自宅ボイトレ15年のまとめ:高音、筋トレ、苦手克服、意見の違いを整理整頓!

私は大の歌好きです。カラオケファン歴は中学を卒業する春に友達が連れて行ってくれた時以来で、今では作詞作曲アコギ弾き語りを趣味にしています

最初は時々カラオケボックスに行っては好きにがなっている程度でしたが、歌好きというのは趣味が高じると、うまくなりたいといろんなボイトレ本にとびつくようになるんですよね。そんなこんなで試行錯誤しながら、気づけばもう15年ほどになるでしょうか。

音楽のメソッド本では、著者によって書いてあることがずいぶん違う場合がありますよね。ボイストレーナーによって教えることが逆だった、なんてこともあるとか。それに他の学問、医学や科学もそうであるように、ボイトレの方法論は時とともに変遷しています。

今回は、私が知っている歌の練習法や意見の相違点などを整理して、一挙にまとめてみようと思います。

目次

基本は姿勢と腹式呼吸とウォーミングアップ

まずは発声を基本の「き」から確認します。微妙に変わってきているかな、と思う部分もあるので、その微妙な違いも整理してみます。

意外と変遷している? 正しい姿勢

発声にまず必要なのは、正しい姿勢。私がこれまでに聞いてきたのをまとめると、だいたい次のような感じになるでしょうか。

足は肩幅に開き、重心は真ん中、かかと・股関節・肩・耳が一直線になるよう背筋をのばし、胸は軽く起こし、目線は正面または気持ちななめ上を見て、あごは軽く引き、骨盤は地面と垂直になるよう立て、最後は首・肩や精神をリラックス。

……ただ私が思うに、正しい姿勢の定義は微妙に移り変わっている感じがします。また、私は最近音楽ではなく「話す」方向のボイトレ本にも手を出してみたのですが、これまた微妙にカラーが違うなと感じました。

傾向として、古めの本が勧める姿勢では、ややそりぎみになることがあるようです。壁に肩とお尻をつけてすき間ができるのが正しい、とか、お尻はきゅっと出すべし、との情報は、最近のボイトレからいえば少々力が入りすぎだとみられるかもしれません。

また「話す」方向のボイトレ本だと、「ひざはピンと張らずにやわらかくしておく」と書いてありがちです。こうすると、骨盤がそれるのを防ぎやすいですね。ボイトレをちょっと違う角度から見てみて、私的にはいい拾い物ができました。まぁ音楽でも実際歌う時にひざをピンと張って直立不動ということは現実問題としてないと思うんですけど、正しいフォームをとる時点では、ひざはピンとのばす傾向なんですよね。「自分、力入りすぎかも……」という人は、ぜひ参考にしてみてください。

と、こうした微妙な違いがどうあれ、絶対にNGなのは猫背です。猫背になると、腹筋がたるんでその力をほとんど出せません。結果、息が続かず、声量も出なくなります。

あとで何度も出てくるように、最近のボイトレでは無駄な力をぬいてリラックスすることが強調されていると思います。緊張するほど声が出なくなり故障もしやすいから、というテクニカルな理由だけではなく、声を張り上げるより「抜いた歌い方」が流行る音楽シーンの流れも背景にあるとみられます。

ただどんなにリラックスするといっても、お腹の支え――具体的には下腹、おへその下の力――だけは残さないと、楽に聞けるゆったりした歌ではなく、ただの「息だだもれ」になってしまいます。

正しい姿勢や次に扱う呼吸はそれだけで一冊本ができるくらい奥が深くて、ひとたび悩み始めると途方に暮れますよね。一方、新しいアイデアをキャッチしたら取り入れてみれば道が開けやすい分野だ、とも感じます。歌を歌うなら、心も柔軟でいたいものですね。

必須No.1は、腹式呼吸

歌う時には、腹式呼吸が必須です。私たちが普段している胸式呼吸では息の量が足りないばかりか、肩や首のあたりに力を入れるので、のどをつぶす原因にもなります。いくらボイトレしたつもりでも、呼吸が胸式ではうまくはなりません。一方、肺の下部まで広げて行う腹式呼吸は、息の量を各段増やすうえ、呼気をお腹で支えるのでのどに負担をかけず、音程もとりやすくなります。いいことずくめなんですね。

腹式呼吸は、少しも難しくありません。だって、寝ている時はみんな腹式呼吸なんですから。

なので腹式呼吸のやり方がわからないなら、まずあお向けに寝転がって空気を吸ったり吐いたりしてみるといいでしょう。お腹がふくれたりへこんだりするのが確認できます。

立っている時は、「絶対に肩を上げない」で呼吸すれば、吸った時に自然とお腹がふくらみます。感覚をつかみにくければ、吸う時に気持ち肩を下げるくらいでいいかもしれません。これで早くも腹式呼吸完成です。

ひとたび覚えてしまえば、腹式呼吸は座っていても歩いていてもどんな姿勢でもできるようになります。腹式での深い呼吸には精神的な落ち着きやリラックス効果もあるので、歌う時に限らず生活に取り入れるといいと思いますね。

ウォーミングアップはうまさを上げて負担を下げる!

