向けです。一般論としては、初心者にはあまりおすすめできないと思います。

もっとも、お得で良質な中古も存在しています。ほんのちょっとした傷があるなどの理由で値が下がっただけで、本体の状態は良好、よく鳴りますよ、という掘り出し物があれば、きっと店員さんが教えてくれるでしょう。

もし中古を買う場合は、必ず、状態の良し悪しを店員さんに確かめてもらいましょう。

ギターを買おうとして、まさかの為替デビュー

「本日の米ドルは、前日から小幅に下がって1ドル108円……」といった為替相場。実はギターを買う際、この為替にはかなりの影響力があります。

外国製ギターの価格では、為替が時には何万円もの差になって表れるからです。

直接的に言ってしまうと「『円高ドル安』が進めば、外国製ギターは高くなる」というのがその法則。たとえば単純計算で、アメリカでの価格が1000ドルのギターは、1ドル=100円の時は日本で10万円のところ、1ドル=110円なら11万円。1万円の差が出るわけです。高価なギターになればなるほど、為替による差も大きくなります。(私が買った時期は円安だったので、今思うとお得でした。ラッキーだったなぁと思います。)

為替相場が大きく変動すると、楽器屋さんは価格改定を検討し始め、ついに踏み切る時が来ます。もしも次で挙げるような外国メーカーのアコギにあこがれているなら、今日から為替をチェックするといいでしょう。

おすすめのメーカーは?

私はギタリストの間で、あるメーカーのファンだったら他はライバル、という雰囲気を感じたことはありません。何十本も持っている人なら、当然のようにあらゆるメーカーの製品を集めているようです。

メーカーのスピリットが自分に合うかどうか、これまでどんなミュージシャンに使われてきたか、そのあたりが気になるかもしれません。私は全然コレクター肌ではないのですが、メーカーについても話せる範囲で語りたいと思います。

Martin―アコギ界のトップメーカー

Martin(マーティン)のアコースティックギターは世界のスタンダードといわれています。どのメーカーも、Martinのアコギを研究しながら自社の製品を作り上げてきました。アコギをやっていてマーティンを知らぬ者はいないし、語るにあたって避けては通れないメーカーです。

創業は1833年。クリスチャン・フレデリック・マーティンはドイツのギター製作者でしたが、故郷で職人ギルドとの関係が悪くなってしまい、新天地・アメリカへの引っ越しを決意したということです。今の世界的名声をみれば、まさに「アメリカン・ドリーム」だと思うんですよね。今日でも株式非公開で大手資本を介入させず、職人気質を守り抜いています。店員さんによれば、マーティンは女性のクラフトさんも多いそうですよ。

Martinのモデル名は、O、OO(ダブルオー)、OOO(トリプルオー)、OMそしてD(ドレッドノート)と、大型化していった歴史をそのまま反映しています。OOO-42は、かのエリック・クラプトンの使用モデルとして非常に有名。そしてなんといってもD-28は世界中のプロミュージシャンから絶大な信頼を得る永遠のスタンダード、D-45はマーティンが誇る最高モデルとして有名です。

そして私の愛器はこちら。

マーティンアコースティックギター
Martin OO-18V

好きで好きでたまらない私の宝物。自己表現というアートの時間をともに歩んできた、かけがえのない相棒です。

実は私がフルサイズのアコギが欲しいと思った時、見つめていたのは名声高きD-28でした。その時店員さんが「こんなのもありますよ」と教えてくれたのが、このOO-18V。マホガニーがサイドおよびバックと多用されているので、木材らしい丸みとあたたかみのあるサウンドです。ただフィンガーボードに採用されているのは木材で随一の硬さを誇るエボニーなので、ぼやけはしない。その絶妙なバランスにほれこみました。華やかでキラキラしたサウンドが気持ちよく鳴るD-28とはずいぶん違う、個性的な組み合わせが織りなす個性的なサウンドだと思います。私は木らしい丸みと個性を重視しました。だからこそ、他にはない愛着があります。

ついでなので言っておくと、D-28もよかったですよ。永遠のおすすめモデルです。もしも私に次のアコギがあるとしたら、あんなサウンドがいいなぁと思っています。これからアコースティックギターを始める人はしばらくするとD-28にあこがれるだろうなぁと思いますが、その期待に応えてくれるモデルにまちがいありません。