スポーツでないとはいえ、発声は体を使うアクティビティ。体を使うなら準備体操が必要です。

具体的には、

  • ゆっくり力を抜いて首を2、3回まわす
  • 両手を組んでまっすぐ背伸びをする
  • そのまま左右にたおす
  • 体を前に倒して、ゆっくり起き上がる
  • 体を後ろにそらす
  • 体を左右にねじる(力を入れずにぶらぶらと)

こうしたストレッチをしておけば声がうんと出やすくなるし、声帯への負担もぐっと減らせます。とりわけウォームアップなしにいきなり高音を出すのは、寝起きの体操選手が空中何回転のひねり技をやるようなもの。それではオリンピックの金メダリストだって大ケガするだろうし、悪くすれば再起不能で引退です。自宅でボイトレするときも、のどを痛める(あるいはつぶす!)ことがないよう、最初にストレッチをしておいたほうがいいですね。

他には、顔や首、胸や肩にかけての筋肉をやさしくマッサージする、口を大きく開け閉めするなどのウォームアップ方法があります。顔や首の筋肉の動きがよくなれば、発音がしやすくなり、結果としてリズムが遅れにくくなる効果も期待できます。

めんどうそうに見えても、やってみれば数分でできてしまうし、何より歌いやすくなります。声を出す前にはウォーミングアップを。

悩みNo.1の高音は、「リラックス」と「響き」で解消

どの教則本を読んでも、歌・カラオケの悩みといえば「高音が出ない」なんですよね。

最近のポップミュージックでは「CMタイアップで映えるように」と高音多用が進んでいるため、一般のカラオケファンは思い通りに歌えず、はがゆい思いをしがちです。

無理に高音を出すうちに声帯にポリープができてしまい、手術になるカラオケファンが増えている、なんていう怖い話も……。

自宅ボイトレなら特に注意! のどを痛める原因No.1

高音を出すということは、声帯を高速で振動させることを意味します。たとえば「A=ラ」の音は440Hz(ポップスの場合)、つまり「ラ」の音を出している時には、声帯は1秒に440回も振動しているんですね。「ラ」より高い音ならもっと高速。歌が好きなら、声帯はたった1秒で何百回も摩擦しているのだと自覚はしておきたいものです。ボイトレをやっていればのどがイガイガしたことくらい私にだってもちろんありますけど、そういうときはすぐ歌うのをやめて、治るまで我慢して、それだけ負担をかける声帯を大切にしたいものです。

特に自宅ボイトレの場合、騒音にならないよう声を小さくしないと……と考えたりしませんか? 音量をしぼるために、と、のどを締めて高音を出そうものなら、翌日苦しむだけで済めばましなほう。それを続けたりしたら耳鼻科行き、最悪手術になってしまうかもしれません。

防音はどうする?

日本の家屋は昔から壁が薄く、音が外にもれやすい設計です。思い切り声を出すならカラオケボックス(のどの天敵・タバコの煙がないかどうかは必ずチェック!)かレンタルスタジオに行くのがいちばんですが、練習場所として自宅をはずすことはできませんよね。

口をおおって声を小さくするような道具は、少量ですがいつも出回っています。最近では”ウタエット”なんていうのが流行っていますね。マッサージ棒など健康グッズのコーナーで売っていて、楽器屋さんが仕入れていることもあります。もちろんこれで完全に防音できるわけではないですが、声が小さくなるのは確かです。自分の耳で判断するのではなく、使用時と不使用時の声をボイスレコーダー(歌の練習では必須アイテム!)で録音すれば、その差が分かります。

もっと趣味が高じた人のために、人が一人入れるサイズの家庭用防音壁というのがあるそうです。これなら完全防音。私は持っていないんですけどね。いろんな意味で暗ーい感じがするもんで……。ただ本気の人には、これがだんぜんおすすめです。

自宅ボイトレで音が気になるようなら、窓やドアを閉めるのを基本に、いずれかの防音グッズを併用すればやっていけると思います。がなるのは発声としてよくないし、後述の通り声を大きく響かせる必要のない練習方法もいろいろあります。

高音を出なくさせるのは、力みである

高音を出すには、裏声を使います(「ファルセット」も同義。ボイストレーナーによっては意味内容が少し違ったり、「ミックスボイス」と呼ぶことも。)。普段話すときの地声(チェストボイス)だけでは、高い音は出ません。

裏声では、首周辺に無駄な緊張がありません。力んでのどを締めあげるのは逆効果。高音は楽に出せるし、がなろうとすると出ないものでもあります。

裏声の代表例といえば、オオカミの遠吠え「ワォーーーーーーン」とか、頂上ですがすがしい気分になった登山者の「ヤッホーーーーーー」とか、あるいはアルプスの民族音楽を歌っているおじさんの「ラーンラ ララララララ ホーッホ ホホホホホ」の高い部分。あれです。あの発声をすれば高音が出ます。曲の中で高音の部分は、このモードに切り替えて出せばいいのです。

腹式呼吸と同じように裏声もいったん覚えてしまえば、いちいち吠えることなくいつでも自然に出せるようになります。

ただ、思いっきり「ワォーーーーーーン」なんて吠えるのは、自宅が牧場の人向けですよね……。カラオケボックスやレンタルスタジオに行く手はありますけど、家だとなかなか。では自宅ボイトレでは高音のコツはつかめないのかといえば、そんなことはありません。

ハミングのあなどれないボイトレ効果

と、そこで出てくるのが「響き」です。

歌う時は、いわば体が楽器になっています。声は、息が声帯を通過する時点では草笛のような何の変哲もない小さな音ですが、それが頭部で共鳴することにより、さまざまな音色の大きな音になります。

そして高音になればなるほど、声は頭の上のほう、もっと高くなれば後頭部に響くようになります。

あるいは見方を変えると、声を頭の上のほう、もっといけば後頭部に響かせようとすれば、声は自然と高くなります。

歌える限界をいくつか超える高音でも、ハミングならたいてい出せます。ハミングで高音が頭のどこにどんなふうに響くかをつかんでしまえば、いざ声で出す時も同じように響かせればよいのだと体感できます。カラオケボックスや牧場に行かなくても練習しやすいので、ハミングはなかなか自宅ボイトレ向きだと思います。

さらに、「口あけハミング」というのはご存知でしょうか。これは文字通り口をあけてハミング(とくに高音)をすることで、共鳴する頭部の筋肉が自然と鍛えられるというすぐれもの。おすすめです。

【Advanced】出せるはずの高音が曲中だと出ない!原因は2つ

ここからは、とりあえずは高音を出せる人のために。「ボイトレでは出せる高音が、いざ歌おうとすると出ない。なんでなの?」と思ったことはないでしょうか。

その原因の一つは、自分の限界近くの高音だとコントロールがきかないことにあります。この場合はトレーニングを重ねてもっと高い音まで出せるようになるか、あるいはあとで説明するように、無理せずキーを下げるのが吉でしょう。

もう一つは、地声と裏声の切り替えがスムーズにいかない、あるいは切り替えのすばやさが足りないために、単発なら出せるはずの高音が曲中では出なくなってしまうこと。これを聞いた時は、なるほどなと納得しました。

地声と裏声の切り替わりをもっと意識するといいんですね。まずは、自分の声はどの音程から裏声になるのかを知っておく(女性だとたいていの人はA=ラの周辺)。そして音程練習で、切り替えポイントをはさんだ上下移動を練習をする(たとえば「ラ」をはさんで「ソドソドソ」とか)。そうして声帯をその音程にセットするのを速め、声帯の柔軟性を高めると、裏声との切り替えがうまくなっていきます。

意見が割れるNo.1。筋トレって結局いるのいらないの?

ボイトレって、教則本やボイストレーナーによって意見が全然違うことがあるんですよね。「えっ、どっちなの??」と当惑したことがあるかもしれません。私が見てきたなかで意見がもっとも食い違うのは、筋トレの扱いなんですよ。

割れる腹筋……についての意見

割れているのは腹筋ではありません。意見です。ボイトレにおいて腹筋を鍛える必要はあるのでしょうか?

一方には、腹筋の筋トレをする必要はまったくない、いるのはマッサージによるケアだ、という不要説。

他方では、もちろんしましょうという必要説。音程やリズムの練習と同じくらい大事だと言う人も。

どっちなんだ!!!

この機会に、割れる意見を整理してみようと思います。手順として、まず各意見の中から情報として正しい部分をピックアップします。

  • 肺自体はただの袋のようなもので、ポンプ機能は有していない。
  • 肺の下にある横隔膜を押し下げることで、肺の中の気圧が下がり、体外から肺の下のほうまでまんべんなく空気が入ってくる。これが腹式呼吸のメカニズムである。
  • 腹式呼吸を支えるのは腹筋である。
  • 腹筋は、体の前面、左右の位置で縦に伸びている。

要は、腹筋を強くすれば腹式呼吸を強くできるわけです。より強い深い腹式呼吸ができれば、比例して声量アップが見込める。このあたりは本当といえるでしょう。

ただ私の知る範囲だと、「筋トレ必要説」のボイストレーナーでもたいてい「腹筋を鍛えすぎて固くしてしまうと歌にはかえってよくない」という留保はつけています。発声では肺をポンプのように使うので、腹筋はしなやかであるべきだ、と。これはこれで本当のようです。

腹筋運動のやり方

腹筋運動といえば、寝た状態から上半身を起こすアレですよね。トレーニング用語では「シットアップ」と呼びます。発声のためなら回数は1日30回とか50回とかいうようですが、フィジカル・トレーニングの大原則は自分のペースで行うこと。なので無理せず自分に合わせて少しずつ増やしていくのが確実だし、効果も高いです。

腹筋では他に「クランチ」というやり方があるのはご存知でしょうか。あお向けに寝て、太ももを床に垂直に立て、すねは宙に浮かせ床に平行にした状態で、体を起こしておへそをのぞきこみます。腕で反動をつけず、肩甲骨が床から離れるまで上体を上げます。シットアップと比べて運動強度は低くなりますが、きちんと鍛えられます。大腿骨周辺の筋肉を含まず腹筋だけを集中的にトレーニングできる、また故障の危険性がないといった理由で、クランチだけを勧めるトレーナーもいるようです。

これは音楽ではなくスポーツのほうの専門なので、気になる人は本屋でスポーツの棚に行ってみるのがいいでしょう。私はそうしました。

筋トレと名のつくものは、必ず成果が目に見えます。ちょっとした日課にすれば、健康にもよくて一石二鳥です。

有酸素運動重視説

「筋トレ必要説」のボイストレーナーでも、トレーニングの内容には違いがあったりします。腹筋運動ではなく、ジョギング、サイクリング、エアロビクスなどの有酸素運動を重視する人はけっこう見受けられます。