このように、マーティンはメーカーによってというよりモデルによって個性が決まっている印象です。(ちなみに、サウンドの違いは試奏してもらったりさせてもらったりすれば初心者でもわかるのでご安心を。音は感性にかかわることなので、「わかる」より「感じる」と表現したほうが正確かも。)Martinは生音へのこだわりが非常に強いメーカーなので、木の質感や音に魅かれる人には特におすすめです。

楽器屋さんによれば、マーティンはギター一本一本の個体差が少ない一方、次に挙げるギブソンは個体差がかなりあるということです。もしギブソンにあこがれているなら、「これぞ!」と思う個体が見つかるまで何本も試奏させてもらうといいかもしれません。

Gibson経営破綻の衝撃……しかし伝説は終わらない

創業1894年、エレキギター「レスポール」で有名なGibson(ギブソン)。ところが2018年、事実上経営破綻したというニュースが世界を駆けめぐり、ギタリストたちに衝撃が広がりました。私はギブソンを持っていないしこれから買う予定もないけれど、かの名ブランドの経営破綻はショックでしたね。天声人語(2018年5月4日)でも取り上げられていて、私は思わず切り抜いたくらいです。

私にとってGibsonはエレキのメーカーというイメージだったので(実際にはマンドリンの製作から始まったメーカーなのですが)、最初から眼中にありませんでした。しかし、数々のミュージシャンがギブソンのギターで伝説となり、それにあこがれた人が新たなミュージシャンとなって人気を博すという好循環ができているのは横目で見て知っています。

ギブソンだと、アコギでもロックミュージシャンがステージでジャンジャンかき鳴らす印象が強いです。あと個人的には、Gibsonのアコースティックギターといえば、サンバースト(日に焼けたようなこげ茶のカラーリング)。ルックスがそのままサウンドにも反映されている気がします。楽器屋さんでは「Gibsonみたいなドロッとしたサウンド」なんていう表現も聞いたこともあるので、そんなふうに感じる人もいるのでしょう。ギブソンにはギブソン・サウンドという独自性がある気がします。

経営破綻したとはいえ、ギブソン・ブランドのギターがなくなるわけではありません。これからは音響機材など不振な分野から手を引き、主な事業である楽器製造に力を入れて再建を図るということです。あこがれのミュージシャンがいる人の場合、使用ギターを調べてみたらGibsonだった、というケースは多いと思います。もしそうなら、わき目もふらずギブソンへ猛進するのがおすすめです。

他にもいろいろ―初心者は信頼のブランドを

アコギのメーカーは、決してこの2社だけではありません。単に私があまりくわしくないだけです。テイラーやタカミネなどが有名でしょうか。あと、ピアノで有名なヤマハは世界的にも一大ブランドですし、他にも国内外様々なメーカーがあります。なかには、個人の製作者もいるんですよ。

見た目にはじまり、工房の歴史やスピリット、音楽史に残るレジェンド、そして何よりサウンド。どれを重視するのであれ、そのメーカーを「いいな」と思えることが大事だと思います。もしあこがれのミュージシャンがいるなら、遠慮せず同じメーカー、可能なら同じモデルを選ぶのをおすすめします。

ただあまり無名なメーカーや個人の製作者だと、ギターの質がばらついたり、劣ったりすることがあります。知られざるサウンドを求める手練れのギタリストならともかく、初心者は信頼厚いブランドで選ぶといいでしょう。

なんといっても好きになれるものがいちばん。安定感のあるいい品かどうかは、店員さんがきちっとみてくれます。

アコースティックギターの特別な魅力

音もさることながら、私はアコースティックギターにはそれだけが持つ特別な魅力があると思っています。せっかくの機会なので、思い切り語らせてください。

ノリのいい雰囲気

別に誰かが言ったことでも定められたことでもないんですけど、私は初めて楽器屋の店員さんに声をかけたころから、ギタリストには特有の前向きな気持ちが満ちていると感じています。

ギターは学校で習わないし、小さい子の習い事としてはマイナーですよね。だから、ギターを「やらされた」人っていないんですよ。お高い雰囲気もありません。みんな、何らかの理由であこがれて、自分でゼロから始めた。だからこその明るいカラーなんだと思います。みんな心からアコギが好きなんですね。

サウンドの違いについても、ぐだぐだ講釈をたれるふうではありません。楽器屋の店員さんもみな、本当にフィーリングを大事にしている感じです。

店員さんによると、なかにはすごく凝ったインレイの入った高価なアコギを、直観で「これ買おうかな」とあっさり、分割払いを組んで連れ帰る人もいるとか。(私にはこういうセンスは永遠に無理ですけどね……。)