その目的は、だいたい3つに分類できると思います。

  1. 心拍数120くらいに普段から慣れておくため。
  2. やっているのがラテン音楽なのでずっと踊りながら歌うことになる、など音楽ジャンルの問題。
  3. 呼吸に必要な心肺機能を高めるため。

有酸素運動重視のボイストレーナーは、ステージパフォーマンスを念頭に置いている場合が多いように思います。

実証! エアロビクスでブレス量が増えた

歌のための筋トレ――割れる意見のはざまでどうすればいいかわからず、私は腹筋はちょこちょこやっていたんですけど、長らく有酸素運動はしてきませんでした。

ところが今年、私はボイトレとは別の理由で有酸素運動をすることになったのです。別の理由というのは、その、体重が……。あとはお察しください……。

ダイエットの有酸素運動ならひざへの負担が少ないスイミングが特にいい、というんですけど、私は「せっかく音楽が好きなんだから」とエアロビクスを選びました。音楽をかければ自宅でもできますしね。リズム練習(下記参照)のステップを兼ね、せっかくなのでリズムの難しいR&B系の曲をかけて、1日10分~(曲にして3曲~)をめやすにダンス、ダンス。

すると、1か月も経たないうちに、明らかにブレス量が増えたのです! それまでの私は、声を「うー」と伸ばすのでは平均10秒しかもたなかったのですが、エアロビを始めて3週間、気が付けば15秒キープできるように。それまでブレスをはさんでいたフレーズが、一息で歌いきれるように。あの時の感動は忘れません。夢のような一石二鳥でした。

どうですか。ボイトレに筋トレはいるのかいらないのか迷っているそこのあなた、有酸素運動をすればブレス量は必ず増えます。思わぬ時に、私が実証しました。音楽好きなら普段から音楽をかけているでしょうし、そのうち3曲で踊ってみるのは苦にならないでしょう。ステージパフォーマンスが念頭にない人でも、やってみる価値はあると思いますよ。歌の道で行き詰まった時には、私の実話をきっと思い出してください。

割れる意見をまとめ直して

私がメソッド本を読みあさってきた印象では、一口に「発声」といっても、「音楽」の系統の人は筋トレをあまり推奨しない傾向です。

一方熱心なのは、発声を一部で扱う「演技」の系統。身体を大きく使った表現方法であることはもちろん、学校の演劇部が筋トレを日々の活動の一部に組み込んでいたりする習慣もあってのことでしょう。

基礎体力があることは、発声において得になります。

ただそれでも、筋トレが必要だと言われ出したのには近年のステージパフォーマンスが背景にあることは否めません。世界にはゆったり体形の優れたシンガーだってたくさんいるし、正座して三味線で民謡を歌う人なども筋トレなんていうカラーはゼロ。発声に必要な筋肉は、ボイトレのなかで自然と鍛えられます。誰もがビヨンセを目指しているわけでもカーニバルに出場するわけでもありません。それに、いくら腹式呼吸が強くても、ブレスの保持、声帯の閉まり具合、そして響きが不十分なら無下になってしまいます。

基礎体力アップに損はありません。だから前向きな気持ちで筋トレを取り入れてみるのはいいと思いますが、結局最後決めるのは自分なんですよね。ボイストレーナーによって意見が割れるからこそ、自分はどんな風に歌っていきたいのかを意識することになる。なんとも感慨深いです。

苦手No.1は音程……よりもリズム

歌がうまいかどうかといえば、やっぱり音程が気になるもの。

しかし、実はリズムのほうが苦手だ、というケースは本当に多いんですね。私たちが普段しゃべっている日本語はリズムのない言語なので、その影響が大きいんです。私もそうなんですよ。何年も前ですがカラオケDAMで「歌唱検定」というのがあって、私も挑戦してみたら講評に「リズムが遅れがち」とありまして。はっとして意識して聞いたら、確かにそう。私はリズムが苦手だということに気付いてもいなかったんですね。それからというもの、リズム感アップの模索を地道に続けています。

リズムの練習法リスト

私が知っているリズム練習をまとめ直してリストにしてみます(ここでは4ビートだけを扱います)。

なお、リズム練習のお供・メトロノームは絶対必要です。最近なら楽器屋まで行かずとも、アプリでたくさん出ています。ピッピッと音が鳴るだけでなく、針が左右に振れるものがおすすめです。リズムが視覚的にも入ってきますからね。

メトロノームアプリのスクリーンショット
Metronome(keuwlsoft)。後述する裏拍を鳴らしてくれる上、細かな設定までできる。

4カウント+足のステップ

やり方:「1,2,3,4」と4カウントしながら、足でステップを踏む。

4カウントは「手でたたく」か「声に出す」の2パターンがみられます。

ステップのほうは、左右に動くかひざの曲げ伸ばしのどちらかが主流でしょう。左右のステップでは右足を右に出して「1」、左足を寄せてそろえて「2」、同じく左で「3,4」。ひざの浮き沈みでは、「1,2,3,4」それぞれのカウントでしずむ、あるいは2と4でしずむの二通り。

これらの組み合わせはボイストレーナーによって違うし、リズム練習の意図や音楽ジャンルにも左右されるようです。別に決まりがあるわけではありません。要は「4カウント+ステップ」をすることでリズムを体で覚えればいいということです。

各音符のリズムパターン(そのまま使える楽譜付き!)

メトロノームに合わせて全音符、2分、4分、8分、16分それぞれのリズム譜を「タタタタ タタータ」などと声に出しながら読む。足のステップを加えることもある。

音楽の授業的な定番です。参考までにリズム譜を作ってみたので、よかったら使ってみてください。テンポは80くらいから。

1小節まるごとのばす全音符。「1,2,3,4」の間「ターーーー」です。

4拍全音符のリズム練習のための楽譜

全音符の1/2、二分音符。2拍分です。

リズム練習用の楽譜(2分音符)

基本中の基本、4分音符。

4拍子4分音符のリズム練習用楽譜

リズムのキモ、8分音符。練習例をつめこんだのが下の楽譜なので、通してやるというよりは、どこか1小節を繰り返す感じで。

8分音符とシンコペーションのリズム楽譜

1小節目の「タタタタタタタタ」だけでもかなりいい練習になります。2拍目と4拍目にアクセントをつけて「タタタ タタタ」にすれば気分はドラマー! 3小節目の「ウタウタウタウタ」はザ・裏拍。裏拍については次の「リズム練習のポイント」で説明します。下段では、拍をまたぐシンコペーションを入れてあります。「あれ??」とわからなくなったらテンポを落として。

16分音符になると、だいぶ難しいリズムが出てきます。こちらもスペースの関係で一つの楽譜に例をぎゅう詰めにしたので、一小節だけ繰り返してもいいと思います。

シンコペーションの入った16分音符のリズム楽譜

だいぶ難しいけれど「こういう曲あるある!」となるのも16分音符。最後の小節の前半なんて、きっとあなたのプレイリストのあの曲にもこの曲にも含まれているんじゃないでしょうか。

これら楽譜はあくまで例。自分で自由にアレンジするのも、いいトレーニングになります。

リズム打ち

やり方:左手で4カウント「1,2,3,4」を打ちながら、右手で歌詞のリズムを打つ。

リズムパターンがある程度できるようになったら、実際の曲を使います。一気に楽しくなってきますね。

リズム打ちは、ハマりだすと抜けられないくらいハマります。自分の好きな曲はもちろん、テレビから流れてきた曲でも「この曲のリズムどうなってるんだろ?」とひざでリズム打ち、街中を歩いていて耳に入った曲が気になったら指だけでリズム打ち。おもしろくてやめられなくなります。

リズム練習のポイントは「裏拍」と「休符」

裏拍と休符をきちんと感じるのが大事だ、というのはどのボイストレーナーでも共通です。意見の相違はみられないし、今後もないと思います。

先ほど「4カウント+足のステップ」の練習で「1,2,3,4」とカウントすると言いましたが、正確には「1と2と3と4と」とカウントすべきなんですね。「と」の部分が裏拍です。「1,2」のぴったり真ん中。もし裏拍をとらえられないなら、世に星の数ほどある歌の中で「かえるのうたが きこえてくるよ」だけしか歌えないという惨事に! だから裏拍をまったく知らないし感じたこともないという人はいないはずなんですよね。それをもっと意識すれば、より正確なリズム感を見込めます。

休符も、歌詞がある部分と同じく、リズムの一部です。お休みではありません。だからぼーっとしてあいまいなまま過ぎていくのではなく、リズム練習でも「ウン」とか「ウ」とか読んでとらえるのです。休符が曲全体のリズムの一部になってくると、歌の息づかいがイキイキしてきます。実際的に言えば、裏拍と休符は理解すればするほど、リズムの出遅れがなくなっていくと思います。

リズムについて思ったこと・印象的な言葉4選

私が経験してきたなかでとりわけ印象深いことを4つ、この機会に語ってみたいと思います。

一つ目。楽譜を自分で書いてみるのはとても勉強になります。私は楽譜ソフトを持っているので(上のリズム譜はそれで作りました!)、歌う曲のメロディを打ち込んでみるんですよ。「耳コピ」に近いですかね。それを再生してみて曲通りならオーケー、なんだ違う……というならどこかが間違っているのだと分かります。

二つ目は、音楽ゲーム(通称音ゲー)。音楽的にしっかりできた音ゲーはいいですね。私はNintendo DSの『リズム天国ゴールド』なんかをやりこみました。

三つ目は、いくらリズムを頭で理解しても、「伝達」が確かでなければ結局意味ないよね……ということ。足のステップはやってみると楽しいし、やりようでは有酸素運動にもなるし、いろいろ発見まであるんですけど、目指すのはあくまで正確なリズムで歌えることじゃないですか。いざ歌っている時に声で再現できなければ意味がない。口の開け閉めのスムーズさや滑舌なんかも関係あります。基礎練習ではなく、歌う曲にピンポイントをしぼって練習するのも大事。正確なリズムで歌うという最終目標は忘れちゃダメだなと思います。

四つ目は、伴奏に合わせるのではなく自分自身がリズムを持つこと。これはギター雑誌で読んだことなんですけど、なるほどなーと思わずうなずいてしまいました。本当にリズム感がいい人は、他人の伴奏に合わせるという発想ではなく、自分でリズムを作り出してキープするんですね。そういうふうに自分のリズムを持った人が集まったとき、本当に息の合った演奏ができる、と。脱帽です。そう、歌うのはあくまで自分じゃないですか。リズムというとつい「合わせる」という発想に陥って、メトロノームとにらめっこしては遅れたの早いのという話になりがちですが、たとえカラオケでも「自分が歌うんだ」という気持ちで自分が音楽をリードしていく、その姿勢が歌を輝かせるんだと思います。