「やりたいならやっちゃおうよ」という前向きで、良い意味で楽観的で、なによりアーティスティックなスピリットで満ちていると感じるんです。アコギ自体だけではなく、私はそういう雰囲気もとても好きです。

趣味としておすすめできる理由

アコースティックギターはそんなにむずかしくないし、誰でも平等にある程度のいい音を出せる楽器です。なので、『ドラえもん』で時々ネタになるしずかちゃんのバイオリンみたいになるのでは……という心配は、最初の一歩からまったくいりません。私のようにゼロからスタートの方でも大丈夫です。

近所迷惑になるような爆音は出ないし、保管も大変ではないし(特別な湿度管理などを望まない限りは、ケースに入れておけばいいそうです)、特殊な小物を買い続けなければならないということもありません(替え弦は1パック600~1000円くらい、ピックは1枚100円見当)。

楽しさはすぐ味わえ、のちに負担が重くのしかかる心配がないので、趣味としてはおすすめできる類ではないでしょうか。

木と生音だけが持つ、魔法みたいな力

アコギの音は、純粋に自然の音です。なんといっても本体は木製。電気は使いません。

ポーンと弦をはじいたら、心の痛みが一瞬でとけて、救われた。信じてもらえるかどうかわからないんですけど、私にはそんなことが今までに何度もあります。

たまに、弾かずにながめているだけの時もあります。みがいてお手入れしたり。

マーティンアコースティックギターの木目
スプルースの細かな木目。マホガニーの木目は、これと違ってまたきれい。

何度も言いますが、アコースティックギターは本当にきれいなものなんですよ。インレイなど人間の手による芸術もそうですが、やっぱり美しさの根源は、自然由来の木目だと思うんです。木材でできている以上、同じ木目、同じギターは世界に1本もありません。その特別さは、自然が運んできた特別さだと思います。

できる音楽の幅広さ

アコギが奏でられる音楽のジャンルは、歴史や世界を見渡せば驚くほど広いです。それだけたくさんの可能性がつまっているのです。

木の生音、というとナチュラル・オーガニック一直線みたいですが、ギターの歴史をかえりみれば必ずしもそうではありません。いまやレジェンドのボブ・ディランがアコギをエレキに持ち替えた時、ファンから「裏切者!(=魂を捨てて商業主義に走ったという意味)」と大ブーイングがわき起こった、なんていう「トガった」エピソードすらあるくらいです。

また、「かっこいいから!」と、いわばファッションとしてギターをやりたがるのはアーティストとして邪道……なんていう見方は全然ないんですよね。かっこつけだって、ひとつの立派な動機。懐が深いです。

さらに、やりようではいわゆる民族音楽も可能です。ギターに似た楽器は世界各地にありますから、どんな音楽にでも合うわけです。

「好きなミュージシャンの曲を自分も弾いてみたい」という興味から趣味でやるもオーケー。そういうギタリストもたくさんいるので、楽器屋さんの本棚には人気ミュージシャンの楽譜がそろっています。

私がやっていることは、作曲と弾き語りです。自分が書いた歌詞に伴奏をつけて、アコギで弾き語りするのです。私にとっては、過去のミュージシャンや他人は全然関係ありません。義務をもうけず、趣味で心の向くまま、自由に弾いています。

結びに―自由にやってみようよ、楽しいから

私はアコースティックギターを始めてから、アコギを弾ける自分のことを「すばらしい!」と思えるようになりました。私は伝説のミュージシャンではないけれど「自分の音楽」を心から愛しているし、胸を張って自慢できます。人間にとって、「生きること」と「アート」はイコールでつなげてもいいほど密接だと思います。人生という長い道のりを、私はこれからも私のギターといっしょに歩んでいきます。

自由にやろうよ!――これから始める初心者に私が言うのは、それだけです。ああでなければ、こうでなければなんていうことはありません。自分を表現するのって最高ですよ。せっかく人間に生まれたんだから、人間だけの喜びを満喫する。いい人生じゃないですか。

アコースティックギターを手にした瞬間、人はアーティストになれます。これを読んでいるあなたが、かつての私のように最初の一歩を踏み出し、自分だけの特別な相棒に出会えますよう。

日光が当たっているアコースティックギター

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