気になる要素No.1。音程練習は発見の連続

リズムがどんなに大事でも、歌ならやっぱり音程は気になりますよね。私だって、もちろんそう。なのでそちらのこともきちんとまとめます。

音程は「階段」である

音程は「階段」です。なだらかな「坂」ではありません。

たとえば「『ミ』と『ファ』の間くらいの音」というのは声では出せるけれど、楽譜=楽曲の上では存在しません。「音程ズレてる……」となってしまうのは、こうした中途半端な音を出したときなのです。逆に、「ミ」の高さぴったりの音をスパンと出せる――「音程がいい」とはこういうことです。

階段っぽさが目でも耳でもわかるのが、キーボードです。

ピアノアプリのスクリーンショット
My Piano Phone(Son Lam Media)。無料キーボードアプリの一例。

なるほど、「ミ」は「ミ」、「ファ」は「ファ」で、その間くらいの音なんていうのはありませんね。最近だと無料のピアノ・キーボードアプリがたくさんあるので、歌が好きならとりあえず入れておくといいでしょう。

好きな曲のメロディを手探りで弾いてみると、「ここの部分はこれだけ離れてるんだ」とか「ここって1音ずつ上がっていくんだ」などと、いろいろ発見があります。頭での理解と目でのイメージがあると、音程は一気に取りやすくなります。曲を理解することにもつながりますので、とてもおすすめです。

ボイトレの方法としては、キーボードとぴったり同じ音を声で出してみること。ぴったりだと2つの音にうねりがなく、キーボードの音が消えたような感じがします。この「気持ちよさ」を体感するのが、音程をよくする第一歩です。あとは音と音の「距離感」を確かめ、行き来をしてみる(ドとレはこれくらい、ドとミになるとこれくらい、などと確かめて、「ドレドレド」「ドミドミド」などを歌ってみる)のがいい練習になります。

そして音程をよくする最高の方法といえば、プロシンガーの歌の「コピー」です。上手なシンガーの歌をかけて(音量はやや大きめ)、自分もいっしょに歌うのです。音程(とリズム)がぴったりなら、まるでもとのボーカルが消え、自分だけがカラオケ音源で歌っているかのような感じがします。逆に、もとの歌手と自分、二つの声が聞こえるなら、その部分は音程やリズムが大なり小なりズレているということ。このように「ボーカルを消す」つもりでいっしょに歌うことで、正確な音程を身につけていけるのです。これまでなにげなく聞いていた曲のなかで「ここってこうなってたのか」とたくさんの発見があるのも、コピーのだいごみです。

では、コピー元となるシンガーは誰を選ぶべきでしょうか? まず、上手な歌手であることは必須条件です。下手な歌をまねしたら自分も下手になってしまいますからね。ただあとは、「自分もこんなふうに歌いたい!」と思えることが大事でしょう。ボイトレの目標はあくまで、自分の思い通りに歌えるようになること。なら、尊敬していないシンガーを選ぶのは的外れです。いくら歌がうまいと評判でも、自分と縁もゆかりもないソウルシンガーを引っぱり出してくる必要はありません。

音程やリズムはもちろん、ビブラート(後述します)やフェイクなどの高等テクニックまですべてを徹底的にコピーするのは「完コピ」と呼ばれます。プロシンガーは必ずこの練習法をやっているそうです。……私にはここまでは無理なんですけどね。本当に趣味が高じた人にはおすすめです。

【Basic】3つの技で、ボイトレなくしてカラオケ歌唱力アップ!

と、音程の基本は押さえたところで、「なにもそんな歌唱力アップまでは目指してない、カラオケをもうちょっと楽しみたいだけだよ」という軽いカラオケファンのために。

カラオケが一般にこれだけ広まった今、「うまく歌えない」と思っている原因は自分の歌唱技術ではなく、実は別のところにある、というケースが多いんですよ。そのため、カラオケファンで「自分はうまくないからな……」と悩んでいる方には、自分の歌唱力以外のところをちょいといじるだけで、問題が一発解決する可能性があるんです。

3つの技とは、「キーの変更」「しゃくりをやめてみる」「曲を覚えてから歌う」。もし心当たりがあったら、次回のカラオケでやってみてください。世界が変わること請け合いです。

カラオケのキーは、変更するのがプロの技

一つ目は、「キーの変更」です。カラオケのリモコンには必ず「♭」「#」のボタンがありますよね。あれを押すと、カラオケ音源の音の高さを上下できます。やったことがない人は、まずは遊びでいろいろためしてみてください。

女性が男性シンガーの曲を、男性が女性シンガーの曲を歌う場合は、ほぼ例外なくキー変更が不可欠です。そうでないと、低すぎたり高すぎたりして歌えません。たとえプロでも、です。

たとえば、バイオリンでコントラバスと同じ低音を出せ、と言ったらどうでしょう。出しようがない、無理な注文ですよね。同じく、「歌うとは体を楽器にすること」とよく言いますが、女性と男性では声帯の大きさが違います。そもそも「楽器」の音域が違うのだから、いくらボイトレを重ねようが、異性の曲はそのままでは歌えません。自分は高音が出ないから、低音を出せないから、音程が悪いから……ではないのです。参考までに紹介しておくと、私の場合、男性シンガーの曲ではたいていキーを「+4」まで上げると自分にぴったり。ラクに歌えるようになります。

なら、同性の歌手の曲はどうなのでしょうか? 近ごろ世間は、もっぱらの「原曲キー」ブーム。あこがれのシンガーをまねしようとしたカラオケファンが、無理やり原曲キーで高音をしぼり出すことが増えているそうです。ただ、のどをしぼって高音を出す危険性は先に説明した通りです。最悪、手術になってしまうかもしれません。仮に出せたとしても、自分の限界ギリギリの高音はコントロールがきかないので、どのみちあまり映えません。自分に合ったキーまで下げて、気持ちよく、上手に歌ったほうがだんぜん得です。

私たちの耳に入ってくる曲はどれも、それぞれのシンガーに合わせて作られています。プロならどんな高さのどんな曲でも歌える、というわけではないんですよ。プロでもみなそれぞれ、高音と低音の限界、出やすい音域と苦手な音域、魅力的な音域といまいちキレイでない音域があるのです。プロのシンガーは、自分の曲をすべて、自分にとってベストなキーで作っている。なのにカラオケファンは、キーが全然合わない曲までごったまぜな”デンモク”から、好きな曲をあたりかまわず歌いますよね。プロだってできないことを、一般のカラオケファンはごり押しでやろうとしている。あり得ない高さのハードルをとぼうとするようになってしまったのです。だから原曲キーにはこだわらないほうがいいし、むしろ、キーを自分に合わせる「技術」のほうがプロ並みの技といえるのです。

しゃくりはやめてみる

技の二つ目は「しゃくり」。高音、特にサビでのドラマチックに音がはね上がるところだと、音を少し低めに出してからすくい上げるように歌いたくなりませんか? これが「しゃくり」で、カラオケの採点では加点テクニックにもなっています。

ところが、実は、しゃくりは必ずしも良いものではないんですよ。合唱やクラシックの世界では、しゃくりはテクニックどころか御法度なくらい。カラオケでも、しゃくりは本人が思うほど上手には聞こえません。

というのも、メロディというのは、止まらずどんどん流れていきますよね。しゃくりで音を探りながら出すと、目指す高さに至らないうちに曲が進んでしまいがち。結局、音程を外したのと同じになってしまうのです。

なので、しゃくりを多用している人は、一度思い切って、自信をもって高音をスパンと出してみるのをおすすめします。それだけで音程が一気に良くなるかもしれません。

あらかじめ曲を覚えておく

最後の技は、「覚えてから歌う」。

歌というのは、「その曲なんとなく知ってる」というレベルでは歌えはしないんですよね。たとえば私はこの間、このブログで『千と千尋の神隠し』にふれました。記事を書き上げて、うんと伸びをして、「さー歌でも歌うぞー」とカラオケに行ったんですよ。そこでふとエンディングテーマ『いつも何度でも』をかけてみたんです。あのメロディ、なんとなく思い浮かびません? 私は映画で何度も聞いたから、と思ったんですが……撃沈。半分以上わからなくて、ボケッとしているうちに曲終了でした。

うろ覚えだとこうなってしまうんですよ。なので、歌う曲は覚えるつもりでよく聞いて、あやふやにせず、あらかじめ全体を把握しておくことです。

以上、

  1. 自分に合ったキーに変える
  2. しゃくりをやめてみる
  3. 曲をしっかり聞いて覚えておく

3つの技、もし心当たりがあれば試してみてください。カラオケの悩みが一発解決するはずです。

ボイスレコーダーを相棒にレベルアップ

以上のように、音程の基本は

  • 音程は「階段」である
  • キーボードや上手な歌手とぴったり同じ音で歌うのが王道の練習法だ

と押さえました。ここでもっと上を目指したいなら、録音機の出番です。小型のボイスレコーダーはたくさん売られていますし、最近ならアプリでもいいでしょう。

キーボードといっしょにぴったりな音を出す練習をする時、録音して、客観的に聞いてみます。なんかズレてるな……というならもう一度キーボードで音を確認して、それから再びチャレンジします。練習法としては地味な類ですが、声だけでなくズレを聞き分ける耳のほうも鍛えられるので、とても有効なんですよ。一度に二か所をトレーニングできるんですね。

そして先ほど紹介したプロシンガーを「コピー」する練習でも、いっしょに歌っているところを録音します。そして録音を聞いてみて、シンガーとズレたところを確認し、その箇所だけを取り出して練習、またいっしょに歌い……の繰り返し。

「音程ぴったり」は、体感できるとそれはそれは気持ちいいし、音楽についての理解も深まります。ただ、自宅で自分のおぼつかない耳だけで判断していると、「本当にこれで合ってるのかな……」と不安になるかもしれません。そこで、次に一つ、画期的なアイデアを紹介したいと思います。

音程を判定してくれる最高の先生登場!?

ところでみなさん、楽器チューナーというものはご存知でしょうか? これはギターなど弦楽器の調弦をする時に使う道具です。ギタリストなどはこれを見ながら、正確な音程に合わせて弦を張るんですね。

この楽器チューナー、以前は楽器屋さんでしか売っていなかったのですが、最近ではスマホアプリで手軽に手に入るようになりました。無料のアプリもかなりありますね。今ならこれをボイトレに応用して、チューナーアプリに音程を判定してもらうのがアツいかもしれません。

楽器チューナーのスマホアプリのスクリーンショット
楽器チューナーアプリ「GuitarTuna」

ボイトレする時、楽器チューナーに向かって声を出せば、音程に関してある意味最高の先生になってくれます。針が真ん中ぴったりなら正確な音程で、左に振れれば低すぎ、右なら高すぎです。

ただし、チューナーに頼りきりでは上達は見込めません。音程を判定する力が自分にないなら、この先つまずくのは避けられないからです。音程練習の本道はやっぱり、自分の耳までよくしていけるキーボード。あとはなんといっても、ボイストレーニングの良い先生に判定してもらうのがいいですね。

しかし、物は使いよう。楽器チューナーは音程を機械の精度で判定してくれる、というのは確かです。せっかくの新アイテムなんですから、上手に、積極的に活用したいところですね。

もう一つ余談ですが、カラオケの採点では画面に音程のバーが出るじゃないですか。あれって遊びのようでいて、実は合理的です。音程の「階段」が視覚から頭に入ってきますからね。

「歌がうまくなりたい」といえば、まっさきに音程が気になるでしょう。世の中「オンチ」といえば、音程が調子はずれなのを思い浮かべますしね。音程練習は地味だし、深入りすればおそろしく細かい世界ですが、一方で音楽の楽しさをたっぷり体感できる、発見の多い分野でもあると思います。ゲーム感覚で楽しみながら、少しずつ進んでいきたいですね。

身につけたい高等テクニックNo.1、ビブラート

カラオケファンのあこがれといえば、ビブラート。ロングトーンに周期的なゆらぎを加えるテクニックで、カラオケの採点では加点要素になっています。

ビブラートをかける方法は3通りで、

  • 音程を小刻みに半音上げ下げする
  • あごや声帯、横隔膜を上下動させる
  • これらの複合

のどれかです。

とはいっても……。私にも、できるようになりたくて悩んでいたころがありました。できるきっかけをくれたのは、イメージから入っていく方法です。イメージトレーニングのようなものですね。

  1. まずは、風でひらひらゆれる草とか、窓から風が入ってきてパタパタするカーテンとかをイメージする。
  2. ロングトーンを伸ばしている時に、緊張をストンと抜く。
  3. ふっと力がぬけて音程が下がったのを元に戻そうとする。
  4. あとはそのままパタパタさせておく。

私はこのイメージでビブラートをかけられるようになりました。ビブラートでも、カギとなるのはのど周辺の脱力なんですね。音程を上下させるといっても、力任せではビブラートはかけられません。物理的にあごを揺らすとか声帯をゆらす練習方法は、あとになってから試してみました。

とりあえずできるようになったら、次はより均一な波を目指します。その次は、速い・遅いといった周期の違うビブラート、8分・16分など符割りの違うビブラート、先の3つのうちで異なるかけ方のビブラートなどを覚えて、ビブラートの種類を増やしていきます(私はここまでやってないんですけどね……)。プロシンガーの多くは何種類も使い分けて曲を表現しているそうです。

ビブラートでも意見は割れる

ビブラートは多くのカラオケファンのあこがれですが、それが必要かどうかはボイストレーナーによって意見が分かれるところです。

私の見たところでは、「表現テクニックの一つとしてできたらいいけれど、聞かせるのはビブラートではなくあくまで歌なので本末転倒には注意」系の説が多数派なようです。

「10年くらい歌い続けると自然とかかるようになるので練習する必要はない」あるいは「ビブラートは不要だ」という不要説もあります。特にクラシック音楽だと、ビブラートは長年歌っていることを示すだけの付加的なもの止まりで、必要とはされていません。

他方、ビブラート必要説を唱えるボイストレーナーもいます。私がみたところだと、ソウルやR&B系ミュージックをバックグラウンドにもつ人に多いと思います。

私は多数説に賛成です。ビブラートを多用する人は「うまいだろ~」とでも言いたげで……歌よりも、そんな心の声が聞こえてくるんですよね。聞いているこっちは本人が思っているほど感心していません。むしろ「あんた本当に歌好きなの? ただの自慢屋なんじゃないの?」と疑っちゃうくらい。歌に思いがこもってないってカッコ悪いじゃないですか。私は、ロングトーンの最後でビブラートをかけたら余韻が残ってきれいだなーとか、その程度でいいと思います。

結びに―やりたい音楽に向かうボイトレを

以上、私がこれまでに見てきたボイトレ方法のまとめは、いかがだったでしょうか。

特に私の印象に残った情報や考え方を変えたアイデアを重点的に紹介したので、歌好きのみなさんに役に立てばと思います。

ボイトレする人の目標は、じつに様々。私のように趣味でカラオケにハマってもう一歩先に進みたくなった人から、正確な技術を身につけプロシンガーとして生きていこうと決意を固めた本格派まで、本当に幅が広いです。好きな音楽ジャンル、歌う目的、それからスタートラインも一人ひとり違って、同じ人は一人もいません。

それでもボイトレしたい人がこんなにいるのは、それぞれに「もっと歌いたい」という希望があるから。

どんなふうに歌いたいのか? どんな自分になりたいのか? 壁にぶつかった時、割れる意見に戸惑った時、方角を指し示してくれるのはいつも、自分の希望と、歌が好きな気持ちです。

音楽は自由です。読者のみなさんが、なりたい自分になれますよう!

ボイトレする女の子と先生

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(公開:2019年3月30日。更新:2019年9月6日、エアロビの効果実証の項目を加筆しました。)

